財務省文書改ざん 佐川氏の賠償責任認めず請求棄却 大阪地裁

財務省の決裁文書の改ざんに関与させられ自殺した近畿財務局の男性職員の妻が、「夫の死の真実が知りたい」と訴えて改ざんを主導したとされる佐川 元理財局長に賠償を求めた民事裁判で、大阪地方裁判所は、元局長個人の賠償責任を認めず、訴えを退けました。

森友学園に関する財務省の決裁文書の改ざんに関与させられ、4年前(平成30年)に自殺した近畿財務局の職員、赤木俊夫さん(当時54)の妻の雅子さんは、「夫の死の真実が知りたい」と訴えて、国と佐川宣寿 元理財局長に賠償を求める民事裁判を起こしました。
裁判では去年6月、赤木さんが職場に残したいわゆる「赤木ファイル」が開示され、財務省本省に、直接、抗議の意志を示したメールなどの内容が明らかになりました。
しかし、国との裁判は去年12月、国側が突然、請求を全面的に認める手続きをとったため、改ざんに関わった当事者への尋問が行われないまま終わり、佐川元局長との裁判が続いていました。
25日の判決で、大阪地方裁判所の中尾彰 裁判長は「財務省の調査報告書では佐川元局長は、改ざんの方向性を決定づけ、責任は免れないとされている」としたうえで、「赤木さんが改ざんの指示に対して抵抗したことは証拠上に表れている」と指摘しました。
しかし、「職務中の行為に関する賠償責任は国が負い、公務員個人は責任を負わない」という判例に基づいて、佐川元局長個人の賠償責任は認めませんでした。
そのうえで、「賠償責任を負わない以上、元局長が道義上はともかくとして説明をしたり謝罪をしたりすべき法的義務が発生するとは考えられない。国が賠償請求を認めるに至ったのだから被害者の保護に欠けるところはない」として訴えを退けました。

【死亡職員の妻 控訴する考え】
赤木俊夫さん(当時54)の妻の赤木雅子さんは、夫が使っていたマフラーを身に着けて判決を迎えました。
雅子さんは、「夫と一緒にいるような気分で判決に臨みました。しかし、私が知りたかったことは何も出てこなかった。なんのために裁判で2年8か月、頑張ってきたんだろうかと思えて残念でならないです。夫に報告したらどんな顔をするんだろうかと思います。夫は法律に守ってもらえなかったのに佐川さんは守ってもらえるんだと理不尽に感じました。夫は自分の意志を貫いており亡くなった夫のことを尊敬しているし、大好きです」と話しました。
そのうえで、「いまでも佐川さんは公の場で説明すべきだと思っている。夫の亡くなった理由や何があったのか知りたいし、二度とこういうことが起きてほしくないということを引き続き訴えていきたい」と述べ、控訴する考えを示しました。

【原告側の弁護士 判決を批判】
判決後に、会見を行った原告の代理人の生越照幸 弁護士は、「国家公務員の個人責任を認めない最高裁の判例をそのまま適用している。一般の公務員の個人責任と、本件のような重大な違法性や影響があるものを、形式的に同じに見ていいのか。権限のある国家公務員と国会議員が組んで、問題を起こしたとしても、誰も責任をとらず、真相も明らかにならないという前例をこれで作ってしまった」などと批判しました。

【専門家“形式的な判断”】
佐川元局長個人の賠償責任を認めず、訴えを退けた25日の判決について、行政訴訟に詳しい日本大学の鈴木秀洋 准教授は「最高裁判所の判例の枠組みから外れず、形式的にあてはめた驚きのない判断だ」と述べました。
そのうえで、「真相解明を求めて国に訴えを起こす当事者は、この制度しかないからと司法を頼っているのに、そのような実態を無視して、金銭面で被害を補てんすればそれ以上でも以下でもないという判断を示し続ければ、裁判への信頼を損なうことが懸念される」と指摘しました。