渋沢栄一が詠んだ漢詩見つかる

NHKの大河ドラマ、「青天を衝け」の主人公で、実業家の渋沢栄一が詠んだ直筆と見られる漢詩が見つかったことが京都の北野天満宮への取材でわかりました。
梅の香りのように、変わらない思いを持ち続けることの大切さを伝えようとする晩年の渋沢の考え方を示す資料と見られています。

渋沢栄一は、実業家として数多くの企業の設立や育成に関わり、「近代日本経済の父」とも呼ばれています。
京都の北野天満宮によりますと、書庫で調査していた神職が漢詩をとじた本が保存されているのを見つけ、渋沢の資料を数多く保存している東京・北区の「渋沢史料館」に問い合わせたところ、筆跡や印などから本人の直筆とみられることがわかったということです。
天満宮によりますと漢詩は昭和3年の大祭で詠まれたもので、「梅の香りだけは世俗とは関係なく春の風によって昔と変わらない香りを送ってくる」という内容です。
渋沢史料館の井上潤館長は「漢詩は、自己主張をするだけではなく、心の中で思いを持ち続ければ、いつかは周囲の人たちにも伝えられるという意味で、晩年の渋沢の考え方がよくわかる」と話しています。
北野天満宮は、見つかった漢詩をことし秋に一般公開することにしています。

【見つかった漢詩】。
今回見つかった渋沢栄一のものとみられる漢詩は、梅の香りの広がりをテーマに書かれた一句七言で四句からなる七言絶句です。
漢詩では、大正天皇をしのぶ文言のあとに、「春とはいえまだ寒く、庭の木々が夕日を遮っている。ただうれしいことに野に咲く梅だけは世俗とは関係なく、春風が吹いて、昔と変わらない香りを送ってくる」と詠んでいます。
北野天満宮がまつる菅原道真が詠んだ「東風(こち)吹かば にほひをこせよ 梅の花 主(あるじ)なしとて春を忘るな」という、有名な和歌の「東風」という表現を引用しています。
また、道真の漢詩に詠まれた、みかどから贈られた御衣に残るお香の匂い「餘香(よこう)」を拝するという表現にちなんで、「餘光(よこう)」を拝すると表現するなど、道真を意識した内容となっています。

<漢詩全文>。
「園陵何處拝餘光
 庭樹春寒鎖夕陽
 只喜野梅無世態
 東風遍送舊時香
 青渕 澁澤栄一」