ストーリー相撲

勝ち越しの宝富士「誰かのためになら頑張れる」

2020-11-17 午後 02:20

「だいぶ早いので、びっくりしてます」

 

勝ち越しを決めた33歳の平幕 宝富士が、いつもどおり淡々と話した。9日目での勝ち越しは、平成25年初場所以来、実に7年ぶり。隠岐の海との一番は、土俵中央でお互いに押っつけ合い、1分を超える長い相撲になった。

 

 

先に十分な体勢となった隠岐の海が右上手を引きつけて寄って出たが、宝富士は決して諦めなかった。「必死。残すのに必死です」のことばどおり、俵に詰まりながらも右に開いての突き落としで逆転勝ち。

 

 

これで4日目から6連勝、好調の要因を問われると三役に復帰した照ノ富士との場所前の連日の稽古を挙げた。

 

「緊張感があるので、いい稽古になったと思う」

 

大関経験者のひざのけがからの復調と、みずからの好調を結びつけている。

 

 

もともと宝富士は、照ノ富士に加え、同じ部屋の横綱だった日馬富士との稽古でもまれ力をつけてきた。

 

当時、日馬富士は宝富士について「左四つになったら誰にも負けない力がある」と評価する一方、「気持ちが弱い。優しすぎる」とたびたび指摘していた。たしかに取材には笑顔を見せて丁寧に答えるが、目標に対して前向きな答えを期待する質問は受け流す。“気は優しくて力持ち”という力士だ。だが、欲がまったくない訳ではない。

 

日馬富士が新横綱になったころ、記者が毎日、伊勢ヶ濱部屋に通っていた時期だった。「僕も新三役とかになったら取材してもらえますかね。テレビでやってもらえたら地元も喜ぶと思うんです」と控えめに頼まれたことが思い出される。「誰かのためになら頑張れる」それが宝富士のモチベーションなのかもしれない。

 

 

今の宝富士は家族の存在が励みだ。2歳の長男は、毎日テレビで相撲を観戦。「勝ったら”ヤッター”と言うので、それを聞くとうれしいです」と優しい笑みを浮かべた。

 

9日目、大関 貴景勝が敗れ、1敗で宝富士を含む3人がトップに並んだ。優勝争いの質問に対しては「まだ6日間あるんで」とやはり期待していた答えは出なかったが地元、青森からの応援については「最終的に青森を盛り上げられるように頑張れたらいいな」と話した。

 

地元や家族のために頑張る優しい“おすもうさん”が混戦の気配が漂う11月場所の優勝争いに加わっている。

この記事を書いた人

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鎌田 崇央 記者

平成14年NHK入局

さいたま局を経て、スポーツ部に。プロ野球、水泳などを担当し、格闘技担当は通算5年目

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