亡き夫の最期の場所 消防署の跡地で祈り 南三陸町

南三陸町では、消防署に勤めていた夫を津波で亡くした女性が夫の最期の場所となった消防署の跡地で祈りをささげました。

震災当時、南三陸町に住んでいた佐藤せつ子さん(67)は、南三陸消防署の指揮隊長として住民の避難誘導などにあたっていた夫の武敏さん(当時56歳)を津波で亡くしました。
せつ子さんは当時、勤務していた県の合同庁舎の屋上に避難して助かりましたが、真向かいにあった夫がいた消防署は津波にのみ込まれ、その様子を見つめることしかできなかったということです。
震災の発生から12年になる11日、せつ子さんは夫の最期の場所となった消防署がかつてあった場所を訪れ、いつも持ち歩いている小さな仏壇に花を供え手を合わせました。
そして地震が発生した午後2時46分になると、海に向かって再び祈りをささげました。
せつ子さんは震災直後に仙台市に引っ越し、月命日には必ず南三陸町を訪れていましたが、5年前にがんを患ってから訪れる回数が減ったということです。
それでも、命日の11日は夫を近くに感じられる場所で思いをはせようと今は何も残っていない跡地に足を運ぶことを決めました。
佐藤せつ子さんは「私と主人が最後に別れた場所なので、来ることができてよかったです。主人が亡くなって最初のころは安らかに眠ってほしいと祈っていましたが、もう12年もたつのでいまは息子や孫たちのことを見守っていてほしいなと思います」と話していました。