博多女性殺害事件 被告に懲役20年の判決 福岡地裁

去年1月、JR博多駅近くの路上で元交際相手の女性を殺害したなどとしてストーカー規制法違反や殺人などの罪に問われた被告に福岡地方裁判所は「被害者の感じた恐怖や娘を残していく無念さは大きく短絡的かつ身勝手な犯行に厳しい非難は免れない」などとして懲役20年の判決を言い渡しました。
住所不定、無職の寺内進被告(32)は、去年1月、JR博多駅近くの路上で、元交際相手の会社員川野美樹さん(当時38)につきまとったうえ、包丁で刺して殺害したとして殺人やストーカー規制法違反などの罪に問われました。
これまでの裁判で検察側は「一片の慈悲もない悪質な犯行だ」として懲役30年を求刑し、弁護側は「被告は待ち伏せしておらず、計画的な殺害ではない」としてストーカー規制法違反については無罪だとして、懲役17年が相当だと主張しました。
28日の判決で福岡地方裁判所の冨田敦史裁判長は「被告が待ち伏せしていたかどうかについては疑問が残るが、被害者を7分間にわたって追従した行為はつきまといと言える」と指摘し、ストーカー規制法についての被告側の無罪主張を退けました。
その上で「強固な殺意にもとづく残忍な犯行で被害者の感じた恐怖や苦痛、娘を残していく無念さは大きく遺族が厳しい処罰を望むのも当然だ。被害者には何も落ち度がなく被告の逆恨みによる事件で、短絡的かつ身勝手であり厳しい非難は免れない」などと述べた一方、複数人の生命に危害を加えた過去の事件をもとに懲役30年とした検察側の求刑は相当ではないなどとして、懲役20年の判決を言い渡しました。
寺内進被告は、白地の半袖のシャツにグレーのズボン姿で、白いマスクをつけ髪は短髪でした。
証言台に立つよう促されてじっと前を向いて判決を聞いていました。
判決が言い渡されたあと裁判長から「生涯をかけて事件に向き合い被害者に償いをしていってください」などと語りかけられると「はい」と答えていました。
判決のあと、裁判員が会見しました。
このうち久留米市の51歳の男性は寺内被告の様子について「終始マスクをしていたこともあり表情を読みづらかった。うつむき加減で暗い印象だった」と話していました。
また「よく報道された事件で無期懲役とかとても重い判決が出ると思っていたが、審理を重ねるにつれてその思いがどんどん変わり、みんなと意見があってきて、納得した判決になった。自分の行ったことをしっかり心で受け止めて更生して欲しい」と振り返りました。
また、別の男性は、寺内被告の様子について「自分のしたことに対して本当に自分が悪かったと思ってないように見えた」と話していました。
裁判のあと寺内被告の代理人の弁護士は、被告が判決について「被害者や遺族には大変申し訳ないことをした。量刑については、当然のことだと思う。服役する中で被害者の冥福を祈りつつ反省を深めたい」などと話していたことを明らかにしました。