フジテック社外取締役3人解任 ファンド側選んだ4人選任可決
滋賀県彦根市に本社があるエレベーターメーカーの「フジテック」の臨時の株主総会が開かれ、香港の投資ファンドが提案していた社外取締役の解任については5人のうち3人が賛成多数で可決されました。
さらに、ファンドが選んだ6人の社外取締役の候補のうち、4人が選ばれ、経営の混乱が深まることになりそうです。
フジテックの株式のおよそ17%を保有する香港の投資ファンド、「オアシス・マネジメント」は、企業統治が深刻な状況にあるとして、社外取締役全員を交代させるよう求めていました。
臨時の株主総会は24日午前10時から彦根市の本社で開かれ、▼5人の社外取締役全員を解任し、▼新たに6人を選任するとしたファンド側の提案などが諮られました。
採決の結果、▼5人の社外取締役のうち取締役会議長を含む3人の解任が、▼ファンド側が選んだ6人の候補のうち4人の選任がそれぞれ賛成多数で可決されました。
会社側が提案した2人の選任はいずれも反対多数で否決されました。
これによって、フジテックの取締役会は9人のうち4人がファンド側が選んだ取締役となり、経営の混乱が深まることになりそうです。
フジテックをめぐっては、ファンド側が会社と創業家との間で不透明な取り引きがあると指摘していて、会社側は、去年の株主総会で当時の内山高一 社長の再任案を直前になって撤回したものの、内山氏が会長に就任したことで両者の対立が激化していました。
【フジテック“企業価値向上に”】
今回の臨時の株主総会の結果について、フジテックは「株主総会の結論がどうであれ、安全安心なエレベーターとエスカレーターを提供することに変わりはありません。今後も、コーポレートガバナンスと企業価値の向上に取り組んでいきます」とコメントしました。
【投資ファンド“積極的に監視”】
フジテックの臨時株主総会の結果について、大株主の香港の投資ファンド、「オアシス・マネジメント」は「現任の取締役および経営陣に対する重大なメッセージになる。説明責任、透明性などを含む有意義な変革を求めていく。新たな取締役会がフジテックを内山家の支配から解放し、すべての株主の利益のために協力して行動することを最も期待している」などとする声明を出しました。
そのうえで、「取締役会の行動を積極的に監視していく」として今後もフジテックへの関与を続ける考えを示しました。
【対立の経緯】
「フジテック」をめぐっては、香港の投資ファンド、「オアシス・マネジメント」が当時の内山高一社長ら創業家との間に不透明な取り引きがあると指摘し、去年6月の株主総会で内山氏の取締役の再任案に反対するようほかの株主に呼びかけました。
フジテックは、「取り引きに問題はない」としつつも、総会の直前になって内山氏の再任案を撤回する異例の事態となっていました。
フジテックは第三者委員会を設置し、調査を進めていますが、内山氏が取締役を外れたあと、会長に就任して社内にとどまったことで両者の対立がさらに激しくなります。
フジテックは内山氏の会長就任について、「事業への影響を最小限にするための措置だ」としたうえで、内山氏は取締役会などには参加せず、必要に応じて事業に関連したアドバイスを依頼していると強調し、経営への直接的な関与はないと主張しています。
対する「オアシス」は、社外取締役が内山氏の会長就任を認めたことは監督責任を果たしていないとして、全員を交代させるよう求める事態となっていました。
今回、5人の社外取締役のうち3人が解任されましたが、株主の提案によって社外取締役が解任されることは極めて異例です。
フジテックの取締役会は9人のうち、▼会社側が選んだ取締役が5人、▼ファンド側が選んだ取締役が4人の構成となり、会社側は過半数を維持しますが、ファンド側の影響力が増すことによって経営の混乱が深まることが予想されます。
【専門家“統治厳しい目に”】
企業統治に詳しい大江橋法律事務所の澤井俊之 弁護士は今回のフジテックの臨時株主総会の結果について、「社外取締役は『一般株主の代弁者』とも言われ、企業の統治や意思決定のあり方についてどう判断したのか、株主からより厳しい目で見られるようになっていることを示すものだ」と述べました。
そのうえで、「総会の結果、9人の取締役のうち、ファンド側が選んだ社外取締役が4人となったが、会社側は、4人の意見をないがしろにできない。4人の意見を否定する場合は、その判断の過程を説明できるようにしなければならない」と述べ、今後の経営ではより透明性が求められるという考えを示しました。
さらに、いわゆる「物言う株主」が株主総会で積極的に提案を出すようになっている背景について、「近年、会社の情報開示が増え、株主にとっても判断材料が増える中、業績と比べれば企業統治はどこに問題があるかを指摘しやすいという特徴がある。さらにインターネットによってほかの株主から同意を得るためのキャンペーンもコストをかけずに行える環境になってきている」と指摘しています。