広島 西区 園児死亡事故 検証報告書公表

ことし4月に広島市の保育園から5歳の男の子の行方が分からなくなりその後、死亡した事故の検証報告書が26日公表されました。

報告書では施設の点検が適切でなく園児が外に出ることができたと考えられるところが複数あったなどと明らかになった課題や問題点について指摘しています。
報告書は、26日午前、広島市役所で、とりまとめにあたった保育の専門家などによる部会で部会長を務める山田浩之広島大学大学院教授から市こども未来局の森川伸江局長に手渡されました。
報告書では園児の視点に立った施設の点検を行っておらず外に出ることができたと考えられるところが園内に複数あったほか3歳以上の園児24人を保育士2人で見ていたものの障害児のために加配された保育士が対象の児童に集中できるようさらに人数が必要だったなどと指摘しています。
その上で、報告書では市内の保育園などに対し、園庭と園外を生け垣だけで隔てられている園はフェンスに改修することやフェンスは園児が容易に乗り越えられない高さ150センチ程度を目安にすることを求めています。
さらに園のまわりに赤外線センサーを設置したり園児にICタグを持たせたりして見守りに情報通信技術を活用することも求めています。
報告書を提出したあと山田教授は、「構造的、組織的な課題が多く見つかった。どの園でも起こりうる事案なので再発防止を急いでほしい」と話していました。
一方、受け取った森川局長は「施設の管理や職員の連携のあり方などへの提言を重く受け止めた。年明けにも市としての再発防止策をまとめて公表したい」と述べました。
広島市では事故のあと再発防止の対応にあたりこの保育園ではきょうまでに高さが150センチを超えるフェンスが設置されたほか高さが足りない正門や裏門などの改修が行われました。
また市内の市立保育園では園児がすき間から抜け出さないような措置を講じています。

松井市長は「報告書の提言を真摯に受け止め、園児が安心・安全に過ごすことができる体制の確保などに鋭意取り組む」というコメントを出しました。

報告書の提出を受けて亡くなった保育園児の両親が広島市を通じてコメントを発表しました。
この中で、両親は「息子が亡くなって8か月たった今でも私たち家族はつらい気持ちでいます。息子は発達障害で言葉の意味をほとんど理解できない子でした。それでも息子は『バイバイ』や『おとうさん』『おかあさん』と言葉が言えるようになりちょっとずつ成長しててこれからももっと言葉を覚えて会話もできるようになっていくのかなと楽しみにしていたやさきにこんな事になってしまった。本当つらく悲しいです」としています。
その上で「息子は笑顔がすてきでみんなに愛される子でした。本当にかわいかった。息子に会いたい抱きしめたい川の水がいっぱい入ってきてつらかったね苦しかったね。助けてあげられなくてごめんね。私たち家族みんなあなたの事をずっと愛しているよ」といまの心境を明らかにしています。