ストーリー相撲

荒磯親方(元横綱・稀勢の里)が語る!「令和2年の大相撲と注目力士」

2020-01-09 午後 0:00

白鵬・鶴竜の両横綱の君臨が続くのか、今度こそ新旧交代が進むのか。去年の初場所を最後に引退し断髪を終えた元横綱稀勢の里の荒磯親方に、NHKの刈屋解説委員が話を聞いた。荒磯親方が注目力士を独自の視点で分析・解説する。

けがで休場した2年間を生かせるような育成を

荒磯親方(元横綱稀勢の里)

 

──昨年の初場所の注目は「稀勢の里の復活」だったのですが、まさか一年後に髷〔まげ〕のない荒磯親方がこの場にいようとは。

 

まだまだやりたかったという気持ちは正直ありますし、復活できなかったことは悔しさが残りますけれど、その中で休場した2年間は本当に勉強させてもらいました。ここまで自分の体のことを考えたことなかったですし、筋肉のことを考えたこともなかったですから。この2年間を生かせるような育成を、今後はしていきたいと思いますね。

 

横綱稀勢の里の断髪式(去年9月29日・国技館)

 

──ところで弟弟子の高安関が12月に婚約を発表しましたが(お相手は演歌歌手の杜このみさん)、親方は知っていましたか。

 

ぜんぜん知らなくて。発表の前の日に、『結婚することになりました』という報告を受けました。やっぱりこそこそやって、うまいなと(笑)そんな感じでした。僕も全く分かりませんでした。

 

荒磯親方の弟弟子髙安が杜このみさんと婚約発表(去年10月31日・福岡県大野城市)

 

──そうなんですか。ちなみに親方の結婚は?

 

まだまだ。まだまだ修行が足りないです。

──結婚しない主義、ということでもないですね。

 

そういう可能性もありますね。

──え、あるんですか。

 

分からないですけれど。

──でも、まずは親方としての勉強ですね。やがては部屋を持たれるんですか。

 

まあタイミングがいろいろありますから。

朝乃山は体が強くなった 止まりながら攻めていくという強さがある

刈屋富士雄解説委員

 

──令和2年の大相撲界を占おうと思います。親方はどう見ています?

 

九州場所の白鵬を見ていると、まだまだ実力の差がある感じです。かち上げが問題になりましたけれど、右脇にスキができるのを突けない若手もちょっと問題があるんじゃないかと正直思うんです。僕だったらいい左おっつけがしっかり入れば、もうごちそうみたいなものですからね。横綱は健在かなと思うんですけれど、朝乃山を筆頭に、白鵬の下のところがガラッと変わっていくのかなと見ていますけれどね。朝乃山が良くなっているのは体の強さが非常に出てきたことで、相手を打ち壊してから差しにいくという感じなのです。宝富士戦(九州場所11日目、寄り切りで勝ち)を見ると宝富士の肘がガツンと上がって、ぶつかった時点でもう朝乃山が勝っている。技はもともと非常にうまかったんですが、体の強さという部分がかなりよくなって楽しみです。大関相撲、もしかすると横綱相撲というか、そう見えた九州場所でしたね。

──右四つに徹しているのもいいですよね。しかも攻めながら形を作っていく。

 

攻めるんですけれど、朝乃山には途中で止まれるという強さがあるんです。力というのは、止まらないと爆発しないんですよ。

 

荒磯親方は朝乃山(左)を高く評価

 

──止まるっていうところを、もうちょっと詳しくお願いします。

 

スクワットとかもそうですが、みんな力を込めるときって、止まってから力を入れるじゃないですか。それと一緒で、力が本当に出るのは止まったあとなんです。朝乃山は、当たった瞬間にバチーンと止まるんです。そのとき相手がバチーンと壊れるんです。だから全体にはガーッと勝つ相撲に見えるんですけれど、スローで見るとバコーンと当たって止まり、相手がぐしゃっとつぶれて勝つんです。〇・一秒とか〇・二秒とかなのですが、止まるということが相撲には大事です。例えば、貴景勝は途中で止まって押せるようになって大関に上がりました。そこがライバルの阿武咲との違いで、阿武咲は一貫した動きだけで決め打ちがないんです。必殺技のないレスラーみたいなものです。朝乃山も止まれるようになった。

──本人は感覚として分かるんですか。

 

分かると思います。はまった瞬間の気持ちよさっていうのはものすごいものがあるんですよ。報道されているコメント見ると、「前に出る」という意識は見えているんですが、この「止まる強さ」が自分で分かった瞬間に、余裕で上に行けると思いますね。

──ということは朝乃山はもう大関の力はある。

 

僕は見た瞬間に大関相撲だと思いました。僕がやりたかったことをやっていると。これは放送の解説でもついつい言ってしまいましたが。

──ということは横綱まで突き抜ける可能性も。

 

止まることが確信に変わって、自分のものになれば、僕は上がっていくと思いますね。今は勢いのままいっているのかもしれない。たまたま止まっているように見えているのかもしれない。でもそれを自分のものにしたときには、番付を駆け上がっていくでしょうね。そうすると朝乃山が軸になっていきますよ。

白鵬はレベルが全然違う オリンピックという区切りはない

 

──それでもやはり横綱は粘りそうですか。

 

それはレベルが全然違いますよ。白鵬は考える能力が違う。実力があるうえに、ほかの若手の二、三倍も考えているから勝てるわけないです(笑)。オリンピックまでが目標といっても、横綱13年やっていると、区切りとかは関係ないと思います。

 

「白鵬はレベルが違う」と荒磯親方(1月6日 赤ちゃん抱っこイベント)

 

──九州場所の御嶽海は額をケガしたときの相撲はちょっとがっかりしましたね。

 

あれは稽古ですよ。稽古で怖さを払拭しないといけないです。僕も新大関のときに嘉風とやって、一二針縫ったことがあるんですよ。でも次の日に稽古して大丈夫だなと確認できたんです。彼には彼の独特な調整方法があると思うのですが、怖さを払拭する稽古というのをしていなかったのかなと。あのあと勝っていれば、まだ大関候補で残っていたと思うんです。顔なんてどうにでもなるんですから(笑)。縫ったりする技術はあるんだから。今回平幕に落ちましたが、僕は平幕に落ちてから大関に上がったんですよ。平幕に落ちて白鵬の連勝を止めて、一年後に大関に上がったんです。ここが彼の変われるチャンスかなと思います。持っているもの、センス・才能、能力は抜群ですからね。

──親方に話を聞いていると、いかにいろいろなことを考えながら相撲を取っていたかが分かります。

 

余計なことばかり考えていたんです。

明生は腕を振り回して差していくのが問題 でも、ものすごく稽古をするのでおもしろい

「明生はものすごく稽古をする」と荒磯親方(九州場所9日目)

 

──明生は、最初は地味でしたけれど、どんどんどんどん力ついてきましたね。

 

いいと思いますね。いい稽古をしているなという感じです。ただ朝乃山と比較してしまうと、どうしても体がない分、腕を振り回しながら差していくというところがあって、そこにもろさがある。体が大きくなって体の強さが出てきたら、ことしブレイクする可能性がかなりある。腕を振り回すと脇にすきができる。差すというのは差しにいこうとして差すんじゃなくて、我慢したほうが差せるんですね。先に腕を振り回したほうが差されてしまう。体に自信がないとか、押される心配があると、我慢できず差されてしまいます。我慢できる体が作れれば、明生は面白いと思います。ものすごく稽古しますから。稽古は絶対裏切らないと思います。

炎鵬は実に基本に忠実 上にも通用するのか楽しみ

「炎鵬は基本に忠実で楽しみ」と荒磯親方

 

──人気の炎鵬はいかがですか。

 

僕は炎鵬の解説をしてくれとよく言われるんですが、理解できないところがかなりあるんです。でもじっくり彼の相撲を見ていると、基本に忠実なんですね。寄るときは腰をしっかり相手にぶつけて寄って、左の差し方なんて非常にうまいですし、頭をしっかりつけて、まわしの下に体を入れ込んで投げられないように密着して。ああいうふうにトリッキーに見えるんですが、基本に忠実なんだと思いますね。

 

 

──初場所は初めての上位戦も期待されるんですけれど、そこそこ行けますかね?

 

僕はそこそこいくと思うんです。しかし、上にいくと体重が重くなるので、上からつぶされたり、体の預け方がうまい御嶽海との対戦のときにどうなるか。ケガが心配な部分もありますが。でもあれだけ基本に忠実にやっていれば、ケガにはつながらないかなというところはあります。下だから通用したのか、上にも通用するのか、楽しみなところがありますね。

──十両まで復帰した元大関の照ノ富士は、かなり戻ってきましたよね。

 

最初に上がってきたときは、本当にややこしいのが上がってきたなと思ったくらいすごかったです。僕は3連敗したんですが、必死に対策を考えさせられましたね。下に落ちた後、序二段からずっと見ていましたが、九州場所では幕下で優勝して、ほんとうにうれしかった。上で見たいですね。

刈屋富士雄解説委員

昭和58年NHK入局。アナウンサーとして大相撲をはじめオリンピック、陸上、フィギュアスケート、体操、バレーボール等の中継を担当。三つ子の父。

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