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特集 新関脇 隆の勝「大関を目指して頑張ります」

相撲 2020年11月6日(金) 午後3:30

隆の勝は秋場所、上位総当たりの西の前頭筆頭で大関朝乃山、御嶽海、大栄翔の両関脇を破り10勝5敗の好成績を挙げました。11月場所は小結を通り越して一気に新関脇への昇進を決めました。秋場所を振り返り、11月場所への決意を聞きました。

貴景勝関のアドバイスで右を差して寄り切れた

――秋場所お疲れさまでした。関取自身は自分の相撲内容をどう見ていますか。

 

本当にまっすぐというか、いい内容になってきたなと思っています。勝つだけでなく内容が伴ってきたと感じています。

 

――この一年を振り返って自分の中で何がどう変わってきましたか。

 

稽古の質が変わってきたと思います。テーマを決めて稽古ができているので、本当に押し負けていないと感じています。上位の人と戦っても前に攻めていましたので、上位にも通用するんだなということを感じました。それが自信になりました。去年の秋は、突き押しが中心でした。相手を起こしてから前に攻めることをテーマにやってきました。右を差していける相撲を九州場所くらいからできるようになりました。部屋の大関貴景勝関のアドバイスもあったので、かなり変わったかなと思っています。

 

――稽古場から右を差す相撲ができるようになったのですね。

 

大関と稽古をして「右を差すのがいいのではないですか」とアドバイスをもらったのがよかったです。それからやってみようと思い、取り入れました。

 

――関取はもともと右四つの相撲だったのですね。

 

そうですね。差す相撲も取っていました。そこから突き押しを磨いたことによって関取になれたと思っています。今度は幕内に上がるために、改めて相撲の幅を広げようと考えたのです。

基本は押し相撲 最後の詰めで右を差す

秋場所2日目 隆の勝(寄り切り)朝乃山 

 

――今、どういう相撲を磨いていると言ったらいいですか。

 

今、目指しているのは前に押していく押し相撲ですね。その姿勢は変わらないです。基本は押し相撲です。流れの中で相手によっては右を差していくこともあります。自然に体が動いて差したという感じの方が多いかもしれないです。最初から差しにいくという気持ちではないです。

 

――秋場所は10番勝ちました。その10番で自分から右を狙って差していった相撲はなかったのですか。

 

そうです。そういう相撲はなかったです。流れの中で右を差した相撲でしたね。土俵際では相手を捕まえて出ないと、叩かれたり逆転されたりすることが多いので、しっかりと右を差していきました。それで相手を捕まえることができました。最後の詰めで右を差すことをしっかり頭に入れておきました。本当にシンプルなことしかやっていません。

 

――シンプルなこととは、具体的に言うとどんなことですか。

 

子どものころから、ずっとやっていた頭で当たって押していくことだけを意識してやっているということです。十両に上がる前には、いろいろな部屋に出稽古に行かせていただいて、関取衆と稽古して考え方も少しずつ変えていかないと上に上がれないのかなと思うようになりました。本当に自分でこういう相撲を取るんだという意思をしっかり持っていこうと思いました。

照ノ富士関との対戦はイメージ以上の相撲ができた

秋場所10日目 隆の勝(寄り切り)照ノ富士

 

――秋場所の2日目に大関戦初勝利、朝乃山関をいい内容で破りました。あれで波に乗りましたか。

 

朝乃山関との対戦もそうですが、10日目に照ノ富士関に勝った一番も自分の中で大きかったと思っています。

 

――あの対戦は照ノ富士関が優勝争いの中にいましたから大きかったですね。自分でも納得がいく相撲でしたか。

 

イメージよりもいい相撲が取れたと思います。照ノ富士関におっつけていくか、突き放していくか迷っていたのです。しかしあの相撲はぴったりはまったというか左のおっつけが決まって、イメージしているよりうまく取れました。

 

――照ノ富士関は当然右を差して捕まえにくるから、それを左からおっつけて攻めていこうというイメージだったのですね。

 

自分がイメージしていた以上におっつけが効いて浮かすことができました。

 

――2日目に朝乃山関に勝って、その後、御嶽海関、大栄翔関と関脇に連勝しました。そういう大関、三役陣に勝ったことよりも、照ノ富士戦が印象に残っていたのですね。

 

もちろん大関戦もそうですけれども、三役に勝った相撲も印象には残っています。しかしそれを超えるくらいのイメージ以上の相撲が取れたので、照ノ富士関との対戦がいちばん印象に残っています。

三役は小さいころからの夢 意識せずいつもどおりの相撲を

――関脇になると自分より下の人とばかり当たることになりますが、三役はどんなイメージですか。

 

三役は自分が目指していたところで、小さいころからの夢でした。こんなに早く上がれるとは思いませんでした。もちろん横綱になるという夢はあります。小さいころからテレビで見ていた番付に自分の名前が載るというのはすごいことだと思います。

 

――三役になると自分より下の人と当たることになります。こうしたことへの意識はどうですか

 

あまり考え過ぎたら、体が硬くなって自分の相撲を取れなくなります。番付は下でも実力はほとんど変わらないと思っています。意識をせずにいつもどおりの相撲を取り続けるだけです。

おにぎりくんと言われることにはもう慣れた

おなじみのおにぎりスマイル

 

――実力とともに、このところ人気も上がってきて、隆の勝スマイルと言われたり、おにぎりくんと言われたりしていますね。どう思っていますか。

 

おにぎりくんと言われることにはもう慣れました。おにぎりくんは全然問題ないです。自分でもOKです。今、人気が出てきたと言われても自分としては実感はないです。まあ人気があったほうがいいです。

貴景勝関は見習うべき存在 大関に上がるという思いになる

平成30年 九州場所 千秋楽 貴景勝(右)の優勝パレードで旗手を務める

 

――貴乃花部屋の力士たちが移籍してきました。関取にとっては大きかったでしょうね。

 

本当に大きいです。稽古相手も充実するようになりました。部屋が合併してよかったと思っています。

 

――右を差す相撲のときにも貴景勝関の話がありましたが、貴景勝関は関取から見たら年下ですがどういう存在ですか。

 

見習うべき存在というか、すごい人です。考え方も私生活も自分に厳しくてストイックなので見習う部分が多いですね。考え方も含めて見習うべき存在です。

 

――平成30年の九州場所から貴乃花部屋の力士たちが合流してきましたが、そこから関取自身の相撲がぐっと上がってきました。

 

そうですね。貴景勝関は私にとってのいい稽古相手で、貴景勝関にとっても私はいい稽古相手だったと思います。

 

――近くで貴景勝関を見ていることによって、自分も頑張って大関に上がるんだという思いも湧いてくるのではないですか。

 

そうですね。もう近い番付に上がったので、自然と大関に上がるんだという思いになりますね。

 

――合併してから貴景勝関も大関に上がったのですから、これはいいお手本になっていますね。自分も続きたいという思いになります。

 

もちろんそう思っています。

 

――改めて貴景勝関はどういう存在ですか。関取にとって。

 

本当にいい稽古相手ですし、見習うべきことが多い存在だと改めて思っています。年も近いですが年下という感じはしないですね。

 

――新関脇で臨む11月場所ですが、改めて抱負を聞かせてください。

 

これから稽古を重ねて、新関脇でもいい相撲を取って2桁勝てるように頑張っていきます。

 

――まずは大関を目指していくということですね。

 

はい。そうです。大関を目指して頑張ります。

この記事を書いた人

北出 幸一

北出 幸一

相撲雑誌「NHK G-Media大相撲中継」編集長。元NHK記者。昭和の時代に横綱千代の富士、北勝海、大乃国らを取材し、NHKを定年退職後に相撲雑誌編集長となる。

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