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オリパラ延期 山口香 JOC理事は何故声を上げたか

2020-04-03 午前 09:00

新型コロナウイルス感染拡大の影響で、オリンピック・パラリンピックの1年程度延期という史上初の決定がなされてから1週間余り。未だ感染拡大の終わりは見えず課題は山積です。

 

3月29日放送のサンデースポーツ2020では、JOC理事の山口香さんをゲストに招きました。山口さんは延期が決定される以前から、いち早く「延期」の声をあげてきました。その真意はどこにあったのか。そして1年後に向けてどのようにアスリートたちを支えていくのか聞きました。

いち早く声を上げた真意は

山口香さんは元柔道の世界チャンピオン。競技団体を統括するJOC日本オリンピック委員会で理事を務めています。「個人としての考え」として発した延期発言の真意を聞きました。


*****

――山口さんはIOCをはじめ多くの大会関係者たちが「東京大会は予定どおり実施」と発言していたとき、いち早く延期が望ましいと発言しました。まずはその真意を教えてください。

 

山口香さん

 

山口香さん
私の中では単純な話といいますか。世界の状況がどんどんニュースで流され、普通の生活もままならない中で選手たちがトレーニングできているのだろうか。本当に東京に数か月後に来ることができるだろうかと考えたときに、なかなか難しいだろうなと思いました。私も組織の人間ですから「なぜ個人で勝手に(発言するんだ)」というご意見も重々承知しています。ただ逆に言えば組織としてはですね、招致決定から7年、非常に長い時間をかけて積み上げてきた苦労、関係者の人たちの思いを背負っています。なので、現実を見ながらも、なかなか(延期と)言い出せないという気持ちもよく分かるんです。ですから組織としてというよりは、私個人として発言をすると。どちらが良いか悪いかということではなくて、正直な思いを出したという事です。

 

――延期の期間について具体的な日程も出始めました。しかしこの「1年程度」という期間についてはいろんな意見があると思います。山口さんはどのように受けとめていますか。

 

山口さん
私はですね、延期の期間については最初に発言したときも明言しませんでした。というのは、延期の期間はいろいろな情報を持っている人たちが検討して決めるべきだと思っていました。それはコロナウイルスのことも含めてです。1年程度延期と決まって、「宙ぶらりん」の状態だった選手たち、やるのかやらないのか、中止なのかという不安を持っていた選手たちに、明確なメッセージを伝えられたということについてはよかったと思います。

JOCに求められるリーダーシップ

――大会開催のためには、新型コロナウイルスが終息した、あるいは終息が確実であるという世界的な合意が必要だと思います。それはまさに我々含めて一人一人の努力にもかかっていると思いますが、1年後に至る選手選考のスケジュールなど課題も見えていますよね。

 

山口さん
新型コロナウイルスの終息と切り離してものは語れません。
ここからは今の私の個人的な考えです。来年夏を目指してやるためには予選会や遠征。いろいろな事を積み重ねて選手はオリンピックに向かうわけですね。それができる状況になっていくのかどうか。そうすると7月までのプロセスは、「Aプラン」だけではなかなかいかないだろうと。Aがダメだった時にはB。Bがダメだった時にC。そういった計画を選手たちや競技団体と共有しながら、JOCがリーダーシップをとってやっていきたい。計画を立てたけれどまた変更で、せっかくここまで高めてきたのに『まただめだった』となってしまうと、心がだんだん折れていきますよね。そうではなくて、『もしかしたらこの計画は変更はあるかもしれないよ』と、そう示してあげる事が心の準備が、モチベーションの維持にもつながっていくのではないか思います。」

 

――延期された期間を乗り切るためには、様々なやり方をそれぞれの選手も協会も共有する必要があると。

 

山口さん
アスリートに喪失感を味わうことを繰り返させないためにも、「こういう可能性があるよね、そうなったらこういう展開があるよ」と、情報公開して見せていく事によって、選手たちも準備ができるのではないかなと私は考えています。ただ、競技団体や競技の特性によって目指すプロセスが変わってきますので、その辺はやはりJOCがリーダーシップをとって、どうまとめていくか。その点では責任があると感じています。

運営への課題、解決のためには

大会運営においても数々の課題がすでに指摘されています。

 

8万人が参加するボランティア。スタート直前で中止となった聖火リレー。大会後にマンションに生まれ変わる選手村の扱い。販売済みのチケット。競技会場の確保…。補償が必要になると予想される問題もあり、難しい調整が求められます。

 

大会カウントダウンの時計もリセット

 

――延期が決まったことについては、ある意味妥当な判断だと世の中は落ち着いたと思いますが、無事にオリンピックとパラリンピックを開くまで持っていくことは非常に難しいですよね。

 

山口さん
そうですね。チケットの問題やボランティアの問題など、アスリートだけの問題ではなく本当に社会全体で解決していかなければいけない事が山積みです。
ただそこであえて申し上げるとするならば、今のウイルスの戦いというのは、誰のせいでもないということです。その問題に今人類が向き合っている中で、大会までに全員がハッピーになる結果というのは、正直なかなか難しいだろうと思います。選手選考にしてもチケットにしても、いろいろな事で不満は必ず残ると思います。ただ最低限の不公平感を取り除き、みんなが「まあこれだったら納得できるよね」という方向に持っていくべく、それぞれが我慢すべきところは我慢していただきたい。力を尽くすところは力を尽くしていただきたい。社会全体で東京オリンピック・パラリンピックをなんとか成功させようという空気を、作っていきたいなと思います。

 

――最後に、不確定要素はたくさんありますが、アスリートも世の中も、どうやって気持ちをひとつにしてやっていったらいいでしょうか。

 

 

山口さん
今まさに日本中そして世界中の人たちが、ウイルスとの戦いで非常に辛い思い、そして苦しい思い、我慢を強いられています。その中でアスリートたちは、気持ちを切り替えて向かっていくんだという前向きな気持ちでメッセージを発信しています。多くの苦しんでいる人たちにもメッセージとして伝わり、そして最終的にオリンピックが開かれた時に、みんなで喜びを分かち合える東京大会になればすばらしいなと思います。そういう大会を期待したい、その力を信じたいと思います。

 

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※こちらは、2020年4月3日に公開された記事です。内容は公開時のものとなります。

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