大規模買収事件で市議・元市議 計4人に有罪判決 広島地裁

4年前の参議院選挙をめぐる大規模買収事件で、河井克行元法務大臣から現金を受け取った罪に問われた、広島市議会の2人の現職議員と2人の元議員の合わせて4人に、広島地方裁判所はいずれも有罪の判決を言い渡しました。
4人のうち2人の判決で、裁判所は検察の捜査について、「検察官が不起訴を前提として取り調べを行い、市議や元市議がそれを期待して意に沿う供述をするなどしたことは否定できない」と指摘しました。

広島市議会議員の木山徳和被告、三宅正明被告、元広島市議会議員の伊藤昭善被告、谷口修被告は、いずれも4年前の参議院選挙をめぐる大規模買収事件で、河井克行元法務大臣から現金を受け取ったとして公職選挙法違反の罪に問われました。
4人はこれまでの裁判で、「選挙運動への報酬だという認識はなかった」などとして無罪を主張していました。
31日の判決で広島地方裁判所の日野浩一郎裁判長は木山市議について、「選挙の公示が3か月後に迫る時期に元大臣が現金を渡してきた理由について、市議が買収の趣旨を含むと認識しないことはおよそ考えられない」として、罰金30万円と、現金30万円の没収の判決を言い渡しました。
また、後藤有己裁判長は三宅市議について、「市議は2回にわたって現金を受け取っているが、2回目の受領の際に元大臣に対し『そこまでしてもらわなくても支援する』と伝えたことは、現金が支援の報酬を含むと感じ取っていたからにほかならない」と指摘したうえで、罰金30万円、追徴金50万円の判決を言い渡しました。
この判決が確定した場合、現職の市議は失職します。
このほか、伊藤元市議については罰金30万円、追徴金50万円の判決が、谷口元市議については罰金40万円、追徴金50万円の判決がそれぞれ言い渡されました。
また、4人の市議や元市議は、東京地検特捜部の検事による取り調べなどについて、「元大臣らを起訴するために検察官が市議や元市議に不起訴を示唆した違法な司法取引を持ちかけ、うその自白調書などをつくっていて違法性は重大だ」として、裁判を打ち切るべきだなどと主張していました。
これについて、後藤有己裁判長は三宅市議と伊藤元市議の判決で、「証拠によると、検察官は不起訴を前提として市議を取り調べ、市議は不起訴になることを期待して検察官の意に沿う供述をしたうえ、元大臣の裁判でも意に沿う証言をしたことは否定できない」と指摘したうえで、裁判を打ち切るほどの違法性はないと結論づけました。
また、日野浩一郎裁判長は、木山市議の判決で、「市議の供述によれば、取り調べた検察官に不起訴を期待させる言動があったにとどまり、不起訴にする約束はなかったと認められる」と指摘したほか、谷口元市議の判決では「元市議の供述によっても、不起訴の約束まではなかったと認められる」などと指摘しました。
【広島地検コメント】
4年前の参議院選挙をめぐる大規模買収事件で31日までに、在宅起訴されたり略式命令を不服として正式な裁判を申し立てたりした12人全員に1審判決が言い渡されたことについて、広島地検は「検察官の主張がおおむね認められたものと理解している」とコメントしています。
そのうえで、一部の判決の中で東京地検特捜部の検事による取り調べなどに言及があったことについては、「最高検察庁において適切に対応するものと承知しており、コメントは差し控える」としています。
【市議・元市議などが会見】
判決のあと、4人の市議や元市議と弁護士が広島市内で会見を開きました。
このなかで、伊藤昭善元市議は、「こちらの主張を聞き入れず、検察がストーリーに沿って誘導したうその調書をつなぎ合わせた判決だと受け止めた。司法にしっかりして欲しい思いだ」と述べました。
また、4人の弁護を担当した久保豊年弁護士は「無罪の推定に立って事実を精査しておらず、検察官が述べた事実を並べているだけで極めてずさんな判決だ。不起訴を前提とした取り調べがあったことは判決で認定しているものの、違法性まで認めていない点は不満だ。こうした取り調べにブレーキをかけるのが裁判所の役割なのに、免罪符を与えていてとんでもない判決だと思う」と述べました。
4人の市議や元市議が控訴するかについては、いずれも今後検討するということです。