特集 特集)オリックスバファローズ 3連覇達成

プロ野球・オリックスは、ロッテに6対2で勝ち、3年連続15回目のパ・リーグ優勝を果たしました。パ・リーグでの3連覇は、1990年から5連覇を果たした西武以来で、オリックスとしては、1975年から4連覇を果たした前身の阪急以来です。(下のメニューをクリックで各項目へに直接進みます)
7回一挙6得点で逆転勝利 V3
《京セラドーム大阪》
1 2 3 4 5 6 7 8 9 計
ロ 0 0 1 0 1 0 0 0 0 2
オ 0 0 0 0 0 0 6 0 x 6
オリックスは優勝へのマジックナンバーを「2」として、20日夜、京セラドーム大阪で2位・ロッテとの直接対決に臨みました。
先発の山崎福也投手
試合はオリックスの先発、山崎福也投手が5回までに2点を奪われ追う展開となりました。
野口選手の勝ち越しタイムリー
それでも7回、2アウト二塁の場面で6番・杉本裕太郎選手のタイムリーヒットで1点を返し、さらに同点として、チャンスで9番・野口智也選手のタイムリーで勝ち越しました。オリックスは打線がつながり、この回、一挙に6点を挙げました。
オリックスは6対2で勝ち前身の阪急時代も含めて、3年連続15回目のリーグ優勝を果たしました。
パ・リーグでの3連覇は1990年から5連覇を果たした西武以来です。また、オリックスとしては1975年から4連覇を果たした前身の阪急以来となります。
指揮官は5回宙を舞う
オリックスの選手たちは、抑えを務めた山崎颯一郎選手を中心にマウンドに集まり、中嶋聡監督を5回、胴上げして、優勝の喜びを分かち合いました。中には、今月16日に体調不良で1軍の出場選手登録を抹消された、打率リーグトップの頓宮裕真選手の姿もありました。
中嶋聡監督(優勝インタビュー)
最高です。ピッチャー陣が頑張って助けてもらったし、野手もしっかり守っていいところで打ってくれたことが優勝につながったと思う。
―― おととしは無観客、去年は仙台での胴上げだった
本当に何とかここで胴上げしたいと思っていたので、うれしい。選手がすごかった。
―― 今夜の時点で14.5ゲームの大差
ゲーム差は関係なくて、まだまだ強くなれるチームだと思って、自分たちの野球を追求してきた。マジックもついたり消えたりするので、あまり気にしていなかった。
―― 若手や実績が少なかった選手が活躍
調子のいい選手、楽しみな選手、いろんな選手がいるなかで起用して、何とか花開いてほしいと思っていた。しっかり戦力になったのが大きいことだ。
―― パ・リーグ3連覇は1990年から5連覇の西武以来
本当に強いチームだったので、その数字はとてつもないが、そこにチャレンジできるチームではあると思う。
―― ファンに向けて
すばらしい応援をありがとうございました。次のクライマックスシリーズを勝って、日本シリーズの時には、あんまり、はっきりと言いたくないのですが、日本一を目指して頑張りたい。
優勝の軌跡
オリックスがリーグ3連覇を果たした今シーズン、優勝までの道のりです。
開幕を前日に控えた中嶋監督
オリックスはリーグ3連覇を目指し中嶋聡監督が4年目のシーズンに臨みました。
開幕当初から5月まで月別の勝率は、5割台でしたが、6月からは先発陣に白星が多くついて投手陣の状態が改善し、7月には勝率が6割3分台まで上がりました。
チームの成績は、エース・山本由伸投手の勝敗に比例して上がっていきました。
山本投手は4月に2勝2敗の五分でしたが、5月以降は毎月、複数の勝利を挙げました。
自身2回目のノーヒットノーランを達成
さらに9月には2位・ロッテとの直接対決で2年連続2回目となるノーヒットノーランを達成しました。今シーズンはここまでリーグトップの14勝を挙げています。
偉大なエースとともにチームを支えたのが若手2人。22歳の宮城大弥投手と21歳の山下舜平大投手でした。
10勝目を挙げた宮城投手
宮城投手は150キロを超えるストレートにスローカーブなどを織り交ぜる緩急をつけた投球でふた桁勝利を挙げました。
山下舜平大投手
山下投手は最速160キロの威力のあるストレートを軸に9勝をマークしました。
さらにリリーフ陣は、山崎颯一郎投手や抑えの平野佳寿投手などが安定していて、失点はリーグで最も少なく、投手陣はシーズンを通して安定した投球を続けました。
攻撃陣は、2年連続で首位打者を獲得した吉田正尚選手の大リーグ移籍による得点力の低下が懸念され、誰が中軸を務めるのか注目されていました。
頓宮裕真選手
こうしたチーム状況の中、今シーズン頭角を現したのが大卒のプロ5年目、頓宮裕真選手(26)です。打率3割台をマークしリーグトップを維持しています。頓宮選手はキャッチャーとして登録されていますが、今シーズンは、ほとんどを指名打者とファーストで出場し、バッティングに集中しました。
頓宮選手を迎える山本投手
投打で若手が台頭したオリックスは、5月に1回、4連敗を喫した以外は、いずれも3連敗以下におさえて手堅く勝ち星を重ねてきました。
夏場に入って強さが増し、8月には2回の引き分けを挟んで今シーズン最多の8連勝を記録。8月26日には、優勝へのマジックナンバー「24」を初めて点灯させました。
今月に入っても2位・ロッテとのゲーム差をきのう(19日)の時点で今シーズン最大の13点5まで広げ、安定した戦いぶりでリーグ3連覇を果たしました。
46年前の3連覇は…
オリックスにとって、リーグ3連覇は1977年(昭和52年)の前身の阪急以来、実に46年ぶりです。
3連覇を果たし胴上げされる上田監督
当時、就任4年目の上田利治監督が率いた阪急は、リーグ3連覇だけでなく、3年連続の日本一も成し遂げました。
強さを支えたのは、1969年、昭和44年に入団した「花の44年組」と呼ばれる選手たちでした。
先発投手陣では、アンダースロー「サブマリン投法」の山田久志投手が柱で、コントロールの良さと落差の大きいシンカーで、前年に26勝を挙げて最多勝と最高勝率のタイトルを獲得しました。
山田久志投手
このシーズンは16勝を挙げたほか、防御率2点28をマークして最優秀防御率のタイトルを獲得し2年連続のMVP=最優秀選手となりました。
野手では“世界の盗塁王”とも呼ばれた福本豊選手が中心で7月にはプロ野球記録となる通算597個目の盗塁に成功しました。
福本豊選手
このシーズンは61個の盗塁を決め8年連続の盗塁王に輝きました。
さらに3番でファーストの加藤英司選手が打率3割1分9厘の成績を残しました。
加藤英司選手
シーズン終了後にはパ・リーグのゴールデングラブ賞を山田投手と福本選手、それに加藤選手を始め9つのポジションのうち6つを阪急の選手が獲得しました。
優勝を決めた選手たち
このシーズンの成績は69勝51敗10引き分け。打撃陣が強力でリーグで唯一、500打点以上を挙げました。走・攻・守で、いずれも高いレベルの選手を擁していて、まさに黄金期でした。
3連覇の背景!"育成と勝利"の両立にあり
中嶋聡監督が就任1年目に25年ぶりのリーグ優勝を果たし、一気に46年ぶりの3連覇を成し遂げた裏には「選手を育てながら勝利を手にする」という育成と勝利の両立を目指す一貫した方針がありました。
中嶋監督は2019年に2軍監督として初めてオリックスの指導に関わりその後、翌2020年の途中から1軍の監督代行に就きました。
中嶋聡監督(2021年)
当時から掲げていたのが”長所を大切にした育成と勝利の両立”で「そこに挑戦していくのがわれわれの仕事だ。どちらも取りに行く」と力強く語っていました。
その考え方は監督就任1年目のおととし(21年)のシーズンも変わっていませんでした。
就任1年目、ショートのレギュラーとして抜てきしたのが、高卒2年目・19歳の紅林弘太郎選手でした。
紅林弘太郎選手
中嶋監督が2軍で監督をしていた時に入団した身長1メートル87センチの大型ショートです。
「ショートでホームランを打てることに価値と魅力があるのでもっと伸ばしたい」と育成方針を伝えられていた紅林選手は、監督からも「体格が長所だから、長打を打てるショートになってほしい」と指導を受けていました。
ショートでデビューした年は(21年)136試合に出場しホームランを10本打ち、オリックスでは10代で初めてのふた桁ホームランでした。
その一方で、紅林選手は育成段階が終わり1軍に定着したあとは指導の内容が変わったと明かしたうえで「最近は『大きいのを打て』とはあまり言われない。1軍では勝つための野球をする。求められる役割を果たすことが必要だ」と話していました。
中嶋監督の就任1年目に4番で起用され、その後、レギュラーに定着した杉本裕太郎選手も同じ方針で育成された1人です。
杉本裕太郎選手
身長1メートル90センチ、体重104キロの体格をいかしたパワーからの長打力が持ち味。
2軍監督だった当時に起用され続け、その2020年のシーズンではウエスタン・リーグで最も多い14本のホームランを打ちました。
ホームランを打つ杉本選手(2021年)
杉本選手は2軍で培った長打力を1軍でも生かし、2021年のシーズンは32本のホームランを打ってホームラン王のタイトルを獲得しました。
中嶋監督が育成した選手は、今シーズンも活躍しました。2軍監督就任の年、2019年に入団した頓宮裕真選手です。
広角に長打を打てるバッティングの長所を評価し中軸に起用しました。
ポジションはキャッチャーの登録で、昨シーズンまでは最も多い年でも81試合の出場でした。今シーズンは、ここまでキャッチャーでの起用を1回にとどめ、ファーストや指名打者で出場しています。
長所のバッティングを重視して起用を続けた結果、打率3割台を保って首位打者を狙える成績を残しています。
オリックスの福良淳一ゼネラルマネージャーは、育成した選手が結果を残しチームの勝利につながっていることについて「うちの選手は長所があるから入団している。長所は触りすぎずに育てることが大切。育成をしながら勝利をしているところが、中嶋監督のうまいところだ」と高く評価しています。
監督就任発表 福良GMと中嶋監督
”育成と勝利の両立”という目標を3年連続で有言実行した中嶋監督。次は現役時代に果たせなかった2年連続日本一を目指します。
打の勝因は"ユーマー"の飛躍
オリックスの優勝の要因を打者と投手から探ります。
まずは打者です。
今シーズンは、大卒5年目の頓宮裕真選手(26)が大きく飛躍して中軸に定着しました。大リーグに移籍した吉田正尚選手に代わる活躍で、打率はリーグトップをマークし、首位打者のタイトル獲得の可能性も出てきています。
岡山県備前市出身の頓宮選手は大学の日本代表を経験してプロ入りした右バッターで背番号は「44」です。
入団会見 頓宮選手は「44」番
入団会見では自身の名前“ゆうま”にかけて「オリックスというか、阪急で背番号44と言えばあのブーマー選手です。私は”ユーマー”と呼ばれるように頑張りたい」と力強く決意を表明していました。
憧れのブーマーさんとはことし8月に行われた始球式で初めて対面し、頓宮選手が打席に入りました。
ブーマーさんと頓宮選手(左) 今年8月
ブーマーさんからは「いずれは3冠王を狙えるような選手になってほしい」とエールを送られました。頓宮選手は「めちゃめちゃうれしい。期待に応えたいです」と固く誓っていました。
打撃向上の裏には、”フォーム改良”がありました。今シーズンの前から左足の上げ方を微妙に変えていたのです。
真上に引き上げていた足を体の前へ振り出す形にしました。時間にしてわずか1秒足らず、これまでより長く上げています。
プロのスピードがあり力のあるボールを余裕を持って“迎え打つ”ことが狙いです。
ホームランを打つ頓宮選手(8月1日)
効果について「昨シーズンまでは速いボールに振り遅れることがありましたが、それが無くなりました。しっかりセンター方向へ打ち返せるようになりました」と明かしてくれました。
序盤の4月5日から中軸で起用された頓宮選手は改良したフォームで1軍のピッチャーとの対戦を重ねていっそうの自信をつけ、6月は22試合すべてに中軸で先発出場し、打率3割7分2厘、ホームラン7本の好成績。初めての月間MVPに選ばれました。
その後も出場機会を得て打率3割台を保ち安定した成績を残していて、ここまで打率リーグトップです。チームとしては、1989年のブーマーさん以来となる右の首位打者のタイトル獲得の可能性が出ています。
頓宮選手は「吉田選手の方がはるかに打っていたので、吉田選手の穴を埋めようとか、大きなことは思ってませんよ」と謙虚な姿勢を崩しませんが、その存在は今シーズンのチームになくてはならないものでした。
フォーム改良の効果でタイトル獲得に近づいている頓宮選手。多くのファンに”ユーマー”と呼ばれるように「まずは首位打者という初のタイトルに挑みたい」と決意を新たにしています。
投の勝因は21歳、山下舜平大の台頭
投手ではプロ3年目、21歳の山下舜平大投手の台頭が優勝の要因の1つです。
プロ3年目、今シーズン1軍のマウンドに初めて上がった山下投手は身長1メートル90センチ、体重98キロ。
山下舜平大投手
この大柄な若手は練習中に人気キャラクター「マイメロディ」が描かれたリュックサックを背負って移動しています。
投手陣の飲料水などが入っていて先発陣の中で最も若いピッチャーの役目です。
その先発陣最年少の山下投手は「何勝したいとか数字にこだわらず、登板するからには全部勝ちたい」と強い決意で今シーズンを迎えました。
開幕を前日に控えた山下投手
初めての1軍マウンドは重圧のかかる開幕投手で、直前まで続いていたWBC=ワールド・ベースボール・クラシックで優勝したエースの山本由伸投手にかわって務めました。
去年までは、ケガの影響もあり1軍の登板はありませんでしたがことしは、角度のある最速160キロ近いストレートに落差の大きいカーブで安定したピッチングを見せて好調ぶりをアピールしました。
開幕戦のマウンド
開幕投手に抜てきされた山下投手は6回途中を1点に抑えて好投し、この試合は勝敗がつかなかったものの、次の登板から6月1日まで5連勝しました。
ヒーローインタビューのあと(6月1日)
WBCから帰国した山本投手は、4月の初登板から4試合を2勝2敗で終えるなど本来のピッチングが影を潜めていました。序盤はエースの状態が上がらず、チームの調子もいまひとつだった中で、山下投手は安定したピッチングで白星を重ね9勝を挙げました。
8月末に腰を痛めてチームを離脱せざるを得ませんでしたが「まだまだ先輩たちと競争できるレベルではない」と謙虚な面も見せています。
その一方で「自分で限界を決めないでいきたい。山本さんを越えていきたいという意識はある」と先発陣の柱としての自覚も芽生え始めました。来月(10月)のクライマックスシリーズに、大車輪の働きをした新星の活躍が再び見られるか、注目が集まります。