特集 清水希容が教える あなたの知らない(?)空手・形の世界

東京オリンピックの新競技、空手。沖縄発祥とされ、今ではおよそ1億人が愛好するといわれる世界的なスポーツです。
2月9日のサンデースポーツ2020では、日本期待のメダル候補が生出演。
技の正確さや力強さを競う、「形」で世界選手権2連覇、オリンピック代表に内定している清水希容選手とともに、知っているようで実は知らない(?)「形」の世界を深堀りします!
「形の第一人者」 清水希容
オリンピックで行われるのは、男女の形と男女3階級ずつの組手の合計8種目。形の清水選手はすでに出場をほぼ確実にしています。
清水希容選手は大阪府出身の26歳。持ち味は、激しい演武でも体の軸が全くぶれない、正確で流れるような美しい動き。世界選手権で2連覇を果たした「形の第一人者」です。
四方八方から攻撃されている!想定
1人の選手が攻撃と防御の演武を披露する「形」では、どうやって勝敗を決めているのか。
選手の演武を見た審判は10項目の採点基準をもとに得点をつけ、得点数の多い選手が勝利となります。
採点される10項目は、以下の通り。
- ・立ち方・技・流れるような動き・タイミング・正確な呼吸・極め・一致性
・力強さ・スピード・バランス
清水選手
今の採点制度になって、テクニカルな面(技術点)とアスレチックな面(競技点)で採点されるようになりました。私がどれを一番意識しているかというと…、やはりどれも大事で欠かせないので、全部を意識して稽古しています。
何も知らずに見ると、選手は1人で演武をしているように見える「形」。
しかし、実は四方八方から攻撃されていることを想定しています。見えない敵に対しての攻撃、防御の動きを採点しているのです。
清水選手
周囲に相手がいる想定なので、実際に相手をつけて受けたり突いたりといった練習もします。
また表情に関しては、やはり相手がいる想定なので、「間合い」や「目付け」ということを意識しています。
メイクもいつもよりは濃くして、しっかり「目力」を作れるようにしています。
演武の前の叫びの意味は?
もうひとつ、形で気になる事。選手たちは演武に入る前に迫力ある声で何かを叫んでいます。
例えば清水選手も。
「チャタンヤラ クーサンクー!」
この叫び、実は形の名前を言っているのです。
形では、名前を言ってから演武すると言う決まりがあります。
ほかの選手たちも。
「アーナン!」
「スーパーリンペイ!」
「パープーレン!」
など、ものすごい迫力で叫びます。
でもわざわざ「叫ぶ」のは何故?
清水選手
基本的に、形の名前は「はっきりと」言わないといけないんです。実際に演武する形と、言った名前が間違っていたら失格になってしまうので。審判に伝わるように、はっきりと告げるようにしています。
やはりインパクトや印象というものもあるので、しっかりとお腹から声が出せるように意識しています。
世界空手連盟が定めている形の種類は、実に102!
スタジオのモニターに全て並べて表示してみると、文字が小さくて読み切れないほどです。
ひとつの大会で同じ型は披露できないルールなので、オリンピックでは予選から決勝まで戦う場合、異なる4種類の形を披露する必要があります。
この102ある形の中で、清水選手が一番自信のあるものを選ぶとしたら、どの技なのでしょうか。
清水選手
「チャタンヤラ クーサンクー」は私の所属する流派の最高峰の形でもあるので、やはり大事です。沖縄の北谷村の屋良さんという方がルーツになっている形なんですが、特徴としては俊敏性のある速い動きで、手数が多い形です。
私自身ダイナミックさやスピード感が特徴なので、そういうところはしっかりアピールしていきたいです。
ライバルはスペインの38歳!
オリンピックのメダル有力候補と言われる清水選手。最大のライバルとなるのが、スペインのサンドラ・サンチェス選手、38歳です。
清水選手の美しい動きとは対照的に、力強さを前面に出した動きが持ち味。世界選手権では清水選手の3連覇を阻止しました。
強さの源は徹底した筋力トレーニング。時には、一本歯の下駄を履いたバランスが不安定な状態で突きを繰り返すという驚きの練習をSNSで披露。自慢のパワーで清水選手の前に立ちはだかります。
清水選手はサンチェス選手のすごみを次のように語ります。
清水選手
ストイックさもありますし、彼女は38歳でここまで積み上げてきた「味」というか、雰囲気があります。そういうところは私ももっと勉強していかなきゃいけない。いいライバルだなと思っています。
覚悟を持って、演武を
清水選手の「希容」という名前。そこには、「希望の器を大きく、いろいろなことに挑戦できるように」という意味が込められていると言います。空手が初めてオリンピックで実施される東京大会はまさにその挑戦の場所になります。
清水選手
私自身、今年1年は特に覚悟を持って戦いたいと思っています。一番の目標にしているのは、会場や世界中と一体になった演武ができるように、そういう演武で優勝したいと思っています。