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特集 両角友佑が語る『TM軽井沢の結成まで』と北京オリンピック

カーリング 2020年3月18日(水) 午後0:00

カーリング男子チーム・TM軽井沢の中心メンバーとして活躍しながら、女子の中部電力やミックスダブルス「吉田・松村」ペアのコーチ、カーリング解説者としても幅広く活躍する両角友佑さん。

 

ピョンチャンオリンピック直後にSC軽井沢クラブを離れてからTM軽井沢結成までのいきさつ、新チーム1年目の手応え、そしてこれからの日本男子カーリング界の展望を話してくれました。

TM軽井沢結成から現在までの道のり

まずは『TM軽井沢』結成までの裏側を聞きました。

 

北京オリンピックを見据えたチームづくり

――2018年2月のピョンチャンオリンピックに出場後、SC軽井沢からの離脱を発表。そして2019年5月に新チーム『TM軽井沢』の発足を発表しました。約1年の期間を空けたのには何か理由があったのですか?

 

両角友佑さん(以下、両角):本当は間を空けずに新チームをつくりたかったんですが、なかなか人数がそろわなくて…。次のチームは北京オリンピックを目指すという目標が決まっていたので、世界で戦えるメンバーをそろえる必要がありました。5年後に上手くなる選手だとちょっと遅いわけです。

 

――2〜3年で結果を出せるようなポテンシャルを秘めた選手を探していたということですね。他に選手選考の条件は?

 

両角:既存のチームを壊さないことですね。たとえばコンサドーレの誰かに声をかけたりはできないので。2人(宿谷涼太郎選手、岩井真幸選手)はもともといた札幌国際大学がジュニアをメインにやっていく方針が決まっているといううわさを聞いて、となると2人はその構想から外れるし…もし2人がカーリングを続けようと考えているなら一緒にやりませんかと。

 

サードの岩井真幸(まさき)選手(左)とセカンドの宿谷(しゅくや)涼太郎選手(右)

――声をかけたのはピョンチャンオリンピックの直後ですか?

 

両角:そうですね。ただ、そのときはまだ札幌国際大学でやるという答えだったので、その年の日本選手権が終わり、シーズンが終わったタイミングでまた声をかけました。2人は北海道に住んでいたということもあり、当時の生活を捨てるといったら大袈裟ですが大きく変えることにはなるのでしっかり考えてもらいました。

 

リードの両角公佑選手。兄・祐介選手と長い間同じチームで活躍してきたが、ピョンチャンオリンピック後の1年は別の道を歩んだ

――弟の両角公佑選手はどういう経緯で加入したのですか?

 

両角:いや〜、一回も声をかけてないのに勝手に入ってるんですよ(笑)。「一緒にやるでしょ?メンバー足りないでしょ?」みたいな。なんなら初めからいます!くらいの雰囲気でスポンサーにもつないでくれて、なぜか一緒にやる前提で話が進んでいました(笑)。

 

結成1年目、手応えは上々

――新チームを発足してはじめての日本選手権でありながら2位という結果を収めました。1年目の手応えとしてはいかがですか?

 

両角:1年目にしてはいいところまで来られたなと感じています。昨年の選手権を見て自分が、というよりは日本男子全体がコンサドーレに置いていかれたな、圧倒的に離されているなと思っていたので、1年目の今年はそこにどこまで追いつけるかが課題でした。どう勝つかというよりもいい勝負ができるか、という中でいい試合ができたという手応えは感じています。

 

2019年の日本選手権はコンサドーレが優勝し、世界選手権に出場した

――他のメンバーとのコミュニケーションはどうでしょうか。

 

両角:かなりコミュニケーションをとれるようになってきたのですが、まだ道半ばという感じは否めませんね。今後も基礎練習と並行して磨いていく必要はあると思います。2人(宿谷選手、岩井選手)にはまだ伸びしろがあるので、技術的な部分を伸ばして安定させてあげることができれば、次の1年でかなりいいところまでいけるのではないでしょうか。

 

――見えてくる課題はありつつも、1年目としては上々の滑り出しだったわけですね。

 

両角:そうですね、第一段階としてはいいところまできたと思っています。

TM軽井沢が2年目に見るものは

――日本選手権で優勝したコンサドーレに続いて、TM軽井沢とSC軽井沢クラブでまずは“男子三強”の勢力図が作れたように感じますが、2年目は?

 

両角:今後は自分たちのカーリングをブラッシュアップしていきたいと思っています。(コンサドーレと)いい勝負どまりではなくて、勝つ見込みが立つくらいにはレベルアップしたいですね。試合中に「普段どおりに、もっとうまくできたんじゃないか」って思う瞬間がまだあるので。

 

僕と弟はこれまでたくさんの経験を積ませてもらっていますが、残りの2人はうちのチームに来てツアーに出るのが初めてでした。来年も更に試合数を増やして試合で勝つ感覚、大事な場面で実力を発揮する力を身につけてもらいたいですね。

 

2020年の日本選手権はコンサドーレとの決勝を含む3度の対戦でいずれも敗れた

――来年の日本選手権の目標は?

 

両角:優勝したいですね。北京オリンピックを目指すと宣言している以上、代表争いのレースから離脱するわけにはいかないので。結構負けず嫌いなので、やっぱり勝ちたいなって思いますね。

世界からみた日本男子カーリングの現在地は?

――国内のカーリングは人気だけでなくレベルも上がっているように思うのですが、両角さんはどう見ていますか?

 

両角:う〜ん…。もちろん上がっているとは思うんですが、世界のトップチームの数が減って、その結果日本が上がっているという側面もあると思うんですよね。以前はトップ10を占めるくらいカナダの強いチームがたくさんいたんですが、いまはカナダ国内で再編されて5チームくらいに減ってしまいましたし。もちろん、WCU(世界カーリング連盟)が出しているランキングであれば日本の順位は上がっていますし、ツアー(WCT)の世界ランキングでいえばもっと上がっています。

 

――何を基準に上がっているか、というところなのですね。

 

両角:確実にレベルは上がっていますが、安心できるほど上がっているのかというと少し疑問に思います。個人的な感覚としては、毎回世界選手権の決勝に残るくらいの実力がないと安心できないというか…。まだ危ないところにいるので全員で頑張らなきゃと思います。

 

 

――ここからの2年、北京オリンピックへの出場権を賭けた戦いをしつつ、メダル獲得のためのレベルアップが求められます。ズバリ、日本は北京でメダルを取れそうですか?

 

両角:男子のカーリングの実力は今、カナダ、スウェーデンあたりの強豪をAグループだとすると、その下のBグループにはスイス、中国、韓国、アメリカ、スコットランドなどたくさんの国が団子状態となって続くイメージです。

 

オリンピックは一発勝負なのでそのときの調子に左右されますし、トップチームが崩れればAグループがBのグループに並ぶこともあり得ます。今の日本のレベルをみてもメダルを狙えるチームはあると思うので、まずはオリンピック代表の枠にどう食い込むかを日本の男子全員が考えなければいけません。

照準は北京オリンピック!日本男子カーリングの今後に注目

中部電力のコーチを務めながら選手としても本格的に再始動して1年。たしかな手応えを感じつつも、TM軽井沢のみならず日本男子のカーリングが目の当たりにする課題を冷静に分析する両角さん。北京オリンピックのメダル獲得に向けた今後の動向にも注目です!

 

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