伊丹 川の堤防決壊で浸水被害“工事で川幅狭め想定以上の雨”

7日から降り続いた大雨の影響で、兵庫県伊丹市で川の堤防が壊れ、市内の10棟余りが浸水する被害が出ました。
川を管理する兵庫県によりますと、堤防が壊れた場所では川底を強化する工事のために土のうが積まれ、川幅が通常の半分ほどまで狭められていたということで、県は、「過去の雨量を調べたうえで川幅を狭めていたが想定以上の雨が降って、川が増水し、堤防が決壊したとみられる」としています。

兵庫県や伊丹市によりますと、8日午前0時50分ごろ、伊丹市荒牧6丁目を流れる天神川の堤防が壊れ、周りの住宅街に水が流れ込みました。
県によりますと、この周辺で、▼床上浸水が1棟、▼床下浸水が11棟、確認されたということです。
今のところけが人はいないということです。
堤防はおよそ30メートルにわたって壊れていて、周辺の道路に土砂が流れ込み、複数の乗用車が土砂に埋まる被害も出ました。
川を管理している兵庫県によりますと、堤防が壊れた場所では、川底を強化する工事のため川の中に土のうが積まれ、ふだんは15メートルほどある川幅が半分ほどまで狭められていたということです。
工事は、去年3月から始まり、川幅を狭める作業は比較的雨が少ない去年11月から今月にかけて行っていたということで、工事の一環で、堤防は本来より薄くなっている部分があったということです。
兵庫県は、「過去5年間の雨量を調べたうえで川が増水しても耐えられると考え、川幅を半分にして工事をしていたが、想定以上の雨が降り、堤防が決壊したとみられる」と話していて、今後、詳しく調べることにしています。

【兵庫 伊丹 天神川の周辺は】
7日夜から降り続いた雨で越水した兵庫県伊丹市の天神川は、周りの土地より高いところを流れるいわゆる「天井川」で、川の下を通る道路のトンネル工事が行われています。
工事現場の周辺にある住宅街を通る道路は8日午前6時現在、水につかった状態になっていて、あちこちで泥で濁った茶色の水が勢いよく流れていました。
また、近くで止まっていたとみられる複数の車が土砂に飲み込まれていて車のほぼ全体が埋まっていました。
警察によりますと、人が巻き込まれたという情報はないということです。
川から300メートルほど離れたところにあるガソリンスタンドの従業員は「きょう午前1時半ごろ、『ドーン』という音がして一気に水が流れてきて、辺り一面が海のようになった」と話していました。

【兵庫 伊丹 天神川流域 当時の状況は】
7日夜からの大雨で越水した、兵庫県伊丹市の天神川が流れる荒牧地区に住む女性が、8日午前1時半ごろに自宅の3階から撮影した映像では、ザーと雨が強く降っていて、緊急車両のサイレンの音が鳴り響いています。
自宅前の道路は大人のひざ下ほどの高さまで茶色く濁った水であふれ、水が流れている様子が確認できます。
水であふれた道では、警察官がライトを手に持ちながら「大丈夫ですか。避難の準備をしてください」と大声で呼びかけていました。
女性は、警察官に対し、向かいの家の人がまだ寝ていて気付いていないようなので、知らせてほしいと伝えていました。
水が引いてからNHKの取材に応じた女性は「午前1時半ごろ、お隣さんから『ガタガタガタという音を聞いて大変な状況だ』と連絡が来て、起きて見てみたらこういう状況でした。この辺り一面が浸水していたので大変でした。水が入ってこないか心配で、どうしたらいいかわかりませんでした。まさかこんなことになるとは思いませんでした」と話していました。

【避難した住民は】
荒牧地区に住む40代の女性は当時の様子について、「外に出ると膝上くらいまで水が上がってきていて、怖くなって避難所に向かった」と話していました。
この女性が、8日午前1時ごろに1階の玄関から撮影した映像では、自宅前の道路に茶色く濁った水が流れ、高さが50センチほどに及んでいる様子が確認できます。
また、別の写真では、自宅前の自転車や自動車がタイヤの半分ほどまで泥水につかっている様子がわかります。
女性は家族と一緒に、玄関にたまった泥をスコップなどを使って外にかき出していました。
女性は当時の様子について、「起きていた息子が水位がどんどん上がるのを見て、私を起こしにきてくれました。外に出ると膝上くらいまで水が上がってきていて、怖くなって避難所に向かいました。朝の5時に避難場所から家に戻ったときには、水位は足首くらいの高さになっていました」と話していました。

【土砂の撤去作業進む】
7日夜からの大雨で堤防が決壊した兵庫県伊丹市の天神川流域の荒牧地区では、流れ込んだ土砂の撤去作業が続いています。
荒牧地区では、8日午前10時ごろから土砂の撤去作業が始まり、県の職員やボランティアなどが側溝にたまった泥をスコップでかき出したり、ホースを使って土を洗い流したりしていました。
また、付近では、ほとんどが土砂に埋まった車もあり、重機を使って周りの土砂を取り除く作業も行われていました。

【西宮では5月最多の雨量】
神戸地方気象台によりますと、前線が西日本付近に停滞し、この前線上に発生した低気圧が7日夜から8日未明にかけて近畿地方を通過したため、兵庫県の南部では、阪神地区を中心に大雨となりました。
天神川の堤防が壊れた伊丹市の西隣の西宮市にある観測地点では、8日午前3時までの24時間に降った雨の量が189.5ミリと、5月としては2006年の統計開始から最も多くなりました。
西宮市にある津門川の津門川観測所では、8日未明に一時、氾濫危険水位を超えました。
また、気象台は7日午後11時半すぎから伊丹市に大雨警報を発表したほか、8日午前0時すぎに兵庫県とともに伊丹市など阪神間の5つの自治体に対して土砂災害警戒情報を発表して厳重に警戒するよう呼びかけていました。