手話同時通訳などで通話「電話リレーサービス」ろう学校で授業
耳が聞こえない人と聞こえる人が、手話の同時通訳などを介して通話ができる「電話リレーサービス」について知ってもらおうという授業が、奈良県大和郡山市の学校で行われました。
大和郡山市の奈良県立ろう学校で行われた授業には、高等部の生徒、23人が参加しました。
「電話リレーサービス」は、▼手話通訳を介してテレビ電話でやりとりしたり、▼文字のチャットを使ったりして、耳が聞こえない人と聞こえる人が通話できるサービスで、去年7月から、国の指定を受けた財団法人が提供しています。
授業では、財団法人の職員が警察や消防への緊急通報などを含め、サービスは24時間、365日、利用できることを説明しました。
このあと生徒たちは利用のしかたを見学し、専用のアプリを起動させてオペレーターを呼び出すことや、電話をかける際のマナーなどについても説明を受けました。
生徒の1人は「初めて、このサービスを知りました。ふだんはLINEを使うことが多いですが、手話で会話できるのは便利だと感じたので、散髪や病院に行くときの予約に使いたいです」と話しました。
別の生徒は「メールをよく使いますが、社会に出たら電話が必要だと感じています。今回のサービスは、お互いの意図をしっかり理解しあえるのでとてもいいと思います」と話しました。
【“サービスのこと知って”】
奈良県立ろう学校の生徒たちに、サービスの内容などを説明した日本財団電話リレーサービスの職員、原千夏さん自身も耳が聞こえません。
電話を使ったのは「電話リレーサービス」がモデル事業として行われていたおよそ9年前が初めてでした。
サービスの利用前は、電話での要件をほかの人に頼むのに気苦労が絶えなかったり、お店などの予約1つをとるにしてもわざわざ足を運んだりしなければならなかったということですが、利用後はそうした場面も減り、いまは月に10回程度、飲食店や病院の予約などで活用しているということです。
サービスを提供する財団法人によりますと、先月(9月)末の時点で、耳が聞こえない人は1万546人が利用の登録をしています。
1か月の利用が多い時では4万件を超える時もあるということですが、聞こえない人の若い世代の利用率が低いことや、サービス自体の認知率も17%と、まだまだ低いことが課題です。
原さん自身も電話の相手から、「電話リレーサービス」がそもそも何なのか質問されたり、警戒されたりするなど、周知不足を感じる場面があるということです。
原さんは、耳が聞こえない人に電話という選択肢があることについて、「LINEなどは確かに便利だが、急ぎの場合は、電話しか手段がないときもある。耳が聞こえない人は、自分に関係ないと思ったりせずに、積極的に利用して、自立した生活を送れるようになってほしい」と話していました。
また、耳が聞こえる人たちには、「050から始まる電話リレーサービスの番号から着信があったら出るようにしてほしい」などと制度への理解を求めていました。
【電話リレーサービスとは】
「電話リレーサービス」は、手話通訳を介して耳が聞こえない人と聞こえる人を電話で双方向につなぐサービスです。
▼耳が聞こえない人は、テレビ電話画面の手話かチャット上の文字を通して、▼耳が聞こえる人は一般的な電話と同様に音声を通して、つながることができます。
このサービスは日本財団が平成25年度に国の補助金を活用したモデル事業として始めました。
おととし6月、「聴覚障害者等による電話の利用の円滑化に関する法律」が成立したことを受けて、去年7月、国の指定を受けた「日本財団電話リレーサービス」が公共サービスとして提供を始めました。
24時間、365日利用可能で、警察や消防などへの緊急通報にも使えます。
耳が聞こえない人は事前にアプリか郵送で利用者登録が必要で、登録されれば、050から始まる番号が発行されます。
一方、耳が聞こえる人は誰でも登録なしで利用することができます。
サービスに関する問い合わせは、ファックスなどのほか、財団法人のホームページからであれば、手話やチャットでも行えるということです。
【問い合わせ】
一般財団法人日本財団電話リレーサービス
03−6275−0913
03−6275−0910