JR芸備線一部区間 再構築協議会の設置を国に要請 全国初

JR西日本は、利用客の落ち込みが続く広島県と岡山県を結ぶ芸備線の一部区間について、10月に施行された法律に基づき、路線の存続やバスへの転換などを議論する協議会を国に設置するよう要請しました。
法律に基づき国に要請するのは全国で初めてです。

全国の地方鉄道の多くの路線で赤字が続いていることを受けて、10月1日、自治体や鉄道事業者からの要請で交通手段の再構築を議論する協議会を国が設置できることを盛り込んだ改正法が施行されました。
これを受けて、JR西日本は芸備線の一部の区間について協議会の設置を、3日午前、国に要請しました。
この法律に基づき、協議会の設置を国に要請するのは全国で初めてです。
対象となる区間は広島県庄原市の備後庄原駅と岡山県新見市の備中神代駅の間の68.5キロです。
要請を受けて、国は沿線の自治体に意見を聞いた上で、協議会を設置する必要があるか判断することになります。
再構築協議会では、複数の自治体の意見を集約したうえで、地方鉄道の利用促進や、バス転換に向けた実証実験を行うなど、地域の実情に沿った形で公共交通のあり方が検討されることになります。

【JR西日本は】
芸備線の一部区間について協議会の設置を国に要請したことを受けて、JR西日本広島支社の奥井明彦副支社長は、報道陣の取材に対して、「利用者数の減少傾向に歯止めがかからず、大量輸送という鉄道の特性を生かし切れていない線区だったが、関係自治体とはなかなか再構築の議論を進めることができなかった。廃線や存続といった前提を置かずに議論を行い、地域の人に利用してもらいやすい最適な交通体系を構築していきたい」と述べました。

【広島県 湯崎知事は】
JR西日本が再構築協議会を国に設置するよう要請したことについて、広島県の湯崎知事は、記者団に対し「国から意見聴取をされた場合、協議会の趣旨や検討すべき内容をふまえ、沿線市と協議して対応を検討したい。予算規模が小さい沿線市が公共交通の維持のために補助金を将来にわたって出し続けることは重い負担になる。仮にバスなどへの転換を行う場合、持続的な運行と利便性の確保のため、JR側の確実な協力を国に求めていきたい」と述べました。

【芸備線のこの区間とは】
芸備線の備後庄原駅と備中神代駅の間の区間では、1日に平均何人を運んだかを示す「輸送密度」が2019年度で48人と、旧国鉄が分割・民営化された1987年と比べると90%以上も減少しています。
また、2019年度までの3年間の平均収支は7億円あまりの赤字となっています。

【再構築協議会とは】
協議会に参加するのは、JR西日本や自治体のほか、地元企業や学校、観光事業者など、地域の実情をふまえて選びます。
路線を廃止するのか、存続させるのかを協議した上で、廃線にする場合、路線バスのほか、線路の跡地を使ってバスを走らせるBRTなど別の交通手段への転換を検討します。
一方、鉄道を存続させる場合も、JR西日本任せにするのではなく、既存の路線の活性化対策や、線路や駅舎など施設の管理を自治体などが事業者に代わって担ういわゆる「上下分離方式」など今後の経営維持に向けた方策を議論します。
国は、早ければ年内にも協議会を設けるかどうか判断し、設置した場合は3年以内をめどに結論を出したいとしています。

【沿線では】
要請の対象区間となった備後庄原駅は、広島県庄原市の中心部にあり、付近には住宅が建ち並んでいます。
通学で芸備線を使う高校生は「芸備線がなくなるとバスでの通学になり、お金もかかると思うので困ります。厳しいのはわかっていますが、できればこの状態で続いてほしいです」と話していました。
仕事で県外に出ていて、数年前に庄原市に戻ってきたという40代の男性は「30年くらい前には通学のほか、岡山県新見市に出るときに使っていました。数年前に帰ってきて利用客がほとんどいないことから、廃線が近いのかなと思っていました」と話していました。
備後庄原駅の近くに住む70代の男性は、「芸備線が通っていなかったら踏切の音もしないし、さみしくなると思う。自分たちのためというより町としてさみしいです」と話していました。