特集 朝乃山 “執念の勝ち越し“ その覚悟と思いに村上茉愛が迫る

9月10日に初日を迎えた大相撲秋場所。元体操選手・村上茉愛さんが初めて相撲部屋を取材!村上さんが注目したのは、朝乃山(あさのやま)29歳。先場所、左腕を痛め休場に追い込まれましたが、ケガをおして再び土俵へ。執念の勝ち越しを果たしました。強い覚悟で再出場、その決断の裏にあった思いに迫りました。(サンデースポーツ 2023年9月3日放送)
ケガを乗り越えて秋場所へ
朝7時半。秋場所に向けて、精力的に稽古をつむ朝乃山の姿がありました。実は本格的な稽古ができるようになったのは1週間ほど前。痛めた左腕には、今もサポーターが巻かれたままです。
村上さん:現在左腕の状況はいかがですか?
朝乃山
最初怪我をした時に比べると、だいぶ良くなりました。自分が今年目標にしている三役が目の前にあるので、今場所でできたら決めたいですし、名古屋場所(先場所)の勝ち越しはむだにしたくない。
“三役”さらにその先の大関復帰を見据えて臨んだ先場所。4勝2敗で迎えた7日目のことでした。相手の投げをこらえた瞬間、左腕に大きな衝撃が。
朝乃山
花道を下がっていくときにちょっとおかしいなと。
医師の診断は『上腕二頭筋の部分断裂』、全治4週間を要するケガでした。
村上さん:体操でも上腕二頭筋の断裂や部分断裂は結構あって、かなり大きなケガだと思うのですが、再出場を決めた理由は?
朝乃山
(周りに)置いていかれるのではないかというのがありましたね。(過去に)1年休場していた分、余計に1日も早く出たいというのがありました。
脳裏をよぎっていたのは、2年前の出来事でした。相撲協会が定めた新型コロナ対策のガイドライン違反で、1年間の出場停止処分。大関から陥落し、三段目まで番付を落とします。その間、本場所の土俵では年下や同年代の力士たちが次々と台頭していきました。
朝乃山
若い子たちが下から上位に上がってきていますし、僕が三役にいた時と顔ぶれも全然違いますので。1勝でも多く勝って番付を上げたい、一枚でも下げたくないという思いで出ました。
村上さん:ケガが悪化するかもしれないリスクがついてくると思うのですが、不安とかは?
朝乃山
めちゃくちゃあった。でも土俵に上がったら関係ないですし、言い訳もできないので自分なりに覚悟を持って上がりました。
村上さん:そうですよね、私だったら恐れて上がれないかもしれない。
復帰したのはケガから5日後の12日目。残り4番全勝しなければ勝ち越せない、崖っぷちの状況でした。
背中を押してくれたのは“観客の歓声”。
朝乃山
歓声とか「1日でも早く自分の相撲をとっている姿を見たい」、「出るからには頑張ってね」という声をいただきました。
声援を力に連勝を重ねます。そして、千秋楽。相手は成長著しい関脇・若元春(わかもとはる)。
朝乃山
1年間休場している間、力を付けて上がってきている力士なので、自分も負けたくない。
ー 実況「痛む腕で見事に勝ち越しました朝乃山」
朝乃山
自分が万全ではない形で勝てたことは自信にしたいですし、ケガをしていなかった自分は、土俵際の勝負の詰めの甘さとか、いろいろ指摘されていましたので、いろんなお客さんから「休場明けの方が強いね」ということばをいただいた。
声援を力に 再び輝きを
先月、ふるさと富山県で行われた巡業。およそ5000人ものファンが詰めかけていました。駆けつけたファンは、「(秋場所は)優勝してほしい」「大関まで上がってもらえたらうれしい、急がないので」と温かい声援を送ります。
朝乃山
応援されているんだなということに改めて気づきました。2年前に不祥事を起こして応援されないのかなという自分もいましたし、“元いた番付(大関)”を目指してやっていくのが恩返しかなと思います。
村上さん:その目標を見据えた上で来場所への意気込みを最後にお願いしていいですか?
朝乃山
三役に上がるにはふた桁以上勝たないといけないので、ふた桁以上(の勝ちと)、優勝できるように頑張ります。
本日のmyオシポイント
中川キャスター:ファンのみなさんの変わらない応援が温かいですし、先場所の活躍の裏には、あんな思いがあったのだと改めて感じました。村上さん、きょうのmyオシポイントをお願いします。
村上さん:「#困難の先に」です。出場停止処分や今回のケガを乗り越えて、精神的に成長されたと感じました。私もケガで苦しんだ時期がありましたが、つらかったり悔しい経験があるからこそ強くなろうと、次の目標ができると思います。その覚悟や強い思いを秋場所で思い切りぶつけてほしいと思います。