ストーリーサッカー

佐々木則夫さんに直撃!女子プロサッカー「WEリーグ」って何?

2020-07-17 午後 03:23

6月3日、JFA(日本サッカー協会)が、女子プロサッカーリーグ「WEリーグ(Women Empowerment League)」を2021年9月に新設することを発表しました。
 
国内では、1989年創設の「なでしこリーグ」が長らく女子のトップリーグとして君臨。多くの日本代表選手を輩出してきました。「WEリーグ」ができてからも、既存のアマチュアリーグとして存続されるそうです。
 
そんななか、なぜ今、プロリーグが必要なのか?そして、どんなリーグになるのか?
 
2011年にドイツで行われたFIFA女子ワールドカップで、なでしこジャパンを優勝に導き、現在は女子新リーグ設立準備室長を務める佐々木則夫さんにお話を聞きました!

なでしこリーグと何がちがうの!?

なでしこリーグの名門 日テレ・ベレーザ(緑)と強豪 INAC神戸

 

――なでしこリーグがあるのに、どうして新たなリーグを創設するんですか?

 

佐々木則夫さん(以下、佐々木):なでしこリーグは、アマチュアリーグとして30年来続く伝統あるリーグで、日本女子サッカーの発展に多大な貢献を果たしてきました。その継続性から、今後も存続していくべきリーグだと考えています。

 

ただアマチュアなので、ほとんどの選手たちは別に仕事をしながらサッカーの練習や試合をこなしているような状況。

 

練習環境も男子のプロクラブのように整備されているわけではありません。クラブとしての環境がきちんと整っているのは、ごくわずかな強豪クラブだけ。そうした強豪クラブの選手たちを見ていると、継続してコンディションがいい。

 

こうしたコンディションを維持できるクラブがもっと増えてくれば、日本の女子サッカーもスケールアップしていけるはずなんです。

 

個人的には2011年のワールドカップ優勝後に、なでしこリーグが興行型のプロリーグへと移行していくのではないかとも考えていました。当時の注目度や人気度からいえば、スポンサーも手を挙げやすかったはずですしね。ただ、残念ながら当時は女子サッカーはプロ化に至りませんでした。正直、プロ化は女子サッカーの発展のために、やり残したことのひとつだったんです。

 

2011年、W杯で初優勝。日本中が歓喜に沸き、“なでしこ”に注目が集まった

 

――女子サッカーのプロ化によって、どんなメリットがあるんですか?

 

佐々木:選手のコンディションアップはもちろんですが、優秀な若手選手をトップリーグに吸い上げやすくなります。僕が監督をしていた頃から比べると、今のU-15世代はとてもレベルが高い。たとえば、コーチング(選手同士の声のかけ合い)なんかを見ていると、10年前よりもサッカーへの理解度が格段に向上している。

 

このように、次代を担う才能が確実に育ってきているものの、15歳以下の選手たちがプレーしたり練習できる環境は整っていないのが現状です。女子サッカーを専門的に学べる地域クラブなども多くはなく、中学年代の女子選手たちがサッカーに打ち込めるクラブもまだまだ。

 

そこで、プロクラブにU-15世代の育成部門を設ければ、若い世代がプレーできる環境を整備できます。実際にWEリーグでは、参加クラブにU-15世代の育成部門の設置を義務づけています。プロ化によって、小学生や中学生年代の女子選手たちの育成を強化し、さらにサッカーを目指す女子を増やすことにもつながるはずだと信じています。

 

 

――2023年ワールドカップの日本招致を断念されましたが、WEリーグに影響はあると思いますか?

 

佐々木:東京オリンピックに続いて、2023年のワールドカップも日本で開催ということになれば、女子サッカーへの注目度が高まり、WEリーグを盛り上げる要因になったかもしれません。ただ、今回断念したのには理由があるんです。

 

今回は招致準備室としても、非常にいい働きのもとに準備を進めてくれました。開催が決定したオーストラリア&ニュージーランドとは、日本は評価的にもだいたい同等に認められている状況ではあったと思っています。そして構図としては、オーストラリアについては同じアジアの枠の中で競争する形になっていました。(※オーストラリアはアジア、ニュージランドはオセアニアに分けられる)

 

そんななか、オリンピックが1年延期されることになりました。日本でワールドカップが行われるとなると、同じメンバーで戦うオリンピックとワールドカップ、トップの女子の試合が短い間に同じ場所で行われることになります。その点で日本よりもオーストラリア&ニュージーランドに分があるのでは、ということが我々の調査でわかってきました。

 

今回は世界の情勢を見据えて招致を断念しましたが、まだ東京オリンピックがあります。しっかりと来年のオリンピックで女子サッカーを躍進させる。そして、そのレガシーを国内の女子プロサッカーへの注目につなげていきたいと考えています。こうして日本の女子サッカーが発展すれば、たとえばワールドカップも2大会後などにもう一度招致に動く。そんないい流れを生み出していきたいと思います」

 

2023年のFIFA女子W杯はオーストラリアとニュージランドの共催になることが決定した

リーグ創設時は10チーム以上になる?

6月3日、オンライン記者会見で新リーグ発足を発表

 

――公式会見のときは、創設時は「6~10チーム」と発表されていましたが、実際に参加するクラブはどのぐらいになりそうですか?

 

佐々木:まだ、具体的な数字は明かせませんが、仮申請の段階で手を挙げてくれたクラブは十数チームありました(※取材は6月下旬に実施)。なでしこリーグのクラブも含まれていますが、なかには、地域でスポンサードしてもらうような、まったく新しいチームもあります。いずれのチームも高い関心をもってくれていますから、もしかしたら想定よりも多くなる可能性もあります。逆に、当初の発表のように6チームほどの小規模なリーグになるかもしれません。

 

ただ、たとえどんな規模になろうとも、2021年9月の開幕は必ず実現します。新型コロナの影響なども考えられますが、むしろこういった大変な時期だからこそ2021年に開幕する意味があると考えています。大変ですけどね(笑)。

スケジュールは秋春制! Jリーグとの共存は?

 

――9月開幕ということは、秋春制のスケジュールになりますか?

 

佐々木:その通りです。基本的には秋春制で、週末開催になります。Jリーグと日程がかぶり、興行的なライバルになる可能性もあります。

 

ただ、そこはJリーグともうまく連携してスケジュールを組んでいければと考えています。たとえば、東京をホームタウンにするJリーグのチームがアウェイで遠征中に、同じく東京をホームタウンにするWEリーグのチームがホームで試合をする。そうすれば、その地域住民は、常にホームチームのゲームを観戦することができますよね。よりサッカーが地域に浸透するキッカケにもなりえると考えています。

 

――WEリーグは地域に根差したクラブ運営を目指している?

 

佐々木:当然です。もちろんチーム名には、必ず地域名を入れるようにしますし、できることなら女子チーム専用のスタジアム建設も狙っています。5000~6000人規模の小さなスタジアムでもいいんです。

 

こうしたスタジアムができると、サッカーを目指す若い世代も利用したりして、日本サッカーの環境が大きく改善するはずです。そうなれば、プロサッカー選手を目指す若者たちがよりよい環境で成長できる。男子にとっても女子にとってもメリットが大きいし、地域を盛り上げるキッカケにもなる。WEリーグが、そのための起爆剤になれるようリーグを盛り上げていきたいですね。

役職員の女性率は50%以上!女性の社会進出を後押しするリーグへ

代表監督は女性になったが、2020年シーズン・なでしこリーグ1部の監督は全員男性(写真はサッカー女子代表・高倉麻子監督)

 

――今回の発表では女性の活躍を強く打ち出しています。いったいどんな思いがあるのでしょうか?

 

佐々木:WEリーグは、『女子サッカー・スポーツを通じて、夢や生き方の多様性にあふれ、一人ひとりが輝く社会の実現・発展に貢献する』という理念をもとにしています。なかでも、女性の社会進出を象徴できるようなリーグにしていきたい。

 

実は僕、内閣府の男女共同参画会議の議員でもあるんです。そうした経緯もあって、ずっと女性の社会進出について何ができるのかを考えてきました。そこで、WEリーグでは選手だけではなく、クラブのマネージメントなどでも女性に活躍してもらいたいんですよ。監督も選手も経営陣も女性というクラブが理想的です。

 

この理念に賛同してくれる企業も多いので、WEリーグが社会全体を巻き込んで女性の活躍を後押しできるように一緒に成長していきたい。そのためには、Jリーグの100年構想に負けないくらい末永く続いていくリーグにしなければならないと使命感を強く感じています。

 

ウィズコロナの時代へ突入し、社会も大きな変革を求められている。そんな時代にWEリーグが、女子サッカー発展の礎となり、さらに広く女性活躍の場となれるよう、強い信念をもって取り組んでいきます。

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