人間国宝に関西から新たに4人 文楽の吉田玉男さんなど

伝統的な芸能や工芸の分野で高い技術をもついわゆる人間国宝に、関西から人形浄瑠璃文楽の人形、吉田玉男さんなど4人が新たに認定されることになりました。

関西から新たに国の重要無形文化財の保持者、いわゆる人間国宝に認定されるのは、▼「人形浄瑠璃文楽人形」の吉田玉男さん、本名、大西彰さん、69歳。
▼「狂言」の茂山七五三さん、本名、茂山眞吾さん、75歳。
▼「能シテ方」の金剛永謹さん、72歳。
それに▼木工芸の宮本貞治さん、69歳の、合わせて4人です。

このうち吉田玉男さんは大阪・八尾市出身です。
15歳で文楽に入門し、「人形遣い」として男の人形=立役の修行を積み、61歳のときに師匠の名跡の「吉田玉男」を襲名しました。
豪胆でありながら品格ある芸風で主要な役柄を的確に演じ、今の文楽に欠かせない存在になっていると高く評価されました。
会見した玉男さんは「まさか自分が人間国宝になるとは。とにかくうれしいです。文楽は世襲制度ではなく誰でも入ってこられるので、若い人にもどんどん来てほしいし、後進の指導にももっと力をいれていきたい。文楽の舞台には60の芸、70の芸、80の芸があるねんと師匠がよく言っていました。自分はまだまだこれからだと思っているので体を壊さないようにじっくりやっていきたい」と話していました。

また、茂山七五三さん、本名、茂山眞吾さんは京都市出身です。
狂言方大蔵流の茂山家に生まれ、いずれも人間国宝の父と祖父のもとで研さんを積み、堅実さと軽妙さをあわせ持つ独自の芸風を確立しました。
このほか、老人が主役で、高い技量が求められる「三老曲」と呼ばれる曲でも成果を上げたり、長年にわたり、後進の育成に尽力したりしていることなどが評価されました。
茂山さんは「全く予想しておらず、まさか自分がと思いましたが、この道を絶やさず、茂山家の芸をたくさんの方に見ていただく機会につなげていきたい。1番1番丁寧に、見ていて楽しいと思ってもらえるようこれからもがんばっていきたいです」と話していました。

金剛永謹さんは京都市出身。
「能シテ方」の流派の一つ、金剛流の二十六世宗家を平成10年に継承しました。
優美で華やかな金剛流の伝統的技法を高度に体現しているだけでなく、平成15年には老朽化していた「金剛能楽堂」を移築するなど、伝統を後世に残していく基盤整備に尽力していることなどが高く評価されました。
金剛さんは「想定外のことで、とても驚いています。人間国宝になったからといって急に変わるものはなく、もっと精進して、能のいちばん奥深いところに入っていきたいし、能楽の振興発展のために力を尽くしたいです」と話しています。

大津市の木工芸作家の宮本貞治さんは京都市生まれです。
20歳で京都の木工芸作家に弟子入りし、その後、独立し、大津市のびわ湖沿いの工房で制作に取り組んできました。
宮本さんは、素材の表面に漆を塗って削る工程を何度も繰り返す「拭漆(ふきうるし)」という手法で木目の美しさを生かした作品が高く評価されています。
作品の表面に水面の波紋などに着想を得た曲線を施していて、素材にあわせて自作した100種類以上の「かんな」を使い分けているということです。
また、10年前からは京都の大学で学生を指導し後進の育成に取り組むなど、木工芸の振興・発展に貢献していることも評価されました。
宮本さんは「連絡をいただいたときは驚いて言葉がつまりました。これまで応援してくれた人たちに感謝しています。これからも自分がわくわくするような、作ったことがない作品に取り組みたい」と話していました。
滋賀県で「人間国宝」に認定されるのは亡くなった方も含めて宮本さんが2人目です。