近江八幡 アンダーパス冠水死亡事故 市の検証委が最終報告書

去年(令和4年)7月、滋賀県近江八幡市の冠水した地下歩道、いわゆるアンダーパスで女性が亡くなった事故について、市の検証委員会が最終報告書をまとめ、13日、市長に提出しました。
報告書では、市などに対し大雨の際、速やかに通行規制を行うことができる体制の整備を求めています。

近江八幡市では、去年7月、大雨で冠水した地下歩道で歩行者の72歳の女性が溺れて死亡しました。
13日開かれた市の検証委員会の会合で最終報告書がとりまとめられ、その後、多々納裕一 委員長から近江八幡市の小西理 市長に手渡されました。
報告書では、今回の事故を教訓として、さまざまなリスクを想定した体制整備などに努めるよう求めています。
そして、具体的な再発防止策として、▼道路を管理する市と県が地元の住民などと協議して通行規制を行う基準を定めておくことや、▼速やかに通行規制を実施するために、地元の警察や自治会などとの連絡体制を確立することが必要だと指摘しています。
また、市内のほかのアンダーパスについても、想定されるリスクを整理し、対策を検討するよう求めています。

【検証委員長“具体的な対策を”】
検証委員会の委員長で京都大学防災研究所の多々納裕一 教授は、報告書の提出後に取材に応じ「女性が亡くなった直接の原因は明らかにできなかったが、雨水がどこからアンダーパスに流れ込んできたのかなど、事故が起きた背景については検証できたと考えている。市には、想定外の大雨への対応を含め、具体的な対策を進めてほしい」と話していました。

【市長“万全の対策進めたい”】
報告書の提出を受けた近江八幡市の小西理 市長は「すでに対策を始めている内容もあるが、今回の報告書にはこれまで、市として考えていなかった対策も挙げられている。こうした事故が二度と起こらないよう、ハード、ソフト両面から万全の対策を進めていきたい」と話していました。

【遺族“原因分からず”】
亡くなった女性の長男の木下応祥さんは、最終報告書がまとまったことについて、「結局、母が亡くなった原因や当時の市の対応については何も分からず、納得のいく内容にはなりませんでした。委員会も何度か傍聴しましたが、人が1人亡くなっているのに真剣さが伝わってこず建設的な議論もなされていないと感じました」と話しました。
そのうえで、「最終報告書がまとまるのに長い時間がかかり、ことしも大雨や台風が来る季節になってしまい、母の死を無駄にしないための対策が間に合っていないことが悲しいです。結局遺族として知りたいことは分からずじまいだったので、あとは、民事裁判の場で明らかにしていきたいと思います」と話していました。