ストーリーサッカー

ストライカーって育てられるの?

2020-12-21 午後 0:15

アルゼンチンのメッシ選手にポルトガルのクリスチアーノ・ロナウド選手。世界の強豪国の多くには圧倒的なストライカーがいます。

 

一方で、日本代表は、たびたび決定力不足を指摘されてきました。長年、頭を悩まされてきたこの問題を本気で解決しようと日本サッカー協会が新たな取り組みを始めました。果たしてうまくいくのか!?12月に行われた1回目の合宿に密着してきました。

本気度高めの合宿

 

森保 監督「俺が一番になって帰るという気持ちでエネルギーを全部ぶつけてください。将来、日本代表の宝となるストライカーになることを期待しています」

 

冒頭、日本代表の森保一監督からの激励を目を輝かせて聞いていたのは、まだ表情に幼さが残る中学1年生と2年生16人です。

 

 

彼らが今回の育成プロジェクトの主役。得点力の高さが評価された、この年代を代表するフォワードです。

シュート!シュート!!シュート!!!

 

日本サッカー協会の”本気”は、冒頭の練習から表れていました。なんとメニューはすべてが「シュート」。ウォーミングアップを除けば、よくあるパスの交換などはいっさい行われません。初日はゴール前でのシュート練習のみが、えんえんと1時間半行われました。

 

"サッカーなんだからシュートの練習を行うのは当たり前"と思うかもしれませんが、実はサッカー界では異例ともいっていい内容です。

 

3年前の調査で、Jリーグの育成年代ではフォワードに特化した練習が非常に少なく、選手個人の自主練習にゆだねられている現状が明らかになっています。戦術の確認などが優先されているからです。フォワードの選手だけが集まってシュートに特化したトレーニングを行うのは協会にとっても大きな挑戦なのです。

背景には強い危機感

 

では、なぜ今になって、協会は重い腰をあげたのか。その背景には強い危機感があります。"2030年までにワールドカップでベスト4に入る"という目標を達成できないと考えたのです。

 

近年の世代ごとの日本代表の主な国際大会の成績を見ると、揃ってベスト16どまりです。

◎日本代表 

2018年ワールドカップ・ロシア大会 ベスト16

 

◎U-20日本代表  

2017年U-20ワールドカップ・韓国大会 ベスト16

2019年U-20ワールドカップ・ポーランド大会 ベスト16

 

◎U-17日本代表  

2017年U-17ワールドカップ・インド大会 ベスト16

2019年U-17ワールドカップ・ブラジル大会 ベスト16

 

反町 康治 技術委員長


このままでは世界の強豪に追いつけなくなる。日本サッカー協会の反町康治技術委員長のことばからも切迫感が色濃くにじみ出ています。

 

反町 技術委員長

「国際大会である程度の結果が残せるように日本のサッカーの戦術が成長してきたからこそ、もう一つ上のレベルに行くためにストライカーの必要性が高まっている。指をくわえて、そういう選手を待つわけにはいかない」

徹底して個別指導


プロジェクトで、もう1つ徹底されているのが"個別指導"。コーチは1人1人にあった具体的なアドバイスを丁寧に与えることを意識します。初日のシュート練習、実はゴールの枠から外れるシュートが多くなったところで、いったん中断されました。

 

いかに全国トップクラスの選手といえど、まだ、13歳と14歳。"技術的な完成度は高くない"と判断したコーチが選手の上半身に巻かせたのはゴムです。引っ張って手の動きや重心の位置を修正するように伝えながら正しいフォームを身につけられるよう指導しました。

 

 

ただ、そこは、さすがに全国から集められた精鋭たち。わずか10分ほどの指導でしたが、効果はてきめんに表れました。練習を再開すると、明らかにシュートがゴールの枠の中にコントロールされる回数が増えたのがわかりました。

 

 

個別指導は、グラウンドだけにとどまりません。練習後にはコーチたちが16人の選手全員と個別に面談。練習の映像をパソコンで見せながらグラウンドで伝えられなかったことまで細かく伝えます。

 

池内 豊 ユース育成ダイレクター

 

池内 ユース育成ダイレクター

「フォームをチェックしたりとか、その前のオフ・ザ・ボール(ボールを持っていない時)の動き方であったり、ファーストタッチであったりというその部分を徹底的に個別に取り上げて、そして面談をして、また気づいていただく」

シュートに飢えていた

シュートに特化された異例の合宿、参加した選手は、どう受け止めていたのでしょうか。

 

 

「経験したことがないくらいシュートをたくさん打ったので、疲れより楽しさが上回ったし、自分のシュートに少し自信がつきました」

 

 

「ストライカーに必要な力に特化した練習というのはなかったので凄く良い経験になった」

 

 

「自分のチームに帰っても、もっともっと練習したいと思った」


どの選手からも、おおむね好評で、サッカーの原点ともいえる”シュートへの飢え”を強く感じさせることばが、数多く聞こえました。

答え合わせは10年後

 

今回のプロジェクトを未来につなげようと協会は並行して、ある調査も始めました。今回は参加した選手の10メートル走、クランク走(方向転換を入れた短いダッシュ)、3段飛びの3つの能力を測定。

 

得点を奪うために、最低限、必要と考えた能力です。練習での映像をチェックしながら、まずは、この3つの能力が得点とどこまで深く関係するのか探っていくということです。

 

そして、最終的にはストライカー育成の方法論を作る上での”道しるべ”を発見したいと協会は考えています。今回、合宿に参加した選手たちは、日本サッカー協会がベスト4入りを目指す2030年のワールドカップが開催されるころには20代前半となります。

 

 

まだまだ、手探りが続くこのプロジェクトから世界のトップと肩を並べて戦えるスケールの大きなストライカーが生まれる日を楽しみにしたいと思います。

この記事を書いた人

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細井 拓 記者

平成24年 NHK入局 北見局、釧路局、札幌局を経て、スポーツニュース部。サッカー、ラグビー、冬季パラリンピック種目を担当。趣味は体を鍛えること。座った姿勢から倒立できます。

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