大阪市 同性カップルの“子ども含め家族と認定”の新制度

大阪市は同性のカップルなどについて、結婚に相当する関係だと証明する制度を導入していますが、これを拡充して、一緒に暮らす子どもなどを含めた家族として認定し、行政サービスの一部を利用できるようにする制度を新たに導入することになりました。

法律上は結婚できない同性のカップルなどを対象に、大阪市は4年前(2018年)から結婚に相当する関係だと証明する「パートナーシップ宣誓証明制度」を導入しています。
27日までに427組が制度を利用していますが、中には子どもを育てているカップルもいて子どもも含めて家族として認めてほしいという声が寄せられてきたということです。
このため大阪市は現在の制度を、来月(8月)から「ファミリーシップ制度」として拡充し、同性カップルなどと一緒に暮らしている子どもなどを含めた家族関係も認めることになりました。
これまでの制度と同じく、相続や税金の控除など法律上の効力はありませんが、市営住宅での同居など一部の行政サービスを受けられます。
▼カップルのどちらかが大阪市民であれば利用できるほか、▼パートナーが亡くなっても残された人が希望すれば引き続き関係を維持でき、▼子どもが成人を迎えたときにファミリーシップの関係を維持するかどうかを、子どもみずからが選択できるということです。
大阪市の西原昇 市民局長は、「パートナーシップ制度に登録した人たちの意見を聞くなかで、『病院に行っても自分の子どもとして対応してもらえなかった』とか『もう少し深めた制度にしてほしい』といった声が上がっていたため、今回の制度に向けて準備を進めてきた」と話しています。
大阪市の松井市長は28日の会見で、「この制度を推進することで、性的マイノリティーの方に対する社会的な理解が深まることを期待している」としたうえで、国に対しては、「法的な壁があって認められないものがあるならば法律改正は必要なことだと思っている」と話していました。

【当事者家族は】。
新たな制度について、当事者からは歓迎の声が上がっている一方で、今後も不安は残り続けるという声も聞かれます。
大阪市内に住む30代と40代の女性どうしのカップルは、9歳の女の子を育てています。
2人はおよそ15年前から同居していて、このうち40代の女性が9年前に女の子を出産しました。
戸籍上はこの女性だけが子どもの親で、ともに子育てをしている30代の女性との親子関係は法的には認められていません。
新たな制度では子どもを含めた3人が家族として認められることになります。
カップルの女性2人は、「自治体に認めてもらえることで、公的に認められた関係として扱ってもらえるという自信や、家族のことを肯定できる気持ちにつながると思う。私たちのような家族にとっても、自分がLGBTかもしれないと気付き始めた人たちにとっても、応援してくれているんだという大きな勇気になる」と話していました。
一方で、法律上の効力がないことについて、「制度の登録をしていても病気や事故など急な事態に陥ったときに、関係性を認識してもらえなかったと聞くこともあり、不安は残る。相続や控除などは制度があっても変わらないので解決したというわけではない。国が踏み込んだ取り組みをしてほしい」と語っていました。
そのうえで、「さまざまな家族の形が認知されていくことで、お母さんが2人という家族でも特別なことではない社会になってほしい」と話していました。

【専門家“一歩にすぎず”】。
新たな制度について、性的マイノリティーをめぐる問題に詳しい早稲田大学法学学術院の棚村政行 教授は、「カップルという横の関係を認めるだけでなく、子どもも認めるというのは、親子という縦の関係に、保護や証明ができるという意味があり、大阪市という大都市が取り組んでいくことは他の自治体にも大きな影響がある」と話しています。
また、子どもが成人を迎えたあと、関係の維持や解消などを自由に選択できる今回の制度のしくみについては、「子どもの側も選べるというのは非常に進歩的だ。子の自己決定権を尊重できている」と評価しています。
しかし、一方で、「行政に認めてもらえることに最初は喜ぶ当事者が多いが、それほど大きいメリットがないことにその後、気付いていく。相続や年金などさまざまな面で家族として扱ってほしいという声が根強く聞かれる。国は法的な関係を認める制度を議論し、検討していく必要がある」と指摘していました。
そのうえで「制度は第一歩にすぎない。社会による理解の増進と、差別の解消、法的権利の付与の3つを同時に進めていかなければ性的マイノリティーの人たちが本当に自分らしく生きられる社会にはならず、多様性を認める社会にもならない」と話していました。

【制度の広がり】。
子どもも含めて家族関係を認める「ファミリーシップ制度」は、去年(2021年)1月に全国で初めて兵庫県明石市が導入し、その後、各地で広がっています。
渋谷区とNPOの共同調査によりますと、ことしの6月末までに全国で24の自治体がこの制度を導入しています。
このほか、同性カップルなどを結婚に相当する関係として認める「パートナーシップ制度」の中で事実上ファミリーシップ制度にあたる内容を導入している自治体もあるということです。