父親の性的虐待認定も「提訴遅い」と訴え退ける 広島高裁

子どものころに実の父親から繰り返し性的虐待を受けて後遺症に苦しむ広島市の40代の女性が、3年前に父親に損害賠償を求めた裁判の2審の判決で、広島高等裁判所は1審に続いて性的虐待を認定した一方で「提訴が遅い」として訴えを退けました。

広島市の40代の女性は、保育園のころから中学2年になるまでの間に実の父親から性的虐待を繰り返され、当時の記憶を思い出す「フラッシュバック」などの後遺症に苦しんでいるとして、3年前に父親に対し損害賠償を求めて訴えを起こしました。
1審の広島地方裁判所は去年10月、父親による性的虐待の事実や女性の被害を認定した一方で、10代後半には精神的苦痛を受けていたとして、遅くとも20歳になったときから20年が経過した提訴前の時点で、賠償請求できる権利が消滅したと判断して訴えを退け女性が控訴していました。
22日の2審の判決で広島高等裁判所の脇由紀裁判長は、「監護養育するべき父親によって行われた極めて悪質かつ卑劣な行為で、女性の精神的苦痛は察するにあまりある」と指摘した一方で、争点となった提訴の時期については、「20歳になった時点以降で訴えを起こすことは可能であったといえ、損害賠償を求める権利は消滅したと言わざるを得ない」として、1審に続いて提訴が遅かったことを理由に訴えを退けました。

判決を受けて、原告の女性と弁護団が広島市内で会見を開きました。
この中で、d原告の女性は、「幼いころから性被害を受けたことで、苦しい気持ちは物心がついてからずっとあり、被害を受けたからだとか症状が出ているからだということさえ分かりませんでした。後遺症だとさえ分かっていないのに、訴えようとは考えられず、裁判所はそこを全然分かってくれていないと思います。黙っていたら何も変わらないし、上告せずに諦めるほど苦しいことはありません」と述べて、上告する考えを明らかにしました。
また、女性の代理人を務めた寺西環江弁護士は、「幼少期に性被害を受けた人は、体の不調を抱えていてもそれが『普通』になってしまい相談に行く必要性も認識できない傾向にあるのに、裁判所はそうした被害者の心理状態がわかっていない」などと批判しました。