万博 国内企業などのパビリオン概要発表 海外館遅れに対策も

再来年(2025年)の大阪・関西万博に向けて、国内11の企業と団体が取り組む「未来の都市」をテーマにしたパビリオンの概要や検討状況が発表されました。

「博覧会協会」は2日、都内で記者会見を開き、「未来の都市」をテーマにしたパビリオンの概要を発表しました。
このパビリオンは、およそ7100平方メートルの敷地内に建設される予定で、「食と農」や「環境・エネルギー」など5つの分野の展示について国内11の企業と団体が検討状況を説明しました。
このうち、日立製作所とKDDIは、バーチャル空間に再現した「未来の都市」をアバターを通じて体験できる参加型の展示を検討しているということです。
また、クボタは無人自動運転の農業機械などを展示して食料の安定供給について考えてもらう場を提供したいとしているほか、商船三井などは海上の風をエネルギーとして活用し、航行しながら水素を生産できる未来型の船のイメージなどを紹介する予定だということです。
「博覧会協会」の石川勝 会場運営プロデューサーは記者会見で、「海外パビリオンについては新型コロナやインフレの影響などで現時点で遅れが出ていると認識しているが、日本の民間企業が参加するパビリオンについては計画は問題なく進んでいくと思っている」と述べました。

【海外パビリオン遅れ 最初に書類提出の韓国は】
再来年に開かれる大阪・関西万博で、海外のパビリオンの建設に必要な書類を最初に提出した韓国の関係者は「あくまでいちばん最初の段階を踏んだだけ」だとしています。
大阪・関西万博のパビリオンの建設にあたっては、まず、開催地である大阪市に設計図などを盛り込んだ「基本計画書」を提出することが求められています。
書類を提出したことについて韓国の関係者はNHKの取材に対し、「あくまでもパビリオンを建てるための一番最初の段階を踏んだだけ」だとしています。
そして、今の状況について、建設工事の施工者を決めて本格的に施工を進める段階まで進んでいるわけではないとしています。
韓国は、2030年の万博を第2の都市プサンで開催しようと誘致活動を続けていて、大阪・関西万博では独自のパビリオンで文化や技術力などをアピールする計画です。
このほか、先月(7月)の時点で9か国が、建設の許可申請を前に博覧会協会に資料を提出しているということです。

【経済産業省 万博準備で対応加速へ】
大阪・関西万博で、海外のパビリオンの建設に向けた準備が遅れていることを受けて、経済産業省は、博覧会協会を支援する担当に前の事務次官を充てるほか、工事の受注に伴う建設会社のリスクを軽減する新たな貿易保険を設けるなど、対応を加速させていくことを決めました。
再来年(2025年)の大阪・関西万博の海外のパビリオンをめぐっては、参加国と、国内の建設会社の間で契約の締結が進まず、準備が遅れています。
こうした中、2日、経済産業省で準備を加速させようと、西村経済産業大臣も出席して会議が開かれ、▼実施主体である博覧会協会を支援する担当のトップに先月(7月)まで事務次官を務めていた多田明弘顧問を充てるほか、▼局長級の幹部を専従であたらせることなどを確認しました。
また、パビリオンの工事を受注した国内の建設会社を対象に、割安な保険料で使える「万博貿易保険」を新たに設け、参加国から代金が支払われない場合などには全額、もしくは大部分が補償されるようにすることも決めました。
会議の中で西村大臣は「万博を取り巻く現状は、特に海外パビリオンにおいて、契約が進んでいない状況にある。経済産業省の総力を挙げて対応し、開催まで2年を切っているので当面の課題であるパビリオンの建設促進を強力に進めたい」と述べました。

【大阪市は人員増で審査短縮】
大阪市によりますと、再来年に開かれる大阪・関西万博で、海外のパビリオンをみずから費用を負担してパビリオンを建設することになっている50余りの国や地域のうち、建設に必要な手続きに入ったのは1か国にとどまっています。
関係者によりますと手続きに入っているのは韓国で、2030年の万博を第2の都市プサンで開催しようと誘致活動を続けています。
大阪市では、パビリオンの建設に向けた手続きを迅速に進めることができるよう、▼昨年度から担当の部署の職員を従来よりも3人増やして対応にあたっています。
また、▼パビリオンを対象として許可の基準をあらかじめ公開しているということです。
市では、こうした対応によって基本計画書の提出から許可が下りるまでの期間を、通常3か月程度から、1か月半から2か月ほどに短縮できると見込んでいるということです。

【博覧会協会 海外パビリオン加速へ対応急ぐ】
海外のパビリオンの建設準備が遅れていることを踏まえて、万博の実施主体の博覧会協会は対応を急いでいます。
準備が遅れている背景には、建設資材や人件費の高騰に加えて、各国のパビリオンの複雑なデザインがあると指摘されています。
このため協会は、参加国と建設業者の間の予算面でのギャップを埋めるため、参加国に対して、▼予算の積み増しや▼デザインの簡素化によるコスト削減などの提案を行っています。
また、工期の短縮のための取り組みも進めています。
協会では、▼参加国ごとに担当者を配置したほか、▼今後、建設に詳しく、外国語に対応できる人材を置いたサポート窓口を新設することにしています。
「突貫工事」となった場合には、工事関係者を会場の夢洲に運ぶための通勤バスの増便などを検討するとしています。
さらに、特に準備が遅れている国や地域に対して、あらかじめ別の場所で作ったパーツを現地で組み立てる方法で協会側が建物を建てる案も提示しています。
この案では、内外のデザインは各国に委ねることを基本としますが、建設にかかる費用は参加国側に負担してもらうことにしています。
ただ、「万博の華」とも呼ばれる海外のパビリオンの独自性が損なわれてしまうおそれもあります。
協会では、パビリオンを自前で建設する国や地域に対して進捗(しんちょく)状況の聞き取りを進め、今月(8月)末までに参加国の状況を把握したい考えで、それぞれの国の実態に応じた対応策を講じていくことにしています。
一方、西村経済産業大臣は、万博の工事について、来年4月から建設業界で始まる時間外労働の上限規制の適用外にできるかどうかを政府と博覧会協会の間で議論していることを明らかにしました。
これに対して、加藤厚生労働大臣は「単なる業務の繁忙については認められないと認識している」と述べたほか、大阪府の吉村知事も「現時点では、『ルールの中で何ができるのか』ということを考えるべきだ」と述べるなど慎重な意見が相次ぎました。

【関西経済同友会“魅力減らぬよう”】
再来年の大阪・関西万博での海外のパビリオンの建設準備が遅れている問題について、関西経済同友会の角元敬治 代表幹事は「当初、思っていた形でなくても工夫の余地はあるはずなので、万博の魅力が減らないよう努力してほしい」と述べ、関係者が柔軟な対応を進めていくべきだという考えを示しました。
大阪・関西万博では、50余りの国や地域が、みずから費用を負担してパビリオンを建設することになっていますが、準備の遅れが指摘されていて、博覧会協会は、特に手続きが遅れている国や地域に対して、協会側が組み立て式で建物を建てる選択肢を提示するなど対応を進めています。
これについて、博覧会協会の副会長を務める、関西経済同友会の角元代表幹事は2日の記者会見で「当初、考えていたパビリオンが作れれば百点満点だが、一方で期限もある。当初、思っていた形でなくても工夫の余地はあるはずなので、関係者は万博の魅力が減らないよう努力してほしい」と述べました。
また、1850億円になると見込まれる会場建設費をめぐり、資材高騰の影響などでさらに上振れするとの懸念が出ていることについて、角元氏は「さらに建設費が上振れするという話は聞いていない。経済界としては3分の1の負担に向けて走り回っているので、これ以上の負担は難しい。今の予算の中で工夫してやってほしいということに尽きる」と述べました。

【大阪知事“新しい選択肢も”】
大阪府の吉村知事は記者会見で、大阪・関西万博の海外パビリオンの建設手続きが遅れていることについて、「冷静に見極めて、参加国が設計から建設までを自前で行う『タイプA』でできるところはやってもらいたいし、難しいのであれば、早い段階で、『タイプA』と、博覧会協会が建物を建築し、参加国が建物を借り受けて単独で入居する『タイプB』の間のような新しい選択肢を早めに示し、その国が表現したい未来社会がパビリオンで展示できるようにしていくべきだ」と述べました。
その上で、「2025年4月に開幕する予定で、みんなが動いているので、遅らせるつもりはない」と述べました。

【首相 夏休みの子どもたちに万博PR】
夏休みの子どもたちに再来年の大阪・関西万博を知ってもらう催しが文部科学省で開かれ、岸田総理大臣は、新しい技術を体験し、未来に夢と希望を抱くすばらしい機会になるとPRしました。
この催しは、夏休みの子どもたちに再来年の大阪・関西万博を知ってもらおうと、中央省庁の仕事を紹介する「こども霞が関見学デー」の一環として開かれました。
この中で岸田総理大臣は「万博では空飛ぶクルマや、世界中の人たちと自動通訳を通じて話せる新しい技術を体験できる。その多くは、皆さんが大人になるころには当たり前になっていく」と述べました。
そのうえで「皆さんが未来について考え、夢や希望を抱くことができるすばらしい機会になると思うので、ぜひ楽しみにしてほしい」と述べ、万博をPRしました。
そして岸田総理大臣は記念撮影に応じたり、握手を交わしたりして、参加した子どもたちと触れ合っていました。