大阪 “着床前診断ミスで流産”不妊治療の夫婦が賠償求め提訴

大阪市のクリニックで不妊治療を受けていた40代の夫婦が、体外受精させた受精卵を調べ異常がないものを子宮に戻す「着床前診断」で、医師が流産する可能性の高い受精卵を誤って選んで子宮に移植したため流産したなどとして、あわせて1000万円余りの賠償を求める訴えを起こしました。

大阪地方裁判所に訴えを起こしたのは、大阪市にあるクリニックで不妊治療を受けていた40代の夫婦です。
訴えによりますと、4年前(2019年)の10月、夫婦は、医師から体外受精させた受精卵を調べた「着床前診断」の結果の説明を受けたうえで、受精卵を子宮に移植し、妻の妊娠がわかりましたが、およそ1か月後に流産したということです。
夫婦は、医師らが受精卵の検査結果をきちんと確認せず、流産する可能性の高い受精卵を誤って選んで移植したため流産したなどとして、クリニックや医師らに対して、あわせて1000万円余りの賠償を求める訴えを起こしました。
夫婦の代理人の八木倫夫 弁護士は「流産で妊娠の可能性が低下するなど被害は重大だ。不妊治療をしている人の流産はより精神的にも経済的にも苦痛が大きい」と話していました。
クリニックは、「訴状を見ていないのでコメントできない」としています。

【妻“忘れることはない”】
原告の女性は、代理人の弁護士を通じてコメントを出しました。
女性は、「ストレスとプレッシャーを乗り越えて、妊娠の判定。うれしかったです。ただひたすらおなかの子が元気に育ってくれるよう不安を抱えつつ祈りながら毎日を過ごしていました。そして、『心拍が確認できない』とのことば。この世の終わりかと思いました。毎日泣きながら過ごしました。たった8週間でもおなかにいてくれたこの子と離れたくない。流産の手術後も1か月にわたって止まらない出血は肉体的にもつらく、この精神状態は数か月にわたって続きました。今でも、あの時の悲しみやつらさ、絶望感がずっと私を捕らえたままで、忘れることはありません」とつづっています。
そのうえで、「通院している患者たちは人生と命をかけて不妊治療に臨んでいます。ずさんな診療体制は氷山の一角なのではないかと、とても不安で心を痛めています」などと記していました。