呉の製鉄所跡地に「複合防衛拠点」 防衛省が説明

去年9月にすべての設備を停止した日本製鉄の呉市にある製鉄所について、4日午後、防衛省の関係者が呉市役所や広島県庁を訪れ、跡地に防衛省の「複合防衛拠点」を整備したいと説明していたことがわかりました。

日本製鉄の瀬戸内製鉄所呉地区は去年9月、すべての設備を停止して解体が本格化していて、その跡地およそ130ヘクタールの活用方法が課題となっています。
呉市や広島県によりますと、4日午後、防衛省の関係者が呉市役所や県庁を訪れ、製鉄所の跡地に「多機能な複合防衛拠点」を新たに整備したいという説明がありました。
その上で、防衛省から日本製鉄と呉市、それに広島県の4者の協議を進めたいと申し入れがあったということです。
跡地をめぐっては広島県と呉市が合同で一般企業も含めた土地活用の可能性を調査することにしていて、その調査の費用が新年度の予算案に盛り込まれています。
呉市の新原芳明市長は、「今後、防衛省から丁寧に話を伺いたいと考えている。県や市にとって必要な情報は共有するよう要請するとともに呉市からは防衛省や日本製鉄に必要な意見を伝えていきたい」とコメントしています。
広島県の湯崎知事は「日鉄跡地利活用策としての選択肢の1つであり、今後、防衛省から丁寧に話をうかがいたいと考えている。地域経済の活性化につながり、地域住民にとって未来に希望が持てる日鉄跡地の利活用について検討したい」とコメントしています。

【多機能な複合防衛拠点とは】
防衛省によりますと、呉市の製鉄所の跡地で整備を検討している「多機能な複合防衛拠点」には、3つの機能を備えたいとしています。
1つ目は、民間企業の誘致を含む装備品などの維持整備や製造基盤、2つ目はヘリポートや物資の集積場などの防災拠点と艦艇の配備や訓練場など自衛隊の活動基盤、3つ目が岸壁などを活用した港湾機能だということです。
具体的にはこれから検討を進めるとしていますが、弾薬庫の整備も考えられるということです。
複合防衛拠点を整備する理由については、「防衛力の抜本的強化のため、装備品の維持整備や訓練、補給などを一元的に機能させて部隊運用の持続性を高める必要があるため」としています。
また、呉市に整備する理由については、海上自衛隊呉基地があり、陸上自衛隊第13旅団の主力部隊が所属する海田市駐屯地にも近いことや、太平洋や日本海、南西方面へのアクセスがよく、地理的に重要な場所のためなどとしています。
防衛省は計画案を策定してできるだけ早く関係自治体に説明したいとしています。

【呉市長が記者団に説明】
防衛省の訪問を受けて呉市の新原市長は記者団の取材に対し、「防衛省からは3つの機能を整備したいと聞いている。装備品などの維持整備・製造基盤、民間の誘致と、防災拠点、ヘリポートや物資の集積場など、部隊の活動基盤、艦艇の配備や訓練場など、岸壁を活用した港湾機能と説明を受けた」と述べました。
その上で、「日本製鉄との間で瀬戸内製鉄所呉地区の早期の一括購入に向けた交渉を進めているという話を聞いている。呉市民にとって非常に大切なことなので常に気を引き締めて話を聞き、議論をしていかないといけない」と話していました。

【呉市の市民の反応】
防衛省が日本製鉄の呉市にある製鉄所の跡地に「複合防衛拠点」を整備したいと呉市などに説明したことについて、JR呉駅前では、賛否の声が聞かれました。
30代の女性は「何か跡地が活用されればいいし呉がいまは寂しいので地域活性化につながればいい」と話していました。
また、40代の男性は「仕事も増えていろんな雇用が生まれると思うので、子どもの将来の面では賛成だ」と話していました。
一方で30代の男性は、「防衛拠点で地域活性化にどのようにつながるのかわからない」と話していました。
また、60代の女性は「防衛拠点となると狙われるのではないか。騒音で授業が聞こえないなどいろんな問題が起きるのではないかと思う。自分は市民なので安全なのが第一だと思う」と話していました。

【日本製鉄がコメント】
防衛省が新しい複合防衛拠点を整備したい考えを示したことについて日本製鉄は、事前に防衛省から説明があったとしています。
その上で、「4日に広島県と呉市に説明があるということは把握していた。跡地の活用に責任をもって対応していくというスタンスに変わりはなく、説明内容を踏まえて県と市と対応していきたい」とコメントしました。