大阪 淀川 絶滅危惧種の魚「ツチフキ」 28年ぶり発見

大阪を流れる淀川で、絶滅危惧種のコイの仲間「ツチフキ」が28年ぶりに発見されたと、琵琶湖博物館などの調査グループが発表しました。
調査グループは、今回の発見の背景には生息しやすい環境が戻ったことがあるのではないかとしています。

滋賀県立琵琶湖博物館などの調査グループによりますと、今回、発見されたのは、体長が4センチから8センチほどのコイの仲間で、絶滅危惧種の「ツチフキ」です。
以前は西日本に多く生息していたということですが、洪水対策での河川の改修や外来種の影響で生息数が減り、2007年に環境省のレッドリストで絶滅危惧種に指定されました。
淀川でも数が減り、1994年を最後に確認されていませんでした。
こうしたなか、調査グループは淀川での生息調査を続け、去年(2022年)6月から9月にかけて、大阪・守口市と高槻市の淀川で、28年ぶりに発見したということです。
発見したのは6匹で、調査グループは、その後、レントゲンで脊椎やしりびれの形を確認してツチフキだと特定し、先月(6月)20日、発表しました。
今回の発見の背景には、▼ツチフキが生息しやすい、「ワンド」と呼ばれる岸沿いの水がたまった場所が再び、増えたことに加え、▼外来種の駆除が進んだことがあるのではないかとしています。
調査に参加した琵琶湖博物館の川瀬成吾 学芸員は「淀川ではほとんど見つからず、絶滅したのではないかと思われていました。淀川も環境を改善すれば今後さらに魚が帰ってくる可能性を秘めているのではないか」と話しています。

【ツチフキとは】
琵琶湖博物館によりますと、「ツチフキ」は体長が4センチから8センチほどのコイの仲間です。
短い口ひげや、ひれに黒い斑点があり、餌を川底の土ごと吸いこみ、その土をエラから吹き出す姿から、「ツチフキ」と呼ばれるようになったとみられるということです。
生息するのは、▼岸沿いの水がたまった「ワンド」と呼ばれる場所や、▼農業用水路などです。
体長はオスがメスより大きく、繁殖期には、メスが産卵したあと、オスが卵を守って育てます。
大阪を流れる淀川では、1971年から72年にかけて行った調査の際、115か所のワンドであわせておよそ1200匹が確認されるなど、以前は身近な魚だったということです。
しかし、洪水対策の河川改修で生息場所のワンドが減ったほか、外来種の影響もあり、生息数が減少したということです。
1993年の調査で1970年代に生息が確認された115か所のワンドを改めて調べたところ、干上がるなどしてワンド自体が半減していて、見つかったツチフキはわずか6匹でした。
よくとしの1994年の調査でも数匹のツチフキが確認されましたが、これを最後にその後の28年間は見つかっていませんでした。

【ワンドとは】
ワンドは、川の岸沿いにある、水のたまった浅い池のような場所です。
大きさはさまざまで、水たまりのようなものから、深さ3メートルにもなる大きいものまであります。
川の水量が増えると、本流や隣のワンドとつながり、水が流れ込みます。
水が流れ込むと、ワンドの底にたまった泥に酸素や栄養素が供給され、川に住む生き物にとって、生息しやすい環境になります。
淀川のワンドにはさまざまな淡水魚のほか、トンボ、カメなど多くの種類の生き物が生息しています。
一方、水が流れ込みにくくなると、中に汚れがたまるほか酸素や栄養素が十分に届かず、生物が生息しにくくなるということです。

【ツチフキ再発見の理由】
今回の調査に参加した大阪府立環境農林水産総合研究所によりますと、ツチフキは、「ワンド」と呼ばれる、岸沿いに池のように水がたまった場所に生息するということです。
ワンドは、川の本流から水が流れ込むことで底にたまった泥に酸素や栄養素が供給され、泥にいるイトミミズなどを食べるツチフキにとって住みやすい環境になるということです。
しかし、1980年代以降、洪水対策などで作られたダムやせきによって川の水量が抑えられ、ワンドに水が流れ込みにくくなった結果、ツチフキが減少したとみられるということです。
ところが、2011年以降、大雨で淀川の水量が増えることが多くなり結果的に再び、ツチフキにとって生息しやすい環境になったとみられるということです。
また、ボランティアや研究機関などで作る団体が、月に数回、ワンド内のゴミの清掃や外来種の駆除を行っていて、こうした活動も生息環境の改善に影響した可能性があるということです。
河川の環境問題や治水に詳しく、今回の調査にも参加した大阪工業大学の田中耕司さんは「人が生活するうえで洪水対策といった治水は大切ですが、今後は、人と川の生物が共生できるような工夫をしていかないといけないと思います。また、川の生物を増やすには行政だけでは限界があり、ボランティアなどの力を借りる必要があると思います」と話していました。

【国も取り組み】
ツチフキを含め、淀川の生物が生息しやすい環境を作るため、国土交通省の淀川河川事務所も取り組みを行っています。
取り組みでは、砂や泥で埋もれてしまったワンドを、再び、生物が生息できるようにしたり、新たに整備したりしているということです。
この取り組みによって淀川のワンドは、2008年にはおよそ50か所でしたが、いまではおよそ90か所まで増えたということです。
さらに、ワンドのふちの高さを低くする部分を作り、川の水が流れ込みやすいようにする取り組みも行っています。

【最近の発見場所は】
ツチフキは去年(2022年)、びわ湖流域の川で相次いで発見されています。
琵琶湖博物館などの調査グループは去年、28年ぶりに大阪・守口市や高槻市を流れる淀川で6匹を見つけました。
また、別の調査グループが去年、京都府の鴨川や桂川で38年ぶりに発見したとする報告もあります。
いずれのグループも保全のため、発見した具体的な場所は公表していません。
一方、琵琶湖博物館によりますと、びわ湖での調査ではツチフキは、継続的に見つかっているということです。

【調査目的での飼育も】
琵琶湖博物館の保護増殖センターでは、種の保存や生態の調査のため、国内で絶滅が危惧されている38種の淡水魚を飼育しています。
飼育するなかには「イタセンパラ」や「イチモンジタナゴ」もいて、絶滅してしまった場合、生息環境を整備したうえで繁殖させたものを放流しています。
センターではツチフキの飼育も行っていて、2010年に初めて繁殖に成功し、その後も13年連続で成功しています。