マッチングアプリ トラブルの実態と対策

マッチングアプリなどの出会い系SNSの利用が広がりを見せる一方で、SNSでの出会いを悪用したトラブルも相次いでいます。

リクルートブライダル総研が行った婚活実態調査によりますと、恋愛・結婚をする意向がある、恋人のいない独身者2400人のうち、ネット系婚活サービスを利用していた人の割合は、2017年には9.1%でしたが、去年(2022年)は20.2%と2倍以上、増加しました。
アプリなどをきっかけに結婚した人の割合も増加する傾向があるということです。
一方、三菱UFJリサーチ&コンサルティングが、おととし(2021年)行った調査では、マッチングアプリを利用している20代から40代の人のうち、トラブルなどがあったと答えた人は半数を超えていました。
▼20代では、63.6%、▼30代では、58.3%、▼40代では、51.9%が、トラブルや困ったことなどがあったと答えました。
具体的には、「顔や体型など見た目が写真のイメージと違った」とか「サクラがいた」などの回答が比較的多かったということです。
また、「年齢などのプロフィールや交際や婚姻の状況を詐称された」とか、「お金を貸すよう求められた」、それに「詐欺にあった」などの回答もありました。
▼個人情報を安易に伝えないことや▼違和感を覚えたら運営会社に相談すること、それに▼実際に会う前に多くの質問をして相手を信頼できるか確認することなど、注意が必要だということです。

【SNS詐欺の被害女性が語る】
マッチングアプリを通じて出会った交際相手に警察官だとうそをつかれ、金をだまし取られたという30代の女性は、「アプリは便利な反面、職業を偽るなどの危険も潜んでいるので、ひと事とは思わないでほしい」と話しています。
大阪出身の30代の女性は、4年前、友人に勧められて、マッチングアプリの会員に登録しました。
アプリ上のプロフィールで、公務員だと自己紹介し、スーツを着ていた男性の写真を見て、しっかりとした人だと、好印象を抱いたといいます。
それが、警察庁のキャリア警察官だとうそをついていた、大阪・住吉区に住む、吉川剛司被告(36)でした。
アプリ上で、1週間ほどメッセージのやり取りをしたあと、別のSNSや電話でのやり取りに進展しました。
そして、被告からは、警察官の制服を着た写真や警察手帳の写真が送られてきて、会話の中でも警察の専門用語を使っていたため警察官だと信じこんでしまったといいます。
その後、直接、被告と会うようになりましたが、警察官の制服を着ていたり、警察署の前で待ち合わせをしたりすることもありました。
被告と電話をしていた時に、電話の向こうから被告が客引きに声をかけられて警察手帳を相手に見せているようなやり取りが聞こえ、被告が、「自分は警察官だ。俺にそんなこと言っていいのか。店はどこか」と客引きを取り締まるような声が聞こえたということです。
女性は「私も警察についての知識などがなかったので、こんな人が本当にいるんだと思ってしまいました。まさか、うそだとは思ってもいなかった」と話しています。
一方で、被告の行動に違和感を覚えることもありましたが、都合よく言いくるめられて交際を続けるうちに、次第に生活費などを要求され、金を渡すようになったといいます。
そして、出会ってからおよそ4年後の去年12月、被告の妻からSNSでメッセージが届き、警察官というのはうそであり、妻子もいたことを初めて知らされたのです。
その後、被告の自宅に本当のことを話すように問い詰めに行くと、髪をつかんで引っ張られ、投げ倒されてひじなどにけがを負わされたということです。
女性は、「もっと早い段階で相談に行けていればここまでなっていなかったと思います。マッチングアプリは、便利な反面、職業を偽るなどの危険も潜んでいます。ひと事とは思わずに被害には気をつけてほしいです」と話していました。
女性が被害を届け出て、逮捕・起訴された吉川被告は、女性からあわせて190万円余りをだまし取った罪や、親類の警察官の制服を盗んだ罪に問われ、先月(5月)の初公判で、起訴された内容を認めました。
NHKの取材に対して、被告側は、応じていません。

【専門家“リスクの意識を”】
出会い系SNSを悪用したトラブルについて、犯罪心理に詳しい、立正大学心理学部の西田公昭教授は、「リスクを意識したうえでSNSを利用し、違和感を覚えたら、家族や相談窓口など、第三者に相談することが大切だ」と指摘しています。
西田教授によりますと、出会い系SNSの利用者は、自分が恋愛や結婚をしたいという真面目な動機でアプリに登録すると、ほかの登録者も同じ思いだと考えて相手を信じてしまいやすいといいます。
トラブルに遭った場合は、自分で相手に直接、確かめると、相手からどなられたり、都合よく言いくるめられたりして、よりトラブルから抜け出せなくなるため、危険だと指摘しています。
そのうえで、西田教授は、「自分の恋愛感情に関係がなく、当事者に関わりのない、家族や相談窓口など、第三者に確認や相談をすることが大切だ。SNSの運営会社が行うトラブルの対策は、年々、強化されているが、完全ではないため、リスクも潜んでいるツールだと意識して利用するべきだ」と注意を呼びかけています。