久留米大学病院”医療ミス”裁判 医療事故報告も条件に和解

3年前、福岡県久留米市にある大学病院で手術を受けた後に死亡した男性の遺族が、「医療ミスがあった」として賠償を求めた裁判で、病院側が和解金の支払いに加え、医療事故として第三者機関に報告するという条件で和解が成立しました。
遺族側によりますと、こうした条件が盛り込まれるのは異例だということです。
3年前、久留米大学病院で食道がんの手術を受けた当時64歳の男性が、手術後に急性循環不全で死亡し、男性の遺族は手術後に血圧を上昇させる処置に過失があったとして病院に賠償を求める訴えを起こしました。
福岡地方裁判所は「過失と死亡との間に因果関係がある」として和解勧告し、病院側が和解金4600万円あまりを支払うことできょう、和解が成立しました。
遺族側の弁護士によりますと、和解には医療事故調査制度に基づき病院側が医療事故として第三者機関に報告することが盛り込まれていて、こうした条件は異例だということです。
調査制度は全国の医療事故を分析し再発防止につなげるものですが、報告するかどうかは医療機関の判断に委ねられていて、必要な報告や調査が行われていないという指摘もあります。
男性の妻は「病院の姿勢や説明の内容に納得できず裁判となりましたが、二度と同じことが起きることがないよう、再発防止にいかされることを強く希望します」とコメントしています。
和解について、久留米大学病院は「本件を真摯に受け止め、重大なる教訓として体制を強化し、医療の安全確保により一層努めてまいります」とコメントしています。
「医療事故調査制度」は、医療事故の再発防止を目的として平成27年に国が新たに設けた制度です。
患者が予期せぬ形で死亡した場合、医療機関は自ら調査を行い、その結果を「医療事故調査・支援センター」に報告することが義務づけられ、センターは、報告された事例をもとに調査・分析を行って「再発防止に向けた提言」を公表しています。
しかし、医療事故として報告するかどうかは医療機関の判断に委ねられていて、必要な報告や調査が行われず、十分な再発防止につながっていないとの指摘もあります。
制度が始まった翌年の平成28年には年間406件の報告がありましたが、去年は317件と減少傾向にあります。
2歳の娘を医療事故で亡くし、「医療過誤原告の会」の会長を務める宮脇正和さんは「私たちは大事な家族を亡くしても『同じような事故を起こさないでほしい』という願いが大きい。今回の和解は、医療の安全性や信頼度を向上させていく意味で本当に大きな意義がある」と評価しました。
一方、現在の制度は、医療事故として報告するかどうかの判断が医療機関に委ねられていることについて、「遺族が蚊帳の外に置かれている。第三者がヒアリングをして『調査すべき』というものについては病院に調査するよう強制力を持たせていくといった制度の改善を積み重ねていってほしい」と話しています。