春日市の新任教諭自殺「長時間労働・叱責放置が原因」遺族提訴

5年前、春日市の小学校の当時24歳だった新任教諭が自殺したのは学校側が長時間労働や長時間の叱責という行為を放置するなどしたのが原因だったとして遺族が春日市と福岡県に対しおよそ9000万円の賠償を求める訴えを起こしました。
訴えを起こしたのは春日市立の小学校に勤務し5年前に自殺した当時24歳の男性教諭の遺族です。
訴えによりますと男性教諭は5年前の9月、指導教諭から長時間の厳しい叱責を受け涙を流して謝罪した後に首をつって自殺しました。
男性は4月に採用されたばかりの新任教諭でスマートフォンのケースからは遺書が見つかりました。
訴えによりますと男性教諭の亡くなる前の4か月間の時間外勤務は月に平均で100時間を超え指導教諭からは高圧的ともとれる厳しい叱責・指導を繰り返し受けていたとして「精神疾患を発症し自殺に至った」としています。
遺族は男性教諭の自殺は学校側が長時間労働や指導教諭からの長時間の叱責という行為を放置するなど安全に配慮する義務を怠ったのが原因だったとして春日市と福岡県に対しおよそ9000万円の賠償を求める訴えを福岡地方裁判所に起こしました。
男性教諭の自殺は民間企業の労災にあたる「公務災害」に認定されています。
遺族はNHKの取材に対し「事実を認めて謝罪してほしい。こんな思いをする人は最後にしてほしい」と話しています。
遺族の代理人を務める前田牧弁護士は会見を開き、教員の働き方について「働いた時間ぶんの残業代が払われないので、際限のない長時間労働を強いられている。新任の教諭にも担任としてクラス運営を任せるなど重い責任を負わせている。教員になりたい方が減っていることへの一つの問題提起になるのではないか」と述べました。
また、会見では母親のコメントも読み上げました。
コメントには「子どもの頃から憧れて目標にして頑張っていました。採用された時、うれしそうで弾んだ顔して頑張ると言っていました。たった半年でのことでした。半年の間に何があったのか。誰にも相談することなく1人で悩み、中途半端に諦めなければいけなかったのか。ただ子供達と一緒に成長することなく1人で悩みそんな事がなぜ起こったのか知りたいと思います。何度か学校に伺った時ですら一切謝罪をもらっていません。本人はきっとまだまだ色々やりたいことがあったはず。それが出来なかったことが悔やまれます。今後このようなことがなくなることを願います」とつづられていました。
春日市教育委員会はNHKの取材に対し「未来ある若い教員が命を失ったことについては、今でも無念でなりません。この度の事案が発生して以来、ご遺族の方々に真摯に向き合い、できる限りの対応を尽くしてきたところですが、意を尽くせず、今に至っているものと受け止めております」などとコメントしています。
その上で、訴えについては「訴状の内容を確認して、福岡県教育委員会と協議しながら誠実に対応していきたいと考えております。具体的な内容については、訴状が届いておりませんし、裁判への影響も考えられますので、回答することは差し控えさせていただきます」としています。