近鉄グループHD 米でホテル建設方針固める 海外攻勢強化へ

私鉄大手の「近鉄グループホールディングス」は、新型コロナの感染拡大を受けてホテル事業を縮小してきましたが、このところ宿泊需要が回復していることを踏まえ、アメリカ・テキサス州に新たにホテルを建設する方針を固めたことが分かりました。
会社では、アジアなど海外での攻勢を強めたい考えです。

関係者によりますと、近鉄グループホールディングスが新たにホテルの建設を計画しているのは、アメリカ南部・テキサス州のプレイノ市です。
新たなホテルは数百室規模の客室に加え、宴会場やプールなども備えた大規模なものを想定していて、2020年代後半の開業を目指すことにしています。
プレイノ市には、トヨタ自動車の現地法人の本社をはじめ、日系企業の拠点が多いことから、会社では、出張客や地元の富裕層などの需要を取り込みたい考えです。
近鉄グループホールディングスは、「都ホテル」などのブランドでホテルを展開してきましたが、おととし、感染拡大に伴う宿泊客の減少を受けて、保有するホテルのうち3分の1にあたる8つの施設を売却し、維持や管理にかかるコストを抑える戦略をとってきました。
しかし、新型コロナの影響が和らぎ世界的に旅行や出張の需要が回復する中、会社では、ホテルを保有する形でも採算が取れると判断し、建設に踏み切ることになりました。
近鉄が海外でホテルを建設するのは2009年以来、3か所目で、今後、アジアなど海外での攻勢を強めたい考えです。

【コロナ禍を経て ホテル戦略は】
ホテル業界では、▼土地や建物といった資産の「保有」と、▼ホテル自体の「運営」を分離する経営手法があり、「ノンアセット型」や「アセットライト型」などと呼ばれています。
この手法は、運営に特化することでホテルの建物や設備などの維持・管理の費用を抑えるとともに、売り上げに応じた手数料収入を安定的に得られることがメリットで、欧米の大手ホテルチェーンなどが取り入れてきました。
さらに、コロナ禍でホテル事業の採算が悪化した国内の企業の間では、財務状況を改善したり、保有によるリスクを抑えたりするために、この戦略にかじを切る動きが相次ぎました。
▼私鉄大手の「西武ホールディングス」は、昨年度(2022年度)、シンガポールの政府系ファンドにプリンスホテルやスキー場など国内で保有するホテルとレジャー施設の3割余りを売却し、運営はグループ企業が担う形をとりました。
▼大阪に本社がある「ロイヤルホテル」も、ことし3月、大阪の「迎賓館」として政財界に親しまれてきた「リーガロイヤルホテル」の土地や建物をカナダの大手生命保険グループ傘下の不動産投資会社に売却しました。
老朽化が進んだ施設について、投資会社が資金を投じて大規模な改装を行う一方、「ロイヤルホテル」が引き続き運営を担う仕組みを取り、再来年の大阪・関西万博などを見据えて国内外の富裕層などの取り込みを強化する方針です。
近鉄グループホールディングスも、おととし、保有していたホテルの3分の1をアメリカの投資会社に売却し、「ノンアセット型」での立て直しを進めていきましたが、宿泊需要の回復を受けて、今回、アメリカでは土地や建物を保有して収益の最大化につなげたい考えです。
需要の回復が進む中、今後、業界内で戦略転換の動きが出てくるかが注目されます。