自主的に時短セブン‐イレブン元オーナーに明け渡し命じる判決
「セブン‐イレブン」の大阪・東大阪市にあった店舗の元オーナーが24時間営業を自発的にやめたあと、本部から契約を解除されたことについて争われた裁判で、大阪地方裁判所は「契約解除は時短営業を拒絶する目的とはいえず、優越的地位の乱用には当たらない」として、本部側の訴えを認め、元オーナーに店舗を明け渡すよう命じました。
本部の「セブン‐イレブン・ジャパン」とフランチャイズ契約を結んでいた東大阪市の店舗の元オーナー、松本実敏さんは3年前、人手不足などを理由に24時間営業を自発的にやめたあと、本部から、接客態度を理由に契約を解除され店舗の明け渡しなどを求める訴えを起こされました。
これに対して、松本さんも「時短営業を始めたことへの意趣返しで不当だ」と主張し、訴えを起こしていました。
23日の判決で大阪地裁の横田昌紀 裁判長は「利用客に対する乱暴な言動など松本さんの店舗への苦情は他の店舗よりも群を抜いて多く、本部のブランドイメージを傷つけた」と指摘し、契約の解除は有効だと判断しました。
そのうえで、「契約解除は接客対応を理由とするもので、時短営業を拒絶する目的とはいえず、優越的地位の乱用には当たらない」として、松本さんに対して店舗を明け渡すとともに1450万円余りを支払うよう命じました。
判決が言い渡された後、大阪地方裁判所の前では、元オーナー側の弁護士が「不当判決」と書いた紙を掲げました。
元オーナーの松本実敏さんは「あまりに裁判の内容に触れていない判決だったので、びっくりしました。まっとうに事実を伝えても通らないこともあるとわかり、本気で闘う気になりました。控訴して、決着がつくまで闘い抜くつもりです」と話しました。
【元オーナー“控訴する”】。
判決のあと、元オーナーの松本実敏さんは会見を行い、「今回の判決でほかのオーナーたちがもっと苦しむ可能性があります。控訴をして闘いたいと思います」と話しました。
そのうえで、最近は、コンビニの本部側が希望する加盟店には深夜の休業を認めるようになったことについては、「少しずつ変わっているとは思うが、今回の判決は不当判決なので、時短営業をしているオーナーが圧力を受けなくなるまで頑張る必要があると思っています」と話していました。
松本さん側は控訴する方針で、判決が確定するまでは店舗の明け渡しは行われない見通しです。
【セブン‐イレブン・ジャパンは】。
判決について、「セブン‐イレブン・ジャパン」は「当社の主張が全面的に認められたもので妥当な内容と存じます。引き続き、地域のお客様にご愛顧いただけるよう、より一層努力してまいります」というコメントを出しました。
【専門家“訴え自体評価”】。
判決について、小売業界に詳しい日本経済大学の西村尚純 教授は「加盟店の立場についてもう少し言及してもよかったと思う」と話しました。
西村教授は、3年前(平成31年)、東大阪市のコンビニの元オーナーが営業時間を短縮した当時の状況について、「コンビニの店舗数が増加して、競争が激しくなり、店舗の売り上げも伸び悩んでいた。人手不足の中、24時間営業で加盟店のオーナーがヘトヘトになっている状況だった。東大阪の店舗の時短をきっかけに、フランチャイズ契約の原点である、本部と加盟店の共存共栄ということに業界全体が立ち戻る動きになった」と指摘しています。
判決については、「元オーナーの敗訴となったが、裁判などをきっかけに、本部が加盟店より強いという関係から脱却しつつあり、訴えを起こしたこと自体が評価できる」と話していました。
【時短営業めぐる経緯】。
東大阪市の店舗の元オーナーの松本実敏さんと、「セブン‐イレブン」の本部側が争うきっかけとなったのは、24時間営業のあり方でした。
松本さんは、「セブン‐イレブン」の本部とフランチャイズ契約を結んで「東大阪南上小阪店」を10年前(平成24年)から経営していました。
しかし、コンビニ業界の深刻な人手不足で深夜帯に働けるアルバイトが確保できず、みずから朝から夜まで休み無く働く日が多くなりました。
このため、3年前(平成31年)、24時間営業を自発的にやめ、本部の合意を得ないまま営業時間の短縮に踏み切りましたが、その10か月後、本部から加盟店契約を解除され、営業ができなくなりました。
このとき、本部は、契約解除の理由は、「松本さんの接客態度について利用客からの苦情が多く、ブランドイメージを傷つけられた」こととしました。
そして、2年前(令和2年)、本部は、松本さんに対して店舗の明け渡しなどを求める訴えを大阪地方裁判所に起こしました。
これに対して、松本さんは「契約解除は、24時間営業をやめて時短営業をしたことへの意趣返しであり不当だ」と反論し、逆に、本部に、オーナーとしての地位の確認を求める訴えを起こしました。
主張が対立したまま裁判が続く中、去年(令和3年)5月、本部は、店舗のすぐ隣に新たに別の仮店舗を設置して直営店として営業を始め、コンビニの2つの店舗が隣合わせで並ぶ異例の状態が続いています。