大阪教育大附属池田小事件22年で追悼の集い 風化防止誓う

大阪・池田市の大阪教育大学附属池田小学校で8人の児童が殺害された事件から6月8日で22年となります。
8日、学校で追悼の集いが開かれ、事件の風化を防ぐことを誓いました。

平成13年6月8日、大阪教育大学附属池田小学校に宅間守 元死刑囚が侵入し、児童8人が殺害され、児童13人と教員2人がけがをしました。
事件から22年となる8日、遺族や児童、教職員などあわせておよそ760人が出席して追悼の集いが行われ、はじめに亡くなった8人の名前が刻まれた塔の鐘が鳴らされて全員で黙とうをささげました。
そして、当時6年生の担任だった眞田巧 校長は、「学校や子どもたちが襲われる事件があとを絶ちません。事前の対策はもちろんのこと、事件や事故が起きた際には対策を練り、改善に努める姿勢が大切です。学校が安全で安心して学べる場所であるようにこれからも努力を続けます」と述べました。
このあと、児童代表の6年生が、「8人の先輩方の生きたかった想い(おもい)を常に心に留め、受け継がれてきた想いを次に届けていきます。1人1人のかけがえのない命を大切にしていくことこそが、事件を風化させない第一歩だと考えています」と誓いの言葉を述べました。
附属池田小学校では不審者に対応する訓練のほか、事件を教訓に「安全科」という授業を設け、子どもたちの命を守るための教育を続けています。

【校長“伝えること使命”】
追悼の集いのあと、事件当時6年生の担任だった眞田校長が取材に応じ、「事件から22年がたちましたが、毎年同じように決して忘れてはならないという思いになります。二度と同じような事件が起こらないためにも、事件を伝えることは使命だと考えています」と話しました。
また、子どもたちの安全を守る取り組みについて、「学校内の安全は、教職員が守らなければなりません。学校安全に特効薬はないので、気づいたことから一つ一つ改善することが大切だと思います。学校の外で私たちの目が届ききらないところでは、保護者や地域の人に見守ってもらっています。地域の方々には、出かける折に見守るなど、無理のない範囲で関わってもらいたいです」と話していました。

【事件時 教室にいた同級生は】
当時、池田小の1年生で、教室で現場を目撃した28歳の男性は「6月8日は忘れたい日ですが、忘れてはならないと毎年思います。事件の前後10分は写真のように覚えています。事件を受けて、死に対する恐怖はほかの人より強いと感じます。いい人生を送っていると亡くなった同級生に胸を張って言えるように日々頑張って生きたいです」と話していました。

【遺族“心の声に耳傾けて”】
当時、小学2年生だった長女の優希さんを亡くした本郷由美子さんはNHKにコメントを寄せました。
本郷さんは「22年というと、ずいぶんと時間がたったように思う一方で、事件のことは、ついさっき起きたようにも感じ鮮明に思い出します。次女や娘の友人の成長を見ると時間の流れは残酷だと感じますが、それを受け入れる自分の寛容さも感じ、複雑な気分です。きょうは、被害にあった子どもたちの心の声に耳を傾けてもらいたいです」としています。
ことし3月に埼玉県で17歳の少年が中学校に侵入してナイフで教諭を切りつける事件が起きるなど、学校で子どもが危険にさらされる事件が無くならないことについて、「学校で一番大切なことは『子どもたちの命を預かっている』という意識を一人ひとりがしっかりと持つことだと考えています。学校に不審者が侵入してしまったとか、それでケガをしたなどという話しを聞くと、同じ事が繰り返されており、いまだに課題だと思います」としています。
そのうえで、「池田小学校の事件だけでなく、いろいろな事件や事故の遺族が2度と起きてほしくないという思いで、活動に取り組まれています。子どもたちや私たち大人も自分たちの命が守られているということを感じてもらいたいです」としています。

【男性“6月8日は重要な日”】
事件当時、仕事で池田小学校を訪れていた55歳の男性は、「事件のあと、毎年献花に来ています。6月8日は、大人たちがどのようにして子どもたちを守るのか、子どもたち自身もどのようにして自分たちを守るべきか考える重要な日です。犠牲になった子どもたちの顔を思い出すたびに、どんな大人に成長していたのかなと考えてしまいます」と話していました。

【女性“安心して通えるよう”】
大阪教育大学附属池田小学校の卒業生で、小学3年の息子が池田小に通っているという40代の女性は、「事件からしばらくはショックで学校に来ることもできませんでしたが、最近は息子が通ってることもあり、被害のあった子どもたちに手を合わせたいという思いで献花に来ています。安全な学校だと信じているので、これからも子どもたちが笑顔で安心して通えるようにしてほしいです」と話していました。

【子どもたち見守りに課題】
東大阪市では、小学校への不審者の侵入を防ぐため、池田小学校の事件をきっかけにおよそ20年前から対策を強化しています。
すべての小学校で校門にオートロックを設置して、登下校の時間以外は、門は閉じられています。
来校者の対応は、モニターが付いたインターホンで行い、校内のモニターで来客の姿や用件を確認したうえで原則、教職員が門まで出向いて対応します。
市によりますと、校内に入る人を制限することで、不審者が敷地内に入るリスクを下げているということです。
さらに、東大阪市では、「愛ガード」と呼ばれる、独自の子どもの見守り活動も行われています。
学校と保護者、それに地域のボランティアが連携して、主に登下校の時間帯に通学路で子どもの見守りをしています。
今月7日、市立英田南小学校では、地域のボランティアなどおよそ20人が参加して、登校の時間帯に活動が行われていました。
参加した人たちは「おはよう」と声をかけながら子どもたちを見守っていました。
「愛ガード」が発足したおよそ20年前から参加している70代の男性は、「子どもの安全のために活動をしています。子どもたちが挨拶をしてくれることで、私が元気をもらっています」と話していました。
一方、課題も出てきています。
市によりますと、ボランティアの参加者の数は、平成21年度のおよそ1万8000人をピークに徐々に減少していて、現在は1万1000人余りとなっています。
また、活動が登下校の時間帯のため、働く世代の参加が難しく、担い手の確保が難しいということです。
高齢化も進み、市は参加者を募集をしていますが、思うように集まっていないということです。
地域ボランティアを統括する英田南自治連合協議会の寺尾健一会長は、「高齢化やなり手不足を解決する特効薬はなく、活動を積み重ねて一人一人のつながりを増やしていくしかないと思います。地域全体の課題としてみんなで考えて協力し、子どもたちが安心して住める街にしていきたい」と話していました。

【「ながら見守り」広がる】
ボランティアの人手の確保が課題となる中、地域の人たちが日常生活の中で子どもたちの見守りを行う「ながら見守り」が広がっています。
「ながら見守り」は、活動する場所や時間をあらかじめ決めず、買い物や犬の散歩などをしながら、見守りをします。
堺市南区で、「ながら見守り」を行っている川口眞利子さんは、趣味のランニングをする際に地域の役に立てないかと3年前から活動を始めました。
当初、3人だったメンバーは、友人のつながりやSNSなどでの呼びかけにより68人に増え、職業や年齢は問わず、小学生から70代まで幅広い世代が参加しています。
メンバーどうしの交流や活動の報告は、主にSNSで行い、いつ、どこにいても参加できます。
この日は、地元の小学校を中心にランニングや散歩をしながら30分ほど見回りを行いました。
参加した70代の男性は、「SNSで活動を知り、自転車に乗りながら見守りをしています。防犯灯が暗いとか、いつも止まっている車がいるとか、そういう視点で見ています」と話していました。
また、散歩をしながら参加した30代の女性は、「やらないといけないという義務ではなく、日常の中に溶け込ませて、気負わずにできます」と話していました。
川口さんは、「自分ができるときにできるペースで細く長く続けられます。1人よりも2人、2人よりも3人と母数を増やして、今日もどこかで誰かが見守りをしている状況を作ることができればいいと思います」と話していました。