近畿 路線価 3年ぶり上昇 コロナ影響和らぎ万博へ期待感か

相続税などの基準となる土地の評価額、「路線価」が3日に公表され、近畿地方の平均は3年ぶりに上昇しました。
背景には、新型コロナの影響が和らぎ、人の流れが戻ってきたことに加え、大阪・関西万博などへの期待感があるとみられます。

路線価は、国税庁が1月1日時点で算定した主な道路に面した土地の1平方メートルあたりの評価額で、相続税や贈与税を計算する基準となります。
ことしの路線価が3日に公表され、近畿地方の平均は去年から0.7%上がり、3年ぶりに前の年を上回りました。
府県別の平均では、去年と比べて▼大阪が1.4%、▼京都が1.3%、▼兵庫が0.5%上回り、▼滋賀が横ばいでした。
一方、▼和歌山が1.2%、▼奈良が0.2%下回りました。
主な地点では、大阪・梅田の「阪急うめだ本店」前の御堂筋が1920万円で、去年を1.3%上回り、40年連続で近畿地方では最高となりました。
「キタ」では、新型コロナの影響が和らぎ、買い物などをする人の流れが戻ってきたことに加え、JR大阪駅北側の「うめきたエリア」で再開発が進められていることも、価格を押し上げたということです。
難波周辺の「ミナミ」は、去年まで2年連続で下落率が全国最大だった心斎橋筋の戎橋付近が1416万円と、去年から横ばいでした。
コロナ禍で激減した外国人観光客が徐々に戻ってきていることなどが影響した形です。
このほか、大阪・港区の弁天町駅近くの弁天1丁目は、去年から10%の大幅な上昇となりました。
大阪・関西万博の会場やカジノを含むIR=統合型リゾート施設が整備される夢洲まで地下鉄が延伸されることで、大阪のベイエリアの玄関口として存在感が高まり、マンションや商業施設向けの土地の需要が高まっていることが要因です。

【近畿各府県で最高額の地点は】
3日に公表された「路線価」の近畿地方の各府県で最も評価額が高かった地点です。
▼大阪府では、大阪・梅田の「阪急うめだ本店」前の御堂筋が1平方メートルあたり1920万円でした。
これをはがき1枚あたりの大きさに直すと、およそ28万円になります。
コロナ禍前の2020年1月の算定から下がり続けていましたが、今回ようやく上昇に転じ、去年を1.3%上回りました。
40年連続で近畿地方の最高となりました。
▼京都府では、京都市下京区の四条河原町の交差点近くの四条通で、去年を3.6%上回り、697万円となりました。
▼兵庫県では、神戸市中央区三宮町1丁目の三宮センター街で、去年を2%上回り、500万円となりました。
▼奈良県では、奈良市東向中町の近鉄奈良駅前の大宮通りで去年を5.8%上回り、73万円となりました。
▼和歌山県では、和歌山市友田町5丁目のJR和歌山駅前で、去年と同じ36万円でした。
▼滋賀県では、草津市大路1丁目のJR草津駅東口広場で、去年を3.2%上回り、32万円でした。

【大阪 弁天町駅前 なぜ大きく上昇?】
大阪・港区弁天1丁目の「大阪メトロ中央線弁天町駅」前の中央大通は、1平方メートルあたり66万円で、去年から10%上昇しました。
背景には、再来年(2025年)に開かれる「大阪・関西万博」、さらに2029年の開業を目指すカジノを含むIR=統合型リゾート施設への期待感があります。
不動産鑑定士によりますと、万博の会場とIRの予定地である大阪湾の夢洲まで大阪メトロ中央線が延伸することから、弁天町が玄関口として多くの人が行き交う場所になると期待が高まっているということです。
このため駅周辺では、▼マンションを建設するための土地に加え、▼商業施設や飲食店向けなどの土地が人気を集めています。
およそ半世紀にわたって弁天町駅周辺に暮らしているという85歳の男性は「弁天町というと昔は田舎でしたが、マンションやスーパーが増えて都会らしくなってきました。万博が開かれるとにぎやかになるでしょう」と話していました。
また、3年前に引っ越してきた生後9か月の子どもを持つ25歳の母親は「高層マンションが増えていて、『ここにもできるんや』という感じです。物価は高いかなと思いますが、保育園や公園が近くにあって子育てしやすい街だと思います」と話していました。

【専門家“回復も二極化”】
大阪の路線価の評価を行った不動産鑑定士の山内正己さんは、ことしの傾向について、「大阪のミナミや京都などの観光地は、コロナ禍の影響で空いた店舗も埋まってきていて、消費の動きやインバウンド需要が戻りつつあることで、土地の価格は上昇に転じている。さらに今後は、日銀の金融緩和による低金利や円安によって、投資家が万博やIRを控える大阪に資金を投じる状況になってくる」と分析していました。
一方で、山内さんは関西では都心部と地方部で二極化が進んでいると指摘し、「IT企業が多い東京では在宅勤務が大幅に変わり、リモートで結べるので遠い場所に住んでもいいという傾向もあるが、関西では進んでいない。利便性が悪い和歌山や奈良の山間部などは路線価の下落が続く」と話していました。
そのうえで、山内さんは「路線価はすぐに検索できるので不動産や土地の価値がどのように変わっているのかを見てもらいたい。路線価が上昇しているところは再開発や新駅の整備など何らかの要因があるので、周辺に住んでいる人は今後の価格の動向に注目してもらいたい」と話していました。