諫早湾干拓開門訴訟 長崎の漁業者の訴え退ける 福岡高裁

長崎県諫早湾の干拓事業で漁業に被害が出たとして閉めきられた堤防の排水門を開けるよう長崎県の漁業者が求めた裁判で、2審の福岡高等裁判所は1審に続いて訴えを退ける判決を言い渡しました。
この裁判は、長崎県の諫早湾沿いの漁業者が、干拓事業によって湾内の漁場環境が悪化し漁獲量の減少などの被害が出たとして堤防の排水門を開けるよう求めているものです。
これまで4度にわたって訴えが起こされ、このうち第1陣は4年前漁業者側の訴えを退ける判決が確定し、28日は、漁業者20人余りが原告になっている2陣と3陣の裁判の2審が福岡高等裁判所で開かれました。
判決で福岡高等裁判所の森冨義明裁判長は、「堤防の閉めきりによって、諫早湾内の漁場環境が悪化した可能性が高い。タイラギ漁業などの漁獲量が減少し、このような状態が将来も続くことが予想される」と指摘し、堤防の閉めきりと漁業被害の関連を認めました。
一方で「干拓事業には高い公共性と公益性があることや事前の対策工事をせずに開門した場合、防災機能が損なわれ、塩害による農業被害などが予想される」などとして、1審に続いて漁業者側の訴えを退ける判決を言い渡しました。
諫早湾の干拓事業をめぐっては26年前、国が堤防を閉めきったあと漁業者が起こした裁判で、開門を命じる判決が確定した一方、農業者が起こした別の裁判では開門を禁止する判決が確定し、司法の判断がねじれた状態が続いていましたが、3月最高裁判所は、漁業者側の上告を退ける決定を出し、司法判断は「開けない」方向で事実上、統一された形となっています。
判決のあと、漁業者側の弁護団は福岡市内で会見を開きました。
原告の1人で、諫早市の平田勝仁さん(57)は堤防の閉めきりと漁業被害の因果関係が認められたことについて「当然のことだとは思いますが、感謝しています。国は諫早湾でいろいろな調査をやっていると聞いているので、今後、どのような漁業ができる可能性があるのかを尋ねたい」と話していました。
弁護団長の馬奈木昭雄弁護士は、「1審と比べると大きく前進した判決だが、現に起きている漁業被害は否定できず、これからも闘いは続く。地域を再生しようとする住民の願いは、絶対に押しとどめることはできない」と述べ、上告する方針を示しました。