安倍元首相銃撃事件 ドクターヘリでの治療 医師が初めて語る

安倍元総理大臣が奈良市で演説中に銃で撃たれて死亡した事件で、ドクターヘリに乗り、搬送と治療にあたった医師がNHKの取材に応じ、搬送中の機内で銃弾で受けた傷の位置を特定したことなど、詳しい治療の経過を明らかにしました。

今月8日、奈良市で演説中に銃で撃たれた安倍元総理大臣は、ドクターヘリで現場から20キロ余り離れた奈良県立医科大学附属病院に搬送されました。
このドクターヘリに乗り、搬送と治療にあたった奈良県大淀町にある南奈良総合医療センターの植山徹医師がNHKの取材に応じ、当時の詳しい経過を明らかしました。
植山医師は事件の当日、奈良県のドクターヘリの基地がある南奈良総合医療センターで当番として待機していて、事件の発生からおよそ10分後の午前11時40分ごろ、消防から出動要請を受けたということです。
最初の情報は「高齢男性が銃撃を受け心肺停止」という内容で、ヘリに乗り込もうと慌ただしく移動している際に飛び交っていた情報から、けがをしたのは元総理大臣だと知ったと説明しました。
着陸地点に指定されたのは、事件現場からおよそ1キロ東にある奈良時代の都の跡・平城宮跡です。
着陸した5分後の午前11時57分、元総理大臣を乗せた救急車も到着したということです。
初めて元総理大臣の状況を確認したときのことについて、植山医師は「第一印象は救急隊からの情報どおり完全な心肺停止の状態で、まったく意識がなく、脈もなかった。点滴を行うために、静脈に針を刺そうとしたが、血圧が低すぎて針をうまく刺せなかったため、骨髄内に輸液する方法をとった」と振り返りました。
元総理大臣を乗せたヘリは午後0時10分すぎに平城宮跡を離陸しましたが、機内での対応で予想以上に手間取ったのは、銃で撃たれた傷の位置を特定する作業でした。
離陸前に引き継がれた情報では後ろから撃たれたということでしたが、背中側からの出血はなく、傷口も見つかりませんでした。
植山医師らは、ごう音が鳴り響き、揺れる機体の中で、人工呼吸や胸骨の圧迫による心肺蘇生の処置を行うとともに全身を丁寧に観察し、銃創が首の前側に2か所、左肩に1か所あることを特定したといいます。
このときの状況について植山医師は、「当時は、銃弾がいくつ当たったのか、どのような銃で撃たれたのかといった情報は何もなかった。機内で全身を観察して病院に着く2分ほど前に傷の位置を特定し、病院の医療チームに伝えることができた。病院での治療に向けて、けが人の状態をできるだけ正確に把握して伝えることが一番重要だと思っていた」と振り返りました。
ヘリが病院に到着したのは、事件発生から50分後の午後0時20分ごろで、到着後、大学病院の医療チームに引き継がれ、緊急手術が行われましたが、午後5時3分に死亡が確認されました。
今回の対応を振り返って植山医師は、「残念な結果となったが、関わった大勢の人たちを含め、最善を尽くしたと思っている。医療としてできるかぎりのことを尽くしても手の施しようがない事態が起こり、私は本当に役に立っているのだろうかと思うときが今もある。搬送や治療の課題がなかったか、今後、改めて話し合い、対応を見つめ直したい」と話していました。