マイナカード“自主返納” 関西でも増える トラブル相次ぐ中

マイナンバーカードをめぐるトラブルが相次ぐ中、カードを「自主返納」した人が、ことし4月から先月(6月)にかけて増えていたことが県庁所在地などの自治体への取材でわかりました。
制度への不信感を理由に挙げる人もいて、全国の自治体の中には、返納しても個人情報とのひも付けが残ることなど、説明を強化する動きも出ています。

マイナンバーカードをめぐるトラブルが相次ぐ中、デジタル庁は、本人の希望によりカードを返納した件数が、発行開始から7年間の累計でおよそ47万件、このうち、先月1か月間ではおよそ2万件あったとしています。
NHKは、一連のトラブルを背景に返納数がどのように変わったかを探るため、東京23区、道府県の県庁所在地、政令指定都市のあわせて74自治体を対象に、ことし4月から先月(6月)までの月ごとの「自主返納」の数とその理由を尋ね、これらの数を集計していた48の自治体の回答をまとめました。
その結果、「自主返納」の数は、▼4月は124件、▼5月は205件、そして、▼先月は899件と、一連のトラブルが明らかになってから、増えていたことがわかりました。
こうした傾向は、関西の自治体でも同じで、集計が可能だった、堺市・神戸市・和歌山市・大津市の数を足し合わせると、▼4月は26件、▼5月は53件、▼先月は135件となっています。
返納の理由として、「使わない」、「顔写真が気にくわない」ということを挙げる人がいる一方で、「セキュリティー上不安を覚えた」、「一連のトラブルを受けて信用できない」など、制度への不信感を挙げる人もいたということです。
一方、デジタル庁によりますと、カードを返納してもマイナンバー制度のもとで個人情報はそのまま残されます。
全国の自治体の中には、▼返納した際のデメリットや▼専用サイト「マイナポータル」で自身の情報を確認できることを伝えるなど、説明を強化する動きも出ています。
一連のトラブルを受けて、政府はことし秋までをめどに、「マイナポータル」で閲覧可能な29項目すべてのデータの総点検を行うことにしていて国民の不安を払しょくし、引き続き、デジタル社会の実現に向けマイナンバーカードの普及を進めていくとしています。

【京都市では】
京都市では、マイナンバーカードを本人の希望で返納した件数が今月(7月)9日までの1か月で87件あり、このうち制度への不安や不信を理由にしたものが6割余りを占めました。
京都市によりますと、今月9日までの1か月間にマイナンバーカードを本人の希望で返納した件数は87件あったということです。
返納の理由を自由記述で尋ねたところ、▼「マイナンバー制度への不安や不信」を挙げたものが最も多い53件で、6割余りを占めました。
そのほかの理由として、▼「使わない、必要ない」が18件、▼「一身上の都合」が4件、▼その他が12件となっています。
京都市ではことし2月、出張の申請会場で顔写真を取り違えるミスがあり、これを踏まえて、▼窓口で本人の顔写真の確認をする際に新たに1人が加わってダブルチェックをするなど、対策を強化しているということです。
京都市マイナンバーカード企画推進担当の中嶋和重 課長は「トラブルなどの事案が報道されると、『自分はどうなっているか』など、不安を訴える問い合わせが寄せられ、自主的に返納する人も増えている印象だ。個人情報を扱う重要な作業なので一つ一つ慎重かつ丁寧に、確認の徹底を図りたい」と話しています。

【滋賀県内では】
マイナンバーカードをめぐるトラブルが相次ぐ中、滋賀県内ではことし4月から先月(6月)にかけてカードを「自主返納」した人が増えていたことが、自治体への取材でわかりました。
返納した理由については「個人情報の流出が怖い」とか「信用できない」などといった声が寄せられているということです。
マイナンバーカードをめぐっては、▼カードと一体化された健康保険証に他人の情報が登録されたり、▼コンビニで証明書を交付するサービスを利用した際に他人の住民票が発行されたりするなど、全国的にトラブルが相次いでいて、▼大津市でもカードの取得などで付与される「マイナポイント」が誤ってほかの人に付与されるミスが起きています。
NHKは、県内19の市町を対象にことし4月から今月(7月)6日までの間の「自主返納」の数とその理由について尋ねました。
その結果、14の市と町で「自主返納」が101件あったことがわかりました。
月別では、▼4月は5件、▼5月は16件、▼先月(6月)は62件と一連のトラブルが明らかになってから増えていて、▼今月(7月)に入ってから6日までの間でも18件ありました。
自治体別では、▼大津市が最も多く31件、次いで、▼草津市が13件、▼守山市が11件、などとなっています。
返納の理由としては、「カードの写真が気に入らず、再交付を希望する」とか、「利用することがない」などがあった一方で、「個人情報の流出が怖い」とか、「信用できない」、それに、「安全性の問題が不透明」などといった声が寄せられているということです。
<大津駅前では賛否の声>
マイナンバーカードをめぐるトラブルやカードを「自主返納」することについて、JR大津駅前では、賛否の声が聞かれました。
カードを持っているという60代の女性は「個人情報が全部わかってしまうので怖いなと感じます。カードは持っているけど全然使っておらず、かばんに入っているだけです」と話していました。
2人の子どもがいる30代の女性は「情報が流出したら嫌だし信用できないと感じるので、子ども2人のカードを作るのをためらっています」と話していました。
一方で、大津市の19歳の男性は「オンラインショップの本人確認などが簡単にできて便利です。友だちなどにも被害は出ていないのでこのまま使い続けたいです」と話していました。

【カード返納するとどうなる?】
マイナンバーカードを返納した場合、マイナンバー制度のもとで個人情報はそのまま残される一方、カードが必要な行政サービスなどは使うことができなくなります。
マイナンバー制度では、国民1人1人に12桁の番号のマイナンバーが割りふられています。
一方、マイナンバーカードは、顔写真が掲載されたICカードで、12桁のマイナンバーと氏名・住所・生年月日・性別の「基本4情報」が記載されています。
カードのICチップには、マイナンバーと顔写真のデータ、それに基本4情報のデータ、電子証明書などが記録されています。
それ以外の年金や医療、税といった個人情報は記録されていません。
このため、さまざまな行政手続きを行う際は、年金や医療、税などそれぞれの機関が管理する個人情報とひも付けを行うことで一体的に運用が行われる仕組みです。
このひも付けは、マイナンバーと行われることから、仮にマイナンバーカードを返納したとしても、ひも付けられた状態は残ることになります。
また、政府は、来年秋に今の健康保険証を廃止しマイナンバーカードと一体化する方針です。
マイナンバーと健康保険証の情報のひも付けは、年金や税などの個人情報と同様にカードそのものには健康保険証の情報は記録されていません。
いまの健康保険証が廃止された後も、健康保険証の情報はひも付けの形で管理されることになります。
一方、マイナンバーカードを返納した場合、使うことができなくなるサービスもあります。
専用サイトの「マイナポータル」は、マイナンバーカードのICチップの中に記録された電子証明書と暗証番号を使って本人確認を行う仕組みになっています。
このため、マイナポータルで▼引っ越しの際の転出届の提出、▼パスポートの取得や更新の手続きなどのほか、▼年金記録の確認や、▼住民税や所得に関する情報などの閲覧ができなくなります。
さらに、コンビニなどで住民票の写しなどの証明書の交付が受けられるサービスも使えなくなります。

【不安なときはどう確認?】
<マイナポータルで確認>
自分の情報が正しくひも付いているかどうか不安がある人は、専用サイト「マイナポータル」で確認できます。
「マイナポータル」は、スマートフォンやパソコンなどにアプリをダウンロードして使います。
自治体によっては、窓口に「マイナポータル」用の端末を設置しているところがあるので、スマートフォンなどがない場合は問い合わせてください。

<自分の情報が正しいか確認>
「マイナポータル」にログインするには、マイナンバーカードと、カードを取得した際に設定した数字4桁の暗証番号が必要です。
スマートフォンの場合は、「マイナポータル」を立ち上げて暗証番号を入力したあとマイナンバーカードを読み取るとログインできます。
そして、「わたしの情報」としてひも付けられている、税や年金、健康保険証、住民票の情報など29の項目を閲覧することができます。
例えば「健康保険証情報」では、氏名、フリガナ、生年月日、性別、保険者番号などを確認できます。
また、みずから登録した公金受取口座が正しいかどうかも「マイナポータル」で確かめることができます。
もし自分以外の情報が誤って登録されていた場合は、自治体の窓口やマイナンバー総合フリーダイヤル「0120−95−0178」に連絡してください。

<暗証番号を忘れたら?>
気をつけてほしいのが、「マイナポータル」にログインする際の暗証番号の入力です。
3回連続で間違えるとロックがかかってしまいます。
ロックがかかった場合や、暗証番号を思い出せない時には、住民票がある自治体の窓口まで出向いて暗証番号を再設定しなければなりません。
その場合、マイナンバーカードに加え、運転免許証などの本人確認書類が必要なケースもあるので、事前に自治体のホームページなどで確認してください。