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特集 パフォーマンスが上がる!!試合前の"勝負メシ"

その他のスポーツ 2020年5月13日(水) 午後3:38

子供の習い事や部活での大事な試合。精一杯がんばってもらうためにも、直前に食べるごはんはとっても大事なんです!そこで今回、競技の特性に合わせて必要な栄養素を分類。試合の朝、もしくは前日に食べてほしい“試合メシ”のレシピを、数多くのアスリートの栄養サポートをしているスポーツ栄養士の山田聡子さんに提案していただきます。もちろん、大人が食べても効果抜群!

糖質が勝負のカギ!?試合前の食事について

 

試合の数日前から糖質を身体に貯める「グリコーゲンローディング(別名:カーボローディング)」を実施すると、試合本番で力を発揮しやすくなります。ポイントは次の2つ。

 

① ごはん、パン、めん類、果物を多めに。食事全体の60~70%ほどにしましょう。
② おかずはその分ややひかえめに。

 

試合の前日の食事ではグリコーゲンローディングに加えて、消化不良を起こす可能性があるもの(唐揚げ、焼肉、ステーキなど脂っこいメニュー、刺身や生卵などの生もの、高級な栄養ドリンクなど普段口にしないもの)は避けたほうが無難です。脂質が少なく、さっぱりとしたメニュー(揚げ物以外の和食のメニュー、和風パスタなど)にしましょう。

 

試合当日は、試合が始まるまでの消化時間を意識して糖質が多い食事や間食を摂りましょう。普通の食事なら試合開始3~4時間前、それよりも開始時間までが短い場合はおにぎり、カステラ、アンパンなどを間食にして。また、大事な試合の時に一番良い状態になるには試合前に「何を・いつ・どのくらい口にしたらいいのか」を事前に何度か試し、自分の身体にあった食事を見つけて本番に臨むと良いでしょう。

競技で分かれる3つのエネルギータイプ

アスリートは消費エネルギー(使うエネルギー)が多いため、体格や練習量によって多少は異なりますが摂るべき栄養、食事の量が多いのが特徴です。競技を分類し、どのようなエネルギーを使っているかによって、摂るべき栄養や食事のポイントを考慮するといいでしょう。

 

少し難しい話になりますが、エネルギーの系統は「有酸素系」と「無酸素系」に分けられます。

 

有酸素系は、糖質と脂質が燃料になり、それを分解する際の力がパワーとして発揮されます。

 

無酸素系は、
① 非乳酸性
② 乳酸性
に分けられ、短距離走で例えれば、①の非乳酸性はスタートダッシュのような瞬間で爆発的なパワーを発揮するためのエネルギー、②の乳酸性は1分間程度の短時間を全力で走り抜くようなパワーを発揮するためのエネルギーです。

 

具体的にそれぞれのエネルギーがどんなパワーになるかというと、

 

無酸素系(非乳酸性)のハイパワー(瞬発力)

 

無酸素系(乳酸性・非乳酸性)と有酸素系が組み合わさったのがミドルパワー(瞬発力+持久力)

有酸素系のローパワー(持久力)

 

となります。

 

試合で本領を発揮するためにも、子供もしくは自分がしている競技に必要なパワーがどのタイプかを考え、見合った栄養を摂りましょう。

競技別!パワーを発揮する“勝負メシ”レシピ6選

このように試合前のごはんはとても大事で、作る際には競技に必要なエネルギーを発揮するための栄養素を考慮することが重要なポイントです。ここからは、そんなポイントをおさえた、ご家庭で簡単に作れる“勝負メシ”のレシピを6つご紹介します。

持久系スポーツ(ローパワー系スポーツ)

 

▼ローパワー系スポーツの代表的な競技
陸上競技の長距離走、マラソン、トライアスロン、自転車競技のロードレースなど

 

【ローパワー系のアスリートの栄養ポイント】
有酸素系エネルギーを供給するための糖質、糖質の代謝をアシストするビタミンB群、筋疲労の回復や貧血の予防のための十分なたんぱく質の確保。ただし試合前日、当日はそれほどたんぱく質摂取を意識せず、糖質をメインとした消化の良いメニューがおすすめです。

 

【試合前日、当日のおすすめメニュー】
試合前日の夕食または当日:ツナと豆苗の醤油ガーリックパスタ

 

 

ポイント:パスタ料理にすることでしっかりと糖質補給ができます。豆苗には免疫力をサポートするビタミンA と、糖質をスムーズにエネルギーに変えてくれるビタミンB1が豊富。

 

材料(2人分)
スパゲッティ(乾麺) 200g
ツナ 1缶(70g)
豆苗 1パック
ガーリックパウダー 適量
しょうゆ 大さじ1.5(27g)
バター 好みで
粗挽き黒こしょう 適量

 

栄養価(1人分)
エネルギー 531Kcal
炭水化物 76.0g
たんぱく質 21.8g
脂質 13.6g

 

作り方

 

①スパゲッティをゆでる

②フライパンにツナを缶の汁ごと入れる。ツナの缶に油があるようならばそのままでいいが、油がない場合は少しオリーブオイルかサラダ油を足す。弱火で炒める。

③豆苗を食べやすい長さに切り、ツナに加えて中火で炒める。

④ゆでたスパゲッティを加えて中火で炒め合わせる。ガーリックパウダーとしょうゆを加えて混ぜ合わせる。最後にお好みでバターを加えると風味がアップする。

⑤器に盛り、粗挽き黒こしょうをかける。できあがり。

 

試合当日の朝食:こんがり焼きおにぎり

 

 

ポイント:焼きおにぎりの中まで味が染みこんでいるので、ローパワー系パワーのエネルギー源となるごはん(お米)をおかずがなくてもしっかりと食べることができます。

 

材料(1人分/おにぎり2個分)
ごはん 200g
めんつゆ(3倍濃縮) 小さじ2(12g)
みりん 小さじ1(6g)
ごま油 小さじ1弱(3g)

 

栄養価(1人分)
エネルギー 389Kcal
炭水化物 79.9g
たんぱく質 5.5g
脂質 3.6g

 

作り方

 

①ごはんにめんつゆとみりんを加え、よく混ぜる。少し置くと調味料がごはんにしみこみ、まとまりやすい。

②ごはんをおにぎりの形ににぎる。表面にハケなどを使ってごま油を塗る。

③フライパンを熱する。②を入れ、ふたをして、弱火で片面7分ずつ加熱して、できあがり。

筋持久系スポーツ(ミドルパワー系スポーツ)

 

▼ミドルパワー系の代表的な競技
陸上競技の中距離走、レスリング、サッカー、バスケットボールなど。

 

【ミドルパワー系のアスリートの栄養ポイント】
ミドルパワーは、非乳酸性と乳酸性(短時間で爆発的なパワーと、1分程度全力で出すパワー)、または、乳酸性と有酸素系(1分程度全力で出すパワーと、持久的な運動)の組み合わせの競技です。

 

筋力をある程度の長さの時間必要とするため、筋力のエネルギー源である「筋グリコーゲン」の回復を考えた栄養素(糖質、ビタミンB群、たんぱく質など)を確保することを日常も試合前も意識した食事がおすすめです。

 

【試合前日、当日のおすすめメニュー】
試合前日の夕食:じゃがいもと豚肉のカレー炒め

 

 

ポイント:じゃがいもはごはんやめん類と並んで、エネルギー源となる糖質が豊富な食品。豚肉に豊富なビタミンB1が糖質をスムーズにエネルギーへ変えるサポートをしてくれます。栄養素から見るとじゃがいもと豚肉は黄金コンビなのです。

 

材料(2人分)
じゃがいも 3個(400g)
豚もも薄切り肉 200g
酒 小さじ1(5g)
サラダ油 適量
カレールー 1かけ(20g)
しょうゆ 大さじ1(18g)

 

栄養価(1人分)
エネルギー 455Kcal
炭水化物 40.0g
たんぱく質 24.4g
脂質 20.7g

 

作り方

 

①豚肉に酒を混ぜる。じゃがいもは皮をむき、乱切りにして電子レンジで5分前後加熱する。カレールーは細かく刻む。

②鍋にサラダ油を入れて熱し、豚肉を炒める。色が変わったらじゃがいもを加えてさっと炒める。水を鍋に1cmほどの深さまで入れ、ふたをしてじゃがいもが柔らかくなるまで煮る。途中で水がなくなりそうなら少し足す。

③じゃがいもが柔らかくなり、もしも水気が多いようならば蓋をあけて水気を飛ばす。カレールーが全体に混ざるように加える。しょうゆも加える。できあがり。

 

試合当日の朝食:餅入りみぞれうどん

 

 

ポイント:うどんは多くのアスリートの試合当日に好まれる糖質豊富メニュー。さらに餅を加えることで糖質をプラス!みぞれ(大根おろし)が消化を促してくれます。

 

材料(2人分)
冷凍うどん 2玉(400g)
大根 10cmぐらい
めんつゆ(3倍濃縮) 150ml
餅 2切 (100g)

 

栄養価(1人分)
エネルギー 687Kcal
炭水化物 145.4g
たんぱく質 15.3g
脂質 1.6g

 

作り方

 

①大根は皮をむき、すりおろしてざるに入れ、かるく水気を切る。餅はフライパンまたはオーブントースターでこんがり焼く。

②つゆを作る。鍋にめんつゆと水500mlを入れて強火にかけ、煮立ったら弱火にして5分ほど煮る。

③別の鍋に湯を沸かしてうどんを入れ、袋の表示時間通りにゆでる。

④うどんをざるに上げて水気をきり、器に入れる。つゆをかけて大根おろしと餅をのせて、できあがり。

瞬発系スポーツ(ハイパワー系スポーツ)

 

▼ハイパワー系の代表的な競技
筋肉が豊富で身体が大きいことが有利な競技。陸上競技の短距離走、投てき、野球の投手、サッカーのゴールキーパーなど。

 

【ハイパワー系のアスリートの栄養ポイント】
主に無酸素系の非乳酸性(短時間で爆発的なパワー)を必要とするため、大きくて強い身体を保つ、または造るための栄養バランスのとれた食事量の確保、筋力アップ・筋力キープのための十分なたんぱく質の摂取を日頃から気を付けましょう。筋肉の分解を起こさないために十分な糖質の摂取も必要。ただし試合前日、当日はそれほどたんぱく質摂取を意識せず糖質をメインとした消化の良いメニューがおすすめです。

 

【試合前日、当日のおすすめメニュー】
試合前日の夕食:牛肉とトマト入りふわ玉丼

 

 

ポイント:丼メニューはごはん(お米)をたっぷり食べられるのでパワーをつけたい時におすすめ。牛肉だけだとやや重たくなるところ、トマトを加えることでサッパリとした酸味とふわふわの卵の味で食べやすく、ごはんが進む一品です。

 

材料(2人分)
牛もも薄切り肉 200g
酒 小さじ1(5g)
トマト 大1個(200g)
卵 2個(100g)
塩 ひとつまみ
サラダ油 適量
しょうゆ 大さじ2(36g)
とんかつソース 大さじ1(18g)
ごはん 適量

 

栄養価(1人分)
(ごはんを200gとして)
エネルギー 654Kcal
炭水化物 83.8g
たんぱく質33.0g
脂質 17.7g

 

作り方

 

①牛肉に酒を混ぜる。トマトは乱切りにする。卵はほぐし、塩を加える。

②フライパンにサラダ油を入れて熱し、卵がふんわりとするまで炒め、皿にとる。

③フライパンで牛肉を炒める。色が変わったらトマトも加えてさっと炒める。しょうゆととんかつソースを加えて調味する。卵を加えてさっと混ぜる。

④器にごはんを盛り、具をのせてできあがり。

 

試合当日の朝食:バナナフレンチトースト

 

 

ポイント:食パンだけでなく糖質の豊富なバナナを加えていることでさらにエネルギー源を補給。バナナの甘味と風味のおかげで砂糖やハチミツなどの甘味料を控えめにできてヘルシー。

 

材料(1人分)
食パン(6枚切り) 2枚(120g)
バナナ 1本(90g)
卵 1個(50g)
牛乳 60ml
塩 ひとつまみ
サラダ油 適量
砂糖 大さじ1/2(7g)
はちみつ お好みで

 

栄養価(1人分)
エネルギー 562Kcal
炭水化物 86.0g
たんぱく質 19.9g
脂質 15.7g

 

作り方

 

①食パンは食べやすい大きさに切る。バナナは半分をスライス、半分はフォークの背などを使ってつぶす。

②卵をほぐし、牛乳、つぶしたバナナ、塩を加えてよく混ぜる。そこに切った食パンとスライスしたバナナを加えて絡ませる。

③フライパンにサラダ油を入れて熱する。②を入れ、ふたをして、弱火で5分ほど加熱する。

④ふたを開け、砂糖を全体にふり、中火にして食パンの表面がかりっとするまで焼く。皿に盛って出来上がり。甘味がもっと欲しければお好みではちみつを加えて。

 

ただたくさん栄養を摂ればいいというわけではなく、その人、競技にあった栄養を摂ることで出せるパワーも大きく変わります。今回ご紹介したレシピは、ご自宅にある食材で簡単に作れるので、大事な試合の前にぜひ試してみてくださいね!

この記事を書いた人

山田 聡子

山田 聡子

公認スポーツ栄養士、管理栄養士、健康運動指導士。 2003~07年、大手食品メーカーに勤務し、柔道・男子の強化選手やバレーボール男子の日本代表選手、ラグビートップリーグ所属チームなどの栄養管理をサポート。 現在はフリーランスとして、アスリートの栄養サポートやスポーツ栄養の記事執筆などを中心に活動。

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