能登半島地震から3か月以上が経過しました。甚大な被害を受けた電気や水道などのライフラインは徐々に復旧していますが、各地で道路の通行止めや断水が続いています。被災地の現状と不足する災害ボランティアの状況です。
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復旧が遅れる被災地
ことし1月1日に発生した能登半島地震から、3か月以上たちました。いまだに厳しい環境での暮らしを余儀なくされる人も多くいます。
住宅
兵庫県立大学大学院 減災復興政策研究科教授の阪本真由美さんは、被災地の現状と見通しを次のように説明します。
「避難所や、親戚の家などの2次避難先に多くの方がいます。仮設住宅建設が進められていますが、まだ皆さんに行き届くほどは出来ていません。これから先、自宅の修理など、いろいろな再建の道があり、先の長いプロセスがあります」
道路
国土交通省によると、浄水場につながるルートなど、インフラの復旧に必要な道路について、4月4日の時点で全体のおよそ9割に当たる40か所で復旧が完了したということです。
「奥能登はまだ通れないところもあり、珠洲市や輪島市は時間がかかりそうです。通れる道路も限られていて、そこが片側通行止めになっていたりして、復興には足かせになっています」(阪本さん)
ライフライン
石川県内では、電気はおおむね復旧し、ガスも解消済みとなっています。一方で、水道は、揺れと液状化によって地中の管が損傷しているところが多く、断水はおよそ6320戸(4月5日時点)と、まだ解消されていません。
被害の大きい地域のひとつ、震度6強の地震に襲われた石川県珠洲市狼煙(のろし)地区を取材しました。
断水が続き、住民は自力で湧き水を引き、生活していました。
水道が復旧したのは、地震発生から2か月近くたってからでした。
ライフラインの復旧が遅れている要因の一つは、能登半島という交通アクセスがもともと難しい場所であることに加え、特に甚大な被害を受けたのが、輪島市、珠洲市など『奥能登』と呼ばれる地域だったからです。
奥能登の動脈の一つとなってきた国道249号線の寸断がいまだに続いているなど、復旧を終えていない道路も数多く残されています。
珠洲市では、地震の規模が想定以上だったため、仮設住宅の建設候補地の半分以上が被災。新たな土地を探さなくてはならず、なかなか建設が進みません。
また、作業員の宿泊場所が地震の影響で確保が困難なため、遠方から通うケースが多くあります。
「過去の地震の場合は、作業員の宿泊地はもう少し近い場所で確保できたり、運送の便の時間もこれほどかかっていなかったと思う」(大手住宅メーカー担当者)
壊れた建物の解体も思うように進んでいません。石川県で確認されている住宅の被害は7万5000棟あまり。(2月21日時点)
被災地では、地震から7週間以上たっても、壊れた建物がそのままになっている場所が目立っていました。
■能登半島地震 復旧の遅れ
過去の直下型の大きな地震での復旧状況と比べてみても、能登半島地震の状況の困難さがうかがえます。
「例えば、阪神・淡路大震災では、地震から約1週間で電気は復旧していましたが、今回の能登半島地震では約2か月半かかっている。水道は、現在も約6320戸で断水しています(4月5日時点)。また、下水道に関してはまだまだかかる見通しで、トイレはまだ流せない状況のところもあります」(阪本さん)
再建の力 ボランティアの状況は
兵庫県立大学大学院の阪本さんは、今回の被災地でのボランティアの状況について、解説します。
「今回の能登半島地震では、道路など交通網の被害が大きい中、捜索や人命救助の方も入っていくことになって、当初は一般のボランティアをお断りしていた時期もありました。
その後、受け入れ体制が整い、ボランティアの募集を始めましたが、今度はボランティアが増えないという状況があります。とはいえ、生活再建にはボランティアが欠かせません」(阪本さん)
現地に入っているボランティアがどんな活動をしていたのか、2月末の時点での様子をまとめました。
能登半島地震の被災地では、数多くの災害ボランティア団体が、現地で活動を行っています。
珠洲市三崎町の避難所では、日本財団ボランティアセンターから派遣された大学生が、足湯を提供したり、会話したりして、被災者との時間を過ごしました。
参加したボランティアの中には東日本大震災で被災した人もいます。
「能登半島の人たちの力になればなと思って13年前の自分を思い出しながら 被災者の方と関われるといいなと思いました」
しかし、地震発生から時間がたつにつれて、ボランティアの支援が少なくなる避難所も出てきています。
輪島市門前町にある避難所では、合わせて140人分の炊き出しを毎日、昼と夜に行っています。
こうした炊き出しは、これまで支援団体や、県内外の飲食店が支援してきましたが、ボランティアの申し出が減っています。被災した住民自ら炊き出しを行う機会が増え、大きな負担になっていました。
支え手の確保が問題になる中で、支援をどう継続するかが課題になっています。
■国の負担金を活用し、地元飲食店が食事づくり
そんな中で、ヒントになる活動が。穴水町は、避難所で提供する食事を、地元の飲食店の人たちに賃金を払って作ってもらう取り組みを3月から始めました。
町の飲食店は ほとんどが休業中で、再開のめどが立っていません。
そこで、被災者に温かい食事を提供すると同時に、仕事を失った人たちの働く場を確保しようというもので、国からの「災害救助費負担金」を活用した、全国的にも珍しい取り組みです。
なりわいを失った被災者が、仕事として被災者支援に当たる仕組みを広げていくことも、重要な対策となっています。
■個人ボランティアの宿泊場所を設置
さらに、個人で参加するボランティアを増やし、活動時間を長くする取り組みも行われています。
個人のボランティアが泊まれる宿泊場所が、穴水町で設けられ、2月末から運用が始まりました。
旧向洋中学校の校舎を活用して、テントやダンボールのベッドが置かれています。一日におよそ100人が宿泊できるということです。これで、現地に滞在しての活動ができるようになりました。
「現地に入るのに3から5時間かかるところが30分足らずでいける。非常に有効かと思う」(千葉から参加のボランティア)
ボランティアの参加方法と注意点
兵庫県立大学大学院・阪本さんによると、4月3日時点で、把握されているだけで279の専門ボランティア団体が現地で活動をしています。一方で、支援が減ってきている避難所も出てきています。
これからぜひボランティアに参加したいという方のために、参加方法と注意点をまとめました。
① 参加先を決める
「まずは自分が何をできるかを考えて、SNSやホームページで情報を見つけて、自分に合った参加先を検討しましょう。『地名』と『災害ボランティアセンター』『社会福祉協議会』『ボランティア』などのキーワードで検索すると、どこで受け入れをしているかがわかります」(阪本さん)
② ボランティア保険の加入
「被災地には危険がたくさんあるので、必ず保険には入ってください」(阪本さん)
③ 身支度・持ち物の準備
④ 交通経路・宿泊場所の確認
「災害ボランティアは“自己完結”が原則です。被災者に負担をかけないよう、自分の簡易トイレは持っていく・交通情報の確認など、事前の準備が必要です」(阪本さん)
【参考】「全社協 被災地支援・災害ボランティア活動の情報」から
・ボランティア活動保険の加入方法
・十分な準備
※NHKサイトを離れます
この記事は、明日をまもるナビ「能登半島地震 生活再建に向けて」(2024年4月21日 NHK総合テレビ放送)の内容をもとに制作しています。