新型コロナ水際対策緩和 宿泊施設不足の懸念など新たな課題も

11日から始まった新型コロナの水際対策の緩和についてです。
日本を訪れる外国人観光客は2011年から年々増加し、感染拡大前の2019年には3188万人に達しました。
しかし、水際対策の強化で去年は24万人と、99.2%減少しました。
今回の緩和によって今後、外国人観光客の回復が見込まれますが、関西では宿泊施設の不足が懸念されるなど新たな課題も見えてきました。

【大阪城公園南側に外資系ホテル進出】
シンガポールに本社がある高級ホテルグループは、大阪城公園の南側に新しいホテルを進出させることを明らかにしました。
関西では、高級ホテルの開業計画が相次いで発表されていて、今後、本格的な回復が見込まれる国内外の旅行需要の受け皿となれるかが注目されます。
NTT都市開発は、大阪城公園や難波宮跡公園に隣接するNTT西日本の本社跡地に建設予定のホテルについて、シンガポールに本社がある高級ホテルグループ、「カペラホテルグループ」と運営委託の契約を結んだことを明らかにしました。
高さ102メートル、地上20階建てのビルに入居することにしていて、標準的な客室の広さは1室あたり50平方メートル以上で、あわせて220室を設けるということです。
新しいホテルは「パティーナ大阪」という名称で、大阪・関西万博が開かれる2025年春の開業を予定しています。
ホテルの上層階からの眺めや、万博が開かれる夢洲や奈良などへのアクセスの良さが利点だとしていて、富裕層を中心に国内外の旅行需要を取り込みたいねらいがあります。
カペラホテルグループのクリスティアーノ・リナルディ社長は大阪市内で開いた記者会見で「開業する2025年にはコロナ禍からの回復も果たしていて、ホテル需要も活況を取り戻していると思う」と述べました。

【“観光回復で高級ホテル不足に”試算も】
関西では、外国人観光客の回復を見込んでホテルを建設する動きが出てきていますが、外国人観光客がコロナ禍前の水準に回復した場合、高級ホテルの客室の供給が需要に対して3割近く不足するという試算も出てきます。
日本政策投資銀行関西支店が国内外からの観光客の数やホテルの予約サイトの情報などを参考に、1室あたり1泊10万円以上の客室についてまとめた試算では、外国人観光客がコロナ禍前の水準に回復し、客室の稼働率が85%と想定すると、4年後の2026年には関西では、需要に対して供給が3割近い1300室余りが不足するということです。
(需要が4585室、供給が3273室。)
関西では、すべての府県で客室の供給が不足する結果となり、なかでも、大阪府では、およそ2101室の需要に対し、供給はおよそ1143室にとどまり、4割余りにあたるおよそ950室が不足する試算になっています。
2025年の大阪・関西万博に向けて、大阪ではJR大阪駅北側の「うめきた」エリアをはじめ高級ホテルの建設が計画されていますが、計画中のホテルが完成しても、客室数が不足する見通しだとしています。
国内外の富裕層は高額な買い物をすることが多く、消費などへのプラスの影響が期待されますが、関西ではこうした需要を十分に生かせないおそれが指摘されています。
ただ、ホテルは一度建設してしまうと撤退が容易ではないため、新型コロナのように急激な環境の変化が起きた場合、供給が過剰になる懸念もあります。

【兵庫 ヘリ移動で外国人の消費増を】
水際対策が緩和され、外国人観光客の増加が期待される中、兵庫県は、チャーターヘリを移動に活用して県内を周遊してもらい、外国人観光客の県内での消費額を増やそうとしています。
兵庫県には多くの外国人が訪れる一方、観光庁の調査によりますと、外国人観光客1人あたりの県内での消費額は3万円と全国41位となっていて、どのように経済効果につなげるかが課題となっています。
こうした中、兵庫県などは、外国人観光客にチャーターヘリやクルーズ船を活用して県内を周遊してもらい、消費額の増加につなげようと旅行会社でツアーを企画する担当者3人を招待しました。
3人は神戸市内からチャーターヘリに乗って世界遺産の姫路城や、「天空の城」とも呼ばれる朝来市の「竹田城跡」を見学し淡路島に向かいました。
県内には4日間滞在する予定で、チャーターヘリで加西市に移動し、山田錦の生産現場を見学するなど各地をめぐり、実際のツアーの企画につなげることにしています。
旅行会社の担当者は、「高級志向で観光する時間が限られるインバウンドにとってはチャーターヘリでの移動は気楽に観光できるメリットがある。人気が出ると思う」と話していました。
県の外郭団体、「ひょうご観光本部」の安東明美 次長は、「面積の広い兵庫県は観光で周遊するのが難しかったが、ヘリならアクセスしやすい。多くの人に訪れてもらい観光を盛り上げていきたい」と話していました。

【専門家“体験の仕掛けを”】
観光庁の調査によりますと、新型コロナの感染拡大前の2019年に大阪府を訪れた外国人観光客は1152万人余りで、1人あたりの消費単価は7万3000円でした。
一方、関西の他の府県の1人あたりの消費単価は、大阪よりおおむね3万円から4万円少なく、大阪に次いで外国人観光客が多い京都府でも3万4000円と半額以下にとどまっています。
これについて、観光マーケティングが専門の近畿大学経営学部の高橋一夫 教授は「大阪には関西空港があるため、旅の最終目的地になるケースが多く、土産物の購入などで使う金額が高くなる傾向にある。外国人観光客は、旅先での体験にお金をかけたいと考えているというアンケート結果もあり、消費を他の府県にも広げるにはさまざまな体験ができる仕掛けが必要だ。兵庫県のチャーターヘリの活用はこうした仕掛けの一つと言える」と評価しました。
そのうえで、今後、必要な取り組みについて、「外国人観光客は日本の文化に加えて、桜や雪景色といった四季折々の景観に関心が高く、ニーズにあったものを関西全体で売り込んでいく必要がある」と指摘しています。
さらに、今後の観光需要について、「今回の水際対策の緩和によって、観光客はコロナ前と同じ程度まで回復する可能性がある。一方で、問題なのは観光以外の出張などビジネスの需要が戻らないことだ。オンラインでのミーティングに置き換わるなどしていて、今後も回復は難しく、この部分をどのように埋めていくか対策や支援のあり方を考えていかなければならない」と話していました。