ストーリー相撲

72代横綱 稀勢の里 荒磯親方が3大関を分析 安定した押し相撲の貴景勝が一歩リード

2021-01-07 午後 05:30

令和3年の大相撲は、新しい横綱が生まれるかどうかが注目されています。いちばん近い位置にいるのが貴景勝、正代、朝乃山の3人の大関です。

 

初場所は、貴景勝が初めて横綱昇進に挑む一方、正代と朝乃山は11月場所で途中休場したため負け越すと陥落する「角番」(かどばん)で迎えます。NHK大相撲中継での切れのいい解説が人気の元横綱 稀勢の里 荒磯親方に、3人の大関の相撲を分析してもらいました。

貴景勝「四つ相撲のような突き押し」に期待

 

3人の中では、初場所に綱取りがかかる貴景勝が抜けていて、一番チャンスがあるのかなと思います。

 

今までは、突き押しの力士は横綱になれないとか、安定性がないとか思われがちだったと思うんですが、貴景勝の突き押しというのは、一気に走って出ていって土俵際で突き落とされる、というような相撲ではないです。

 

私のイメージで言うと「四つ相撲のような突き押し」という感じです。腰をしっかり安定させているので前に落ちませんし、負けない突き押しなんですね。

 

たとえば北勝富士のようにガッと前に出る相撲は、勝つチャンスもありますが負けるリスクも増えてくるので、貴景勝の方が安定感があると思います。その安定感をもっともっと鍛えていくということですね。体を丸めて頭を下げて出るというのがこれまでの突き押しのセオリーだったんですけれど、それとは全く逆に、体をしっかり立てて押していく。

 

貴景勝の相撲が、突き押しの新しいセオリーに変わっていくぐらいになってほしいと思いますね。

朝乃山 立ち合いの左足の踏み込みの位置を変えれば、一気に化ける可能性

 

朝乃山に関してはいろいろ注目されていますし、久々に形のある四つ相撲の力士が出てきたんですけれども、同じ右四つ得意の力士に手こずっています。たとえば照ノ富士。まだまだ研究の余地ありなのかなあと感じますね。

 

朝乃山はここ2場所、体が流れているのが悪いところです。立ち合いに左足で踏み込むのですが、そのあとは全部右側に流れちゃっているので、重さがまったく相手に伝わっていない。まわしを取ったら強いんですが、問題は取るまでなんですよ。

 

朝乃山は足を外に開きながら当たっていくタイプなので、懐に潜り込んでくる相手には中に入られてしまう。立ち合いの踏み込む位置を見比べてみれば、照ノ富士は相手方向に踏み込んでいるし、朝乃山は外に開いていると思います。

 

 

本当に何センチという世界ですが、踏み込む足を相手側に寄せれば大きく違います。相手から見るとそれだけでも当たる的が小さくなるので、すごく嫌なんですよ。ただ単に強く当たるとかパワーアップするとかだけを課題にするのでなく、踏み込む角度を映像で撮ってみたり、鏡の前でどう踏みこめば相手の嫌な形になるかを研究したりと、緻密なことをやっていくと、立ち合いの圧力がもっと増してきて、いきなり相撲が変わってくると思います。

 

元横綱の千代の富士さんも、踏み込んだ足の位置を付け人に聞いていたと言っていましたね。足を踏み込む位置が、何センチ、何ミリ違うかで、相撲人生が変わるんですよ。


私の場合は、稽古のとき土俵をきれいにしておいて、踏み込んだ位置を確認していました。開いた踏み込みですと相手に持ってかれます。仕切り線のちょうど上ぐらいに踏み込んで待っているぐらいだと、私の力が相手に伝わりました。

 

この点では私と朝乃山はタイプが似ているんです。だから、もっともっと。もっともっと意識を持っていくと面白いなと思います。今は考える時間というか、いろいろ失敗したほうがいい。私も失敗しまくりましたけれどね。そのようにしてどんどん力を伸ばしていけば、一気に化ける可能性もあるくらい、ポテンシャルは高いですからね。

正代 反りかえる姿勢が今後の相撲のセオリーになるか

 

大関に上がったときは、立ち合いにバンと当たって、相手に来させたところを下からズボッと入っていくという、正代のいいところが出ていたんですけれど、11月場所は、つけこまれて土俵から落ちたところでケガをしてしまいました。

 

正代の反りかえる相撲というのは、これまでの相撲のセオリーにないですよね。すごいことです。でも、あれが現代相撲じゃないでしょうか。

 

昔は、体は前に倒すことがよしとされていましたが、椅子に座る生活が増えてきて体が欧米化するなかで、あの反って取る相撲がこれからの基本になっていくのかなと思わせます。

 

私も部屋の稽古場で、若い力士に反りかえるようにして、すり足をさせているんですよ。正代のようにね。これは日本人の体が弱くなってきているということじゃなくて、こういう相撲が合ってきているんじゃないかなと思います。実際に体を起こしたほうが、すり足のスピードがすごいのです。正代のような相撲が、今後セオリーに変わっていくのではないかと、私は予想しているんですよ。

この記事を書いた人

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古橋 明尊

元NHK記者。大阪放送局スポーツ専任部長、報道局スポーツニュース部長等を務める。現在は相撲専門雑誌「NHK G-Media大相撲中継」の編集担当。曙、若貴の横綱時代に大相撲取材。

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