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風を、波を操り勝利を目指す!『セーリング』

2020-12-11 午後 04:45

かつては輸送や連絡などの手段として用いられてきた「ヨット」 。今ではマリンレジャーとして親しまれていますが、ヨットに乗って海上で勝敗を競う「セーリング」はオリンピックの正式種目。
風と波を読み、自然と共闘して勝利を目指すセーリングは見どころが盛りだくさん!

「1レース40分×10~12レース」の過酷な競技

帆をはり風の力で海上を走る「ヨット」は、もともとオランダで生まれた船で、運搬などの実用目的で使われていました。一方、1660年にはイギリス国王とヨーク公が初めてヨットレースを行ったともいわれており、オリンピックでも1900年のパリ大会から種目入りするなど、競技としても歴史があります。

 

 

セーリングの舞台はもちろん海。海上のコースに設置されたマーク(浮標)を決められた順番に回っていき、ゴール順位を競います。ひとつの大会で10〜12レース行い、その総合順位で勝敗が決まる仕組みです。ちなみに、1回のレースでかかる時間は40分程度と長丁場。それを10レース以上と考えると…かなりハードですよね。

 

 

そう、セーリングは想像以上に過酷な競技。試合中も互いがぶつかるギリギリで攻防を繰り返し、選手同士が激しくしのぎを削ります。このスリリングな展開もファンにとっては魅力のひとつなんですよ。

 

セーリングの種目は使用するヨットの種類や人数によって分けられ、オリンピックでは男女別・混合のクラスがあり、合わせて以下の10種目が実施される予定です。

 

RS:X級(男子/女子)
レーザー級(男子)
レーザーラジアル級(女子)
フィン級(男子)
470級(男子/女子)
49er級(男子)
49erFX級(女子)
フォイリングナクラ17級(混合)

 

 

その中でも日本が得意としているのが「2人乗り_470級(男子・女子)」のクラスです。なぜ470級と呼ばれているかというと、操るヨットの全長が470センチだから。他の種目で使われるヨットよりも比較的小型なので、小柄な日本人でも扱いやすく、過去のオリンピックで日本が唯一メダルをとったことがあるクラスなんです。

目指せ金メダル!470級で注目の凸凹ペア

 

この470級で今注目を集めているのが、吉田愛選手と吉岡美帆選手のペアです。年齢差10歳、身長差17センチの2人についたあだ名は“凸凹ペア”。2017年のワールドカップでは銀メダル、2018年の世界選手権では日本女子初となる金メダルを獲得し、世界ランキング1位にまで上り詰めた日本最強の2人組なのです!

 

2017年のワールドカップ。このとき吉田選手は、4か月前に出産したばかりだった。

 

ここからは、来年の東京オリンピックに向けて奮闘する2人の強さの秘訣を紹介しつつ、セーリングの魅力に迫ります。

ペア同士の巧みな連携に注目!

セーリングの2人乗りのクラスでの見どころのひとつが、“ペア同士の巧みな連携”。

 


吉田・吉岡ペアの場合、吉田選手が後ろで舵取りを行う「スキッパー」。刻一刻と変わる風を読みながら、舵や帆を巧みに操り、ヨットの進路を決めるいわば船長役です。吉田選手は30年以上もの経験を誇るベテラン選手!豊富な知識と経験で波や風を味方につけます。

 

 

そんな吉田選手の指示を聞きながら帆を操作し、ヨットの傾きを調整するのが「クルー」の吉岡選手。コースを回るには大胆な方向転換も必要で、いかに無駄なく曲がれるかも腕の見せどころ。船体が右に傾けば、クルーは船外の左側に飛び出すように自らの体を投げ出し、位置や向きを変えながらバランスを調整します。吉岡選手は177センチと長身の選手。恵まれた体格をフルに活かします。

 

全身を使って、船体のバランスを取るクルー役の吉岡選手

一児の母!ママさんアスリート 吉田愛

 

世界と戦う吉田選手は一児の母。保育園に子供を預けてトレーニングに励みます。出産で持久力が40%ほど落ちてしまったため、持久力をあげていくのが目標だと話します。

 

吉田選手は2008年北京オリンピックに世界ランキング1位で臨みましたが、14位に終わり、2012年のロンドンオリンピックでも14位と惨敗でした。

 

オリンピックの悔しさを晴らすために、吉田選手は日々セーリングと向き合っています。

心の弱さを乗り越えろ 吉岡美帆

 

吉岡選手が今課題としているのが追い込まれた時のメンタルの弱さ。2016年のリオオリンピックに初出場しましたが、落水。その後も思うようにレースができず5位に終わりました。

 

もともと無名だった吉岡選手ですが、体格の良さを吉田選手に見込まれてペアを組むことに。焦ったり緊張してミスを連発してしまう、という吉岡選手を吉田選手が優しくフォロー。

 

心の弱さを自分の強さで乗り越えるため、早朝にジョギングをして心を整えたり、大学生を対象にした講演会で話すなど自分にできることから始めています。

凸凹ペアの強みを生かす

凸凹ペアと言われる彼女たち。年齢身長だけではなく、ペアを引っ張るベテランの吉田選手は、完璧主義の開けっぴろげな性格ですが、一方の吉岡選手は無口で控えめな性格と、内面も正反対なのです。

 

そんな性格も経歴も全く異なる2人ですが、それぞれの強みが功を奏してペアの相性の良さにつながったのですね。

 

セーリングの動力源は「風」。競技用のヨットも当然エンジンなどついていません。海上で風をあますことなくとらえヨットの推進力に変えるには、吉田・吉岡ペアのように2人の阿吽の呼吸が大切なのです! 

風の動きを読む、自然との戦いに注目!

自然の海でレースが行われるセーリングでは、気候によって試合の展開が変わるのも見どころ。風の強さや波の高さ、潮の流れなどを正確に読み取り自然と共闘していかなくてはいけません。その自然を味方につけるようなセッティングやテクニックが勝利を分けるカギとなるのです。

 

その中でも、吉田・吉岡ペアが得意とする条件が「強風の海」。

 

強風でバランスを崩し、沈んでしまうヨットも…

 

強風にあおられて他の選手たちのヨットが次々と沈む中でも、吉田選手の圧倒的な経験値と吉田選手の恵まれた体格を活かした連携で平然とヨットを乗りこなします。

 

 

その強みが発揮されたのが、2016年のリオオリンピックでのレース。スタート直後に出遅れた吉田・吉岡ペアですが、吉田選手がいち早く風の位置をつかんでトップ集団と反対方向に舵を切り、うまく強風に乗って10チーム中9位から2位にまで順位を押し上げました!2人は同大会で5位入賞を果たしています。

 

このように、セーリングは他の船との位置関係だけでなく、風や波の変化やヨットのコンディションなどさまざまな条件を計算し柔軟に戦術を組み立てていく必要があります。自然に対抗するための強靭な肉体、ヨットを操るテクニック、さらに頭脳戦の側面も持ち合わせているため、さまざまな視点から観戦を楽しむことができるのです。

吉田・吉岡ペアが東京オリンピックの日本代表に!

 

今年8月、来年の東京オリンピックの試合会場となる江の島で世界選手権が開催されました。オリンピック代表の座をかけたこのレースで吉田・吉岡ペアは2位に入賞。こうして、念願の東京オリンピックへの出場権を獲得した2人。

 


吉岡選手:「いろんなことを学んで成長させてくれたので、ありがとうという気持ちです」

 

吉田選手:「本当に落ち着いてプレーできるようになってきてるので、成長したねっていう風に言いたいです。オリンピックに向けて準備の時間ができたので、しっかりこの銀メダルを金メダルの変えられるようにします」

 

女子470級以外のクラスでもオリンピック代表が決定。自然の中での迫力あるレースに加えて、全部で10クラスあるセーリングはヨットの種類によっても見どころが変わってくるので、ぜひその違いにも注目してみてくださいね。

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