特集 綱とりの貴景勝 土俵人生を左右する大事な場所で

「優勝を意識しないとかあり得ない」
先場所(11月場所)大関として初めて優勝を果たした貴景勝が場所後に語った言葉だ。
2020年12月1日撮影 初場所に向け本格始動した貴景勝
今場所にそのまま置き換えれば「綱とりを意識しないとかあり得ない」ということになるだろう。新型コロナウイルスの感染や濃厚接触の可能性で関取15人が初日から休場した初場所。両横綱の姿もない土俵上の注目は「綱とり」に挑む大関・貴景勝に集まったが、初日からつまづいた。
結びの相手は小結・御嶽海。過去9勝8敗と力がきっ抗する難敵だ。頭で当たっての突き押しを何度も繰り返したが、最後はみずから引いて土俵を割ってしまった。
大相撲初場所初日 貴景勝(奥)が押し出しで御嶽海に敗れる
取組後、日本相撲協会の八角理事長は「慎重にいきたい気持ちがあったんだろうか。引くのではなく、反対に押していこうというスタミナと精神力が必要だよね」と貴景勝の精神面を指摘した。
この精神面の重要性、貴景勝は今場所前にみずから語っていた。横綱・大関陣が休場し、重圧がかかるなかで優勝を果たした場所を振り返っていた。
「優勝がかかっているのに、意識しないとか絶対にあり得ない。意識しろよって、自分では思うんですよね。優勝の意識はするけれど、順番を間違わないようにしようと。優勝を意識して硬くなってしまう順序になるのではなくて、優勝したいよね。じゃあ集中しきって自分の相撲をやることしかないよね」。
貴景勝は元師匠の退職によって部屋を移籍した直後、平成30年の九州場所で初優勝。新大関の場所でケガをして2場所で大関から陥落するじくじたる思いも味わった。
9歳から相撲を始めて15年あまり、1つ1つの経験を経て、みずからの力を出しやすい心のあり方をつかんできたという。
大相撲初場所初日 敗れた貴景勝
綱とりの場所でいきなりつまづいた貴景勝、取組後には「切り替えて頑張っていきたい」と話した。”綱とりを意識せざるを得ない中で順番を間違えずに自分の相撲に集中できるか”。土俵人生を左右する大事な場所で早くもその心が試されている。
この記事を書いた人

鎌田 崇央 記者
平成14年NHK入局
さいたま局を経て、スポーツ部に。プロ野球、水泳などを担当し、格闘技担当は通算5年目