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特集 年を取ると、筋肉痛は遅く出る、というのは、うそ!?

その他のスポーツ 2020年12月21日(月) 午後3:00

スポーツとは、切っても切れない関係にあるのが「筋肉痛」。アスリートでない我々でも運動不足を解消しようと、はりきって運動したら筋肉痛に。それに、なんだか年を取るにつれて、筋肉痛になるのが、遅くなっているような…。そんな厄介な筋肉痛は、なぜ、起こるのか?

 

そんな疑問を抱いたのは、最近、ポッコリお腹が気になるようになった、マサル君(28才)。元の体型に戻そうと筋トレをしてみたものの、ひどい筋肉痛に襲われてしまいました。これでは、筋トレなんて続けられない!と大学時代のマッチョな先輩、通称「筋肉先輩」に相談することに……。

疑問.1 筋肉痛は、なぜ起きる?

マサル君

「筋肉先輩!久しぶりに筋トレしたら、全身、筋肉痛で歩くのも、つらいんです」

 

 

 

 

筋肉先輩

「はっはっは!日頃から愛情をもって筋肉を鍛えないから、そんなことになるんだぞ!」

 

 

 

 

 

マサル君

「笑ってる場合じゃないですよ~。そもそもなんで筋肉痛って起きるんですか?」

 

 

 

 

筋肉先輩

「よーし、筋肉痛について説明しよう」

 

 

 

 

 

筋肉痛は、トレーニングなどの運動によって筋繊維が負傷することで起きるんだ。
運動不足だと、筋肉は疲労が溜りやすく、硬くなりやすくなり、硬くなった筋肉を無理に使おうとするため、筋肉痛が起きやすくなる上にケガもしやすくなってしまう。だから、年齢にかかわらず、日ごろから、筋トレを続けることは、とても重要なんだ。
筋肉の量が増えれば、基礎代謝の向上にもつながる。筋肉は裏切らないのさ!

疑問.2 年を取ると筋肉痛は遅れてやってくるのは本当?

マサル君

「ところで、10代のときは筋肉痛って翌日にきてすぐに治ったような気がするんですけど、今回は3日後ぐらいにきたんですよね。やっぱり年を取ったからですかね?」

 

 

 

筋肉先輩

「そうか~?年齢と筋肉痛の関係は、あまりないともされているが・・・」

 

 

 

 

マサル君

「え!?そうなんですか」

 

 

 

 

 

筋肉先輩

「高齢者のほうが、早く筋肉痛がくることもあるんだぞ!」

 

 

 

 

 

筋肉痛が出るタイミングは、年齢ではなく “運動強度”に関係している!

 

具体的に説明しよう。ダンベルを持ち上げて下ろすときや短距離の全力疾走など、筋肉を「早く、強く」動かすことは、筋肉に大きな負荷がかかるので、損傷しやすくなり、比較的早く、筋肉痛が出てくる傾向にある。

 

逆に、水泳(短距離は除く)やウォーキングなど、筋肉を「ゆっくり、弱く」動かすことは、筋肉には、それほど大きな負荷にはならないので、損傷しにくい。だから、比較的遅く、筋肉痛が出てくる傾向にあるんだ。

 

なぜ、運動強度によって、筋肉痛のタイミングが早くなったり、遅くなったりするのか?
それは、筋肉の「損傷」と「修復」のバランスによって、痛みが出るタイミングが決まってくるからだ。

 

実は、筋肉は運動による「損傷」が起こると、そこからの「修復」が始まる。

 

強度が高い運動をすれば、筋肉のダメージの蓄積が早く、修復のスピードが追いつかない。
だから、筋肉痛が「早く出やすい」。

 

一方で、強度が低い運動の場合は、筋肉のダメージの蓄積よりも、修復のスピードが上回り、
筋肉痛が「遅くなりやすい」というわけだ。ダメージの蓄積が遅いと、筋肉痛の感知も時間がかかるんだよ。

 

年を取ると、全力疾走など、筋肉を限界近くまで追い込むような運動はあまりしなくなることが多い。
だから、筋肉痛が「遅く出るようになったなぁ」と、感じることが多くなるみたいだな。

 

ただ、日常的に使っている筋肉か、あまり使っていない筋肉かによっても、かかる負荷が変わるため、筋肉痛の出るタイミングは人によって差が出ることもあるから、あくまで、傾向の話だけどな。

疑問.3 筋肉痛を早く治す方法はないの?

マサル君

「筋肉痛についてなんとなくはわかったんですが、僕は、今は、とにかく早く、自分の筋肉痛がとれる方法を教えてほしいのですが・・・」

 

 

 

筋肉先輩

「あるぞ!俺は、いつも、『ある方法』で、筋肉痛を治しているからな」

 

 

 

 

マサル君

「え!?その、『ある方法』を、教えてください!」

 

 

 

 

筋肉先輩

「筋肉痛を手っ取り早く和らげたいなら、筋肉を温めるべし!」

 

 

 

 

マサル君

「ど、どうやって温めるんですか?」

 

 

 

 

 

筋肉先輩

「そんなの風呂に決まってるだろ!」

 

 

 

 

 


筋肉は温めると柔らかくなるので、お風呂は筋肉痛を和らげる効果があるんだ。38~40℃くらいのお風呂に10分ほど入浴すれば、OK!また、運動直後に、お風呂に入っておけば、筋肉痛の予防にもなる。

 

また、ストレッチやマッサージなどをして日頃から筋肉を伸ばし、硬くならないようにしておくことも十分な筋肉痛の予防になるんだ。

 

ちなみに、スポーツ後に痛んだ体の箇所に冷シップを貼って冷やすことがあるが、あれは、強い炎症時(肉離れ、ギックリ腰や捻挫などの急性の症状)に有効な処置。瞬時に冷やし、炎症を抑制してくれるからな。

 

ただ、注意が必要なのは、冷やしすぎると筋肉の組織が冷えて硬くなり、血行不良が起き、修復させるスピードを下げることだ。

 

一方、お風呂などで温めることは、温めることによって筋肉が柔らかくなり、血行が促進される。血行が良くなると酸素の供給も増え修復するスピードを上げてくれる。つまり、筋肉痛の大小にもよるが、急性のケガをしたときのような激痛なら冷やすことを、反復運動でジワジワとくる筋肉痛の痛みなら、まずは温めることをおすすめする。



筋肉先輩

「俺は、風呂が大好きだし、この方法で、筋肉痛を和らげたり、予防しているのさ!あとは、食事も大事だ。運動の前後に肉・魚・大豆・卵・乳製品など、タンパク質を意識してとっている。それから、筋肉痛が治る前に運動を再開すると、再び筋肉が破壊されて、筋肉が効率的よく成長しない。だから、普段からのケアやトレーニングが大事なんだ」

 

 

マサル君

「筋肉先輩、勉強になりました。ありがとうございました!」

 

 

 

 

筋肉先輩

「よし、これでお勉強は終わったから、これから俺の筋トレに付き合わないか!」

 

 

 

 

マサル君

「え、まだ筋肉痛が取れてないのに、筋トレしたら、もっと筋肉痛になっちゃいますよ…。それに、先輩も言ってましたよね。筋肉痛が治る前のトレーニングは、効率が悪いって」

 

 

 

筋肉先輩

「つべこべ言ってないで、ほら、俺についてこい!筋肉痛じゃない部位を鍛えるんだ!」

 

 

 

 

マサル君

「あああ~~~~!!」

 

 

 

 

 

筋肉痛は頑張った証。痛みは、つらいですが、しっかり予防やケアをしてあげることで、筋肉痛を少しでも軽くし、筋繊維を強く太くすることができます。マサル君のようにいきなり運動を始めると挫折しがちですが、知識を持ってから始めることで、自分の体がどういう状態なのか把握でき、運動とうまく向き合いながら継続できそうですね!

 

監修 宗村大義さん

筋肉痛やスポーツ障害を含めた体のあらゆる悩みを治療する「さかいクリニックグループ」 院長代行。柔道整復師(国家資格)。臨床経験10年以上。整形外科リハビリ部長を経て、現在に至る。

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