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特集 照ノ富士 秋場所で上位に挑戦「やれることをやっていく」

相撲 2020年9月9日(水) 午後3:40

ケガと病気で大関から序二段まで番付を下げながら、7月場所で復活優勝した照ノ富士は、秋場所は16枚番付を上げて東前頭筆頭となりました。番付発表の日、リモート会見で照ノ富士は「予想よりかなり上がっちゃったなという感じですけれど、その分責任があるので頑張りたいと思っています」と話し、「責任とは」と聞かれると、「このくらいやってくれるんじゃないかということで上げてくれたんだと思いますので、頑張らないと、と思っています」と話しました。照ノ富士に電話でインタビューしました。

7月場所の優勝は努力を神様が見ていてくれた

千秋楽に御嶽海を寄り切って優勝を決めた(7月場所千秋楽)

 

――7月場所の前に話を聞いたときには「まだ幕内上位の力には戻っていない。早く幕内上位に定着して、そこで戦えるようにしたい」と関取は言っていましたが、優勝してしまいました。今はどうですか。

 

まだ上位と戦える体ではないかな。ちょっとずつアップしていこうと思っています。

 

――優勝できたいちばんの要因は何でしょうか。

 

波に乗ったのと、ひとつの形を決めてやったことです。

 

――ひとつの形とは。

 

先に左上手を浅く取ることです。

 

ーー前回の優勝(平成27年夏場所)はイケイケで優勝したと言っていましたが、あのときの相撲とは全然違うのでしょうか。

 

今は体と相談してやっています。無理はしなかったですが、90パーセントは形になれたんじゃないですか。ただ、まだ下半身が動かない分、上半身を鍛えてやったという感じです。これからは下半身がもっと動くように稽古しなくては。みんなが思っているほど良くはないというかな。

 

――改めて優勝できた理由は何ですか。

 

今の自分と向き合って、できることを誰より精いっぱいやろうと思っていました。それが優勝につながったんじゃないでしょうか。努力しているから神様も見ていてくれたのではないかという感じです。人の三倍は汗を流していましたから。

朝乃山は大関の役目を果たした 正代は以前とは別人の強さ

照ノ富士(寄り切り)朝乃山(7月場所13日目)

 

――ところで、大関の朝乃山関はどう見ていますか。

 

朝乃山関が近畿大学2年生のときに、私は関取で、大学に行って胸を出したことがあるんです。そのときからやる気のあるやつだなと思っていました。

 

――そのころの朝乃山関は、学生相撲ではあまり活躍していなかったんじゃないでしょうか。

 

まだ活躍はしていなかったんですが、ことし1月に亡くなった近畿大学の伊東監督が、「大事な子なんでケガさせないでください」って言っていました。先生と「この子は強くなるな」と話をしました。

 

――胸を出しても、見ていても分かったんですね。

 

そうですね。入門して上がっていくころは、私が落ちていくころだったので、当たってはいないんだけれど、コロナ禍になる前から稽古はしていました。

 

――7月場所の、幕内での対戦はどうでした。(13日目照ノ富士が寄り切りで勝ち)

 

いや、そんなどうでしたと聞かれても、強かった弱かったとは言えないですよね(笑)。

最初に会ったときはまだ大学二年生で、今は大関ですから。7月場所では、その大関の役目を立派に果たしていますから。

 

――14日目に敗れた正代についてはどうですか。ここにきて変わったと言われますが。

 

全然、別人ですよ。

 

――何が変わったのでしょうか。

 

圧力から体から。それと、前とはやる気が全然違いますね。対戦したとき、手首を脇に入れられただけで、あそこまで体を持ち上げられるとは思わなかった。力も全然前とは違う。これだけ変わっているのはすごいなと思う。

三役に戻って安定した成績を 私は周りに恵まれている

部屋の看板の前で秋場所への決意を新たに(8月31日 東京江東区伊勢ヶ濱部屋)

 

――改めて秋場所の目標・抱負をお願いします。

 

結果はどうであれ、一日一番で全部ぶつけます。三役には戻って、今度そこで安定した成績を残していきたい。安定感を出したいとしか思っていないですね。いつもそれを目指してやっています。やれることをやっていくことで、結果は安定してくると思うんです。自分に満足できる稽古と準備ができれば、場所で土俵に上がっても怖くない。準備が大事です。

 

――大酒は飲まないようにしているんですよね。(笑)。

 

酒をやめて1年半です。でも実は千秋楽に部屋に帰ってきたら、翠富士と錦富士(部屋の弟弟子)が「ドンペリニヨン買ってきたんで」って言うんです。「それなら、この一杯だけは」と。

 

――みんな関取が酒をずっと飲まないで、稽古に取り組んできていることを知っているからですね。

 

彼らは、私のいいときも悪いときも、みんな知っていますからね。私は周りに恵まれています。

この記事を書いた人

古橋 明尊

古橋 明尊

元NHK記者。大阪放送局スポーツ専任部長、報道局スポーツニュース部長等を務める。現在は相撲専門雑誌「NHK G-Media大相撲中継」の編集担当。曙、若貴の横綱時代に大相撲取材。

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