寒いのに校則 “防寒上着認めず” 広島市立の中学校
この冬一番の強い寒気が流れ込んだ1月下旬、広島市の公立中学校で、ジャンパーを着て登校した生徒が、「校則」に基づいて着てこないよう教員から指導を受けました。
生徒はその後、発熱したということで、専門家は、子どもの健康を守ることを上回るルールはないとして「校則」を見直すべきだと指摘しています。
ジャンパーを着てこないよう指導を受けたのは、広島市立の中学校に通う2年生の男子生徒です。
保護者や学校によりますと、広島市内でも雪が強まった1月25日の朝、生徒がジャンパーを着て登校したところ、校門で教員に呼び止められて校則にあたる「生徒指導規程」に基づきジャンパーを着てこないよう指導を受けたということです。
生徒はジャンパーを脱ぎ、下校する際も着なかったということです。
25日はこの冬一番の強い寒気が流れ込み、気象台の観測では、広島市の最低気温はマイナス4.2度、最高気温は3.1度でした。
生徒は翌26日の夕方になって発熱していることがわかり、その後、回復したものの、2月1日まで欠席したということです。
この学校の生徒指導規程では、寒い時に認めているものとしてセーターやマフラー、手袋などは記載されていますが、ジャンパーやコートの記載はなく、学校によりますと、認めていないということです。
NHKの取材に対し、学校側は「決められたルールは、子どもの安全や安心のために守る必要がある。ただ、時代や状況に応じて見直されていくものだ」とした上で、「現時点では、病気などの個別な理由を除き、認めている防寒着で寒さに対応できると考えている」とコメントしています。
一方、生徒の保護者は「寒い時にジャンパーなどを着るという大人でも子どもでも当たり前のことが認められなかった。ルールがおかしいと認識し、改めてほしい」と話しています。
NHKが県内の複数の学校に問い合わせたところ、同じようにコートやジャンパーの着用を認めていない学校がありましたが、厳しい冷え込みとなった先月下旬は、一時的に認めたという学校もありました。
校則などに詳しい名古屋大学大学院の内田良教授は「寒い時に多く着ることは健康や安全のために必要なことだが、それをルールが上回っている状況になっている。学校では『校則だから守りなさい』と言われるが、何のためにそのルールがあるのかという説明が抜けていることがある。寒さ、暑さの感じ方は人それぞれで、コートを『着る・着ない』の権限を学校が握るのではなく、生徒の判断に任せるべきだ」と指摘しています。
その上で、「校則を全面的にゼロベースで見直し、必要なものがあれば付け足す形で、今の時代に応じた校則をつくっていかなければいけない」としています。
一方で、内田教授は「生徒の身なりなどについて外部からクレームや要望を受けることもあり、校則が学校の中だけで成り立っていない場合がある」と述べ、一般的に、学校単独での判断が難しい状況もあるとして、地域全体が理解を深めていく必要があるとしています。