介護職員ら16人 未払い残業手当など求め提訴 大阪 箕面
大阪・箕面市にある介護施設で働いている職員ら16人が、残業手当などが適切に支払われていないとして、介護施設を運営する医療法人にあわせて6000万円余りの支払いを求める訴えを起こしました。
原告の職員らは「人手が不足するなかで職場環境を改善しなければいい介護サービスは提供できない」と主張しています。
訴えを起こしたのは、箕面市にある介護施設で働く職員11人と元職員5人の30代から60代の男女、あわせて16人です。
訴状などによりますと、この施設では、▼事前に上司が認めた時間だけが時間外労働として計算され、それ以外に必要な残業をしても残業手当が支払われないほか、▼着替えの時間を労働時間には含めず、▼15分以下の時間外労働は切り捨てられて計算されていたと主張しています。
おととし(令和3年)11月には、介護施設を運営する医療法人側が団体交渉の中で、▼着替えの時間を労働時間と認め、▼時間外労働は1分単位で計算すると認めましたが、その後も、適切な残業手当などが支払われなかったとして、職員らは、医療法人にあわせて6000万円余りの賃金の支払いを求める訴えを大阪地方裁判所に起こしました。
原告の職員らは、「若い職員が離職し人手が不足する中で、担当業務外の仕事なども手分けして行っている。職員が安心して働き続けられる職場環境に改善しなければ、入所者にいい介護サービスを提供できない」と訴えています。
【原告“介護現場変えなければ”】
箕面市の介護施設で働く原告の1人、渋谷国彦さん(63)は、「正社員を募集しても人が増えない状態だ。まず適切な賃金の支払いで介護現場を変えなければいけない」と話しています。
渋谷さんは、18年前(平成17年)から、この施設で、施設利用者の介護や相談業務を行う支援相談員として働いています。
介護施設では、静脈認証システムを使って出退勤の時間を打刻しますが、渋谷さんは、実際の残業手当などは、上司が認めた残業時間や勤務の変更などを記入した別の紙の記録に基づいて計算されていて、残業したのに上司から認められないケースも多いと主張しています。
渋谷さんは、「必要に応じて残業した分を、申請しても1時間以上は認めないと言われて、残業と認められません。その積み重ねで申請せずに残業を行うのが慣例となっている。若い介護職員がリーダーたちの働き方や処遇をみて、この職場でステップアップしたいと思えずに離職していく」と話しています。
また、人手が不足している介護職場の現状を踏まえて、「正社員を募集しても人が増えないというどん詰まりな状態だ。職員が安心して働き続ける環境にならないと、利用者やご家族にも迷惑がかかってしまう。介護職員の権利を守らなければいい介護はできない。まず適切な賃金を支払い、介護現場を変えていかなければいけない」と話しました。
【施設側“コメント控える”】
大阪・箕面市を拠点に医療や介護事業を運営する医療法人は、訴えを起こされたことについて、「訴状を受け取っていないため、コメントは差し控える」としています。
医療法人によりますと、介護施設での残業については、あらかじめ残業手当が含まれている職種もあるとしたうえで、事前に上司に申請があった残業時間に基づいて1分単位で計算して支払っており、残業申請を認めないことはないとしています。
着替えの時間についても、出退勤の時間を打刻したうえで、制服に着替えるというルールがあり、勤務時間として認めているということです。
また、職員らとの団体交渉については、これまでも就労制度を見直したものもあり、今後も誠実に対応していくとしています。