造船現場のアスベスト健康被害“給付金対象外は不当”国を提訴
建設現場のアスベストによる健康被害を対象に、給付金を支給する制度が設けられましたが、造船作業の現場は対象とならず不当だと主張して、造船現場でアスベストを吸い込み肺の病気になった関西などに住む、元作業員と遺族が、国に賠償を求める訴えを起こしました。
大阪地方裁判所に訴えを起こしたのは、昭和28年から平成15年にかけて、造船会社や下請け企業で船内の電気設備や配管の工事などをしていた元作業員と遺族、あわせて10人です。
アスベストによる健康被害をめぐっては、建設現場については、国などの責任を認めたおととし(令和3年)5月の最高裁判所の判決を受けて被害者や遺族に給付金を支給する制度が設けられましたが、厚生労働省は、造船作業の現場は対象外としています。
元作業員らは、造船現場でアスベストを吸い込み肺がんや中皮腫などを発症したと労災で認められていて、工事の内容や密閉性の高い船内の環境も、建設現場と同じであり、給付金の対象にすべきだと主張して、国に対し、1人あたり1200万円余りから1400万円余りの賠償を求めています。
原告側の弁護団によりますと、造船現場のアスベストの健康被害で労災認定された人は、昨年度(令和3年度)までに全国で1800人余りと建設現場に次いで多いということで、10日、札幌地方裁判所でも同様の訴えを起こしました。
大阪アスベスト弁護団団長の村松昭夫 弁護士は「造船現場の実態を考えれば、当然、支給対象にすべきで、早期の解決を図りたい」と話していました。
【遺族“国の責任を”】
訴えによりますと、原告のひとりで、昭和35年からおよそ27年間、造船配管工として働いた京都府の男性は、おととし(令和3年)、悪性胸膜中皮腫によって79歳で亡くなりました。
男性の妻(75)は、「夫はつらく苦しく壮絶な病と闘った末に命を落とし、家族はアスベストの恐ろしさを痛感しました。国がアスベストの使用の危険性を広く知らせてくれていたら夫はそんな危険な仕事はしていませんでした。国が造船業の被害者には責任を認めないと聞いてがく然としましたが、裁判で国の責任を明らかにしたいです」とコメントしています。
【厚労省“適切に対応する”】
厚生労働省は、「訴状が届いておらず、コメントは差し控える。訴状が届きしだい、詳細を確認し、関係省庁と連携し、適切に対応する」とコメントしています。
【11日 無料電話相談】
大阪アスベスト弁護団は、11日午前10時から午後6時まで、造船現場などのアスベスト被害全般に関して、弁護士による無料の電話相談を行います。
番号は、0120−966−329です。