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特集 髙橋大輔選手のアイスダンスに期待があふれる理由 振付師・宮本賢二さんが徹底分析

フィギュアスケート 2020年11月24日(火) 午後4:36

グランプリシリーズ最終戦ということで毎年注目が集まるNHK杯フィギュアですが、今回はさらに注目度がアップしています!その理由は、2019年にシングルからアイスダンスに転向した髙橋大輔選手の“デビュー戦”であるということ。人気と実力を兼ね備えた髙橋選手がアイスダンスに挑むファーストシーズンについて、自身も元アイスダンス選手で、現在は振付師として世界で活躍されている宮本賢二さんにお話を伺いました。

宮本賢二

フィギュアスケート振付師。元アイスダンス選手。
2010年バンクーバーオリンピックで銅メダルを獲得した髙橋大輔選手の振付けの他、羽生結弦選手や荒川静香さんのエキシビション、浅田舞・真央姉妹のペアプログラムの振付けなどを担当。

シングルからアイスダンスへ 新境地開拓を目指す髙橋大輔選手

2020 フィギュア アイスエクスプロージョン


――宮本さんは髙橋選手と15年以上の付き合いだそうですが、シングルからアイスダンスに転向するというお話を聞いたときはいかがでしたか?

 

もう、本当にびっくりしました!シングルでずっとやっていた人が30歳過ぎてからアイスダンスに転向するという話を聞いて、最初は「大丈夫?」と。でも本人が「頑張ります」と言っているので全力で応援しようと思うようになりました。

 

――宮本さんも、17歳頃にシングルからアイスダンスに転向されたご経験がありますよね。種目そのものがガラリと変わると色々大変なこともあるかと思うのですが、シングルからアイスダンスへの転向で大変だったことはありますか?

 

一番大変だったのは、自分のペースではできないところですね。例えば、練習ひとつにしても自分の体調が悪ければ相手にも迷惑をかけてしまいます。試合でもシングルではその日のコンディションで多少プログラムを変えることもできますが、アイスダンスの場合はその場で変更するのが難しいです。なにより「呼吸を合わせる」ことが大事なのですが、そのへんが最初は難しかったですね。

振付師・宮本さんだから分かる、髙橋選手の魅力と強さ

――2010年のバンクーバーオリンピックで髙橋選手のショートプログラム「eye」の振り付けを担当し、銅メダル獲得に貢献された宮本さん。シングル時代の髙橋選手のスケートを間近で見てきたと思いますが、アイスダンスではどんなところに注目していますか?

 

髙橋選手は表現力が豊かでスケーティングも抜群に上手い。とくにダンスやステップは技術も華やかさも兼ね備えていて、アイスダンスでも生きてくると思うので注目しています。

 

2010年 バンクーバーオリンピックフィギュア ショートプログラム

 

もうひとつ、ペアを組んだ村元哉中(かな)選手との相性にも注目ですね。2人ともシングルのときに振り付けをさせてもらったことがありますが、どちらも表現力が素晴らしく華やかさがある選手でした。その2人がパートナーを組み、物語を作っていく…となるとちょっと想像ができないくらい。化学反応が起きてすごいものができるんじゃないかなと今から期待に満ちあふれています。

 

 

村元哉中選手 2020年フィギュア アイスエクスプロージョン

 

――公私ともに交流のある宮本さん。髙橋選手の魅力や強さの秘訣はどんなところにあると思いますか?

 

一番右が宮本賢二さん(2017年)

 

普段は穏やかで明るくて、人に優しい朗らかな感じの子なんですけど、練習や試合になるとパッとスイッチを切り替えて、鋭い目になったり人の目を釘付けにするような演技をしたりする。そのギャップは大きな魅力だと思います。みんな普段の大ちゃん(髙橋選手)を知っているので自然と応援したくなるんです。

 

リンクの外では「いつまでも弟キャラだな」みたいなことをよく言われていますが、やっぱり試合では近寄れない感じの雰囲気というか、天性のオーラを出しますよね。そこは彼の魅力のひとつだと思います。

 

2018年 NHK杯 レジェンドオンアイス

 

あとはもうひとつ、「美意識が高い」というのもポイントかもしれません。いつも髪の毛をきちんとセットしていて私服もばっちりキメている。ファンの間では有名な話ですが、髪の毛をいじったり鏡を見たりする回数も多いです(笑)。それくらい美意識が高いということなのですが、アイスダンスはコスチュームや髪型も重要になってくるので、これまで以上にその美意識が生かされるかもしれませんね。

 

――振付師という観点から見た、髙橋選手の魅力についても教えてください。

 

2020年 フィギュア アイスエクスプロージョン


魅力はもう、全身です。曲のために髪の毛の乱し方も違うし、指先の使い方も違います。彼は「手が印象的」とよく言われるのですが、その印象的な手がアイスダンスだと手を組んでしまうので、彼の手がどう使われ、生かされてくるのかというのは楽しみでもあります。

ついにデビュー戦へ!村元・髙橋ペアとしての魅力と注目ポイント

――11月27日から始まる2020NHK杯フィギュアで、ついにアイスダンスデビューを飾る髙橋選手ですが、村元・髙橋ペアとしてはどういうところに注目していますか?

 

村元 哉中・髙橋 大輔ペア

 

初戦ということでどんな演技が見られるか期待もありますが、今は、期待と同時に「とにかく無事に滑り終えてほしい」という気持ちのほうが強いです。最後まで滑り終えるというのは、実は意外に難しいことなので。とくに今回は最初の試合ですし、緊張もあると思うので最後までしっかり滑り切ってほしいと思います。

 

――先日、今季のプログラム使用曲の発表がありましたね。リズムダンスが映画の「The Mask」、フリーダンスがバレエの「ラ・バヤデール」とのことですが、この選曲についてはどう見ますか?

 

元気で明るい曲と、悲恋の物語に使われるエキゾチックな曲という対照的な組み合わせで、ギャップを楽しめそうですね。また、審査員にも「どちらの世界観も表現できるよ」というアピールになると思います。

 

「The Mask」では、2人とも足さばきが鋭いのでノリノリのテンションでかっこよく滑ってくれそうですし、「ラ・バヤデール」は壮大な感じの曲が、2人のスピード感があってのびやかな “のびるスケート”によく似合いそうだと感じました。

 


2人とも爪先の伸ばし方が美しく、ブレのないスケーティングをするのでバレエのポジションの際に綺麗な形でポーズを取る姿が想像できます。

新星誕生に盛り上がるアイスダンス界!村元・髙橋ペアへの期待

――村元・髙橋ペアの誕生で、アイスダンスが盛り上がってきている印象を受けます。最後に、アイスダンス界の今後に期待することについて教えてください。

 

アイスダンス界を盛り上げてくれるのはもちろん、他の選手にも良い刺激を与えていけるのではないかと思っています。村元・髙橋ペアの誕生に刺激を受けて、みんなさらに切磋琢磨しレベルアップするのではないでしょうか。

 

 

アイスダンスはとても素晴らしい競技なのに、日本では海外に比べるとまだまだ知名度が低い状況です。しかし、こうして有名で人気のある選手どうしがカップルを組んでメディアに取り上げられることで、少しずつですが注目が集まっています。これをきっかけにもっと盛り上がってくれたら嬉しいですし、「アイスダンスって身近なスケートの競技なんだな」と思ってもらえたら嬉しいですね!

 


髙橋大輔選手の新たな挑戦から目が離せません。2020NHK杯フィギュアでは村元・髙橋ペアの貴重なデビュー戦を見ることができます。みなさんもテレビの前で一緒に応援しましょう!

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